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第4話;勇者リリアン



 フェイの覚醒までもう少しお付き合い下さい。







「んん……ここは何処だ……?」


 目を覚ますと空が見えた。日は落ちてかけており、星が出始めている。


 「いっ……体が痛い……」


 全身の骨が軋んで痛い。何でだ……?


 前を見上げると僕が攻略していたダンジョンが見えた。僕は確かダンジョン攻略の為に中にいたはず、どうやって出てきたんだ……?


 僕は何が起きたのか必死に記憶を探った。


 あぁ……思い出した……僕はオークを倒してダンジョンから出ようとしたら、寝ていたはずのオークが起きていて、不意を突かれて攻撃され、気を失って倒れたんだ……


 だがあの攻撃で僕は大怪我をしていたはず。少なくとも骨は確実に折れていた。だが実際骨は折れていない。誰か助けてくれたのか……?


 僕はそう思い辺りを見回した。


「やっと起きた……貴方大丈夫?体は痛くない?」


 僕と同じ位の少女がこちらを見て心配してくれた。だが僕は少女の言葉が余り耳に入ってこなかった。不覚にも僕は彼女に見惚れてしまった。


 整った顔立ち、紅い目、それに似合った紅い髪は後頭部でくくられている。ポニーテールという髪型だ。胸は……まぁ僕は別に大きいのが好きとかではないので特に気にしない。


 僕が彼女に見惚れていると、


「おーい、聞いてるー?」


 彼女が話しかけてきた。僕はハッとして姿勢を正した。


「ぐっ……怪我してたの忘れてた……」


 あまりに急いで体を動かしたので、背中に痛みが走った。


「ちょっと大丈夫?というか何でそんな私を見てたの?」


 彼女は真っ直ぐな目をして聞いてきた。


「いやっ……そのっ……何というか……別に君が可愛かったから見惚れてたとかそういう訳じゃ……」


 何言ってるんだ僕は……何も隠せてないじゃないか……


 柄にもなく僕は慌ててしまった。羞恥心に耐えられず顔を伏せた。


「ふふっ、貴方面白いのね。そんな正直に言うなんて」


 僕は更に恥ずかしくなってしまった。しばらく顔を上げたくない……


 僕がそう唸ってると、


「顔を上げてよ、喋りにくいでしょう」


 僕はそう言われてゆっくりと、赤くなった顔を隠しながら上げた。早く気持ちを切り替えないとまともに話せそうにない。僕はそう思い一度大きく深呼吸した。


「貴方、名前は?」


「僕はフェイ=ローレン。君は?」


「私はリリアン=ランエッセ。ここから30分位行った所の小さな村に住んでいるわ」


 僕は弱い、だからこそ僕はちょっとした特技が身に付いた。何となくその人の持つ雰囲気で何となくの強さが分かる。彼女からはとても強い何かを感じる。もしかしたら兄様といい勝負をするかも知れない。


「君が助けてくれたんだよね、遅くなったけどお礼を言うよ。ありがとう」


 僕は深々と礼をした。


「良いわよ別に。たまたま通りかかっただけなんだから」


 彼女は僕の感謝の言葉に少し照れながらも、礼を受け取った。そして彼女が咳払いをし、この話から一刻も早く逃げたいかのように質問をした。


「フェイ君は何でこ……」


「僕のことは呼び捨てで良いよ」


「そ、そう?じゃあ私のこともリリアンって呼んでくれて良いよ」


「分かった。で、リリアン?何の質問だったっけ?」


「ん?あぁ……何でフェイはこのダンジョンに来たのかってこと。失礼かもだけど余り強そうに見えないし……ゴブリンでいっぱいって感じだし……」


 彼女の言葉はとても良く的をえている。


「その通りだよ。僕はせいぜいゴブリン位が限界なんだ……」


 それから僕はここに至るまでの経緯をリリアンに話した。






「そう……そういう事だったのね……ごめんね、辛いことを聞いて……」


 僕は首を横に振った。


「いいんだ、事実だし。それでリリアンはどうしてここに?」


「私はも似たような理由よ。レベリングの為にここに来ているの。私は強くならないといけないんだ……」


 リリアンの表情が僅かに変わった。さっきまでの明るい笑顔ではなく暗い顔だ。なんだろうこの感じは……


「私はね、勇者って呼ばれているんだ……」


 リリアンの口から思いがけない単語が出てきた。


 確かに強者の雰囲気だったがまさかそこまでなんて……


「私は生まれて『神降ろし』って言うスキルを授かったんだ。それは勇者に与えられるスキルなの。村では大騒ぎになったわ、勇者が産まれたってね。そしてその知らせはすぐに王都まで届き王国騎士団の騎士団長が来たらしいの。私を預かりに来たらしいわ。でも両親は反対した。私が9歳になるまでは渡さないってね。王国側も渋々それを呑んだ。ただし、指導をする者をこの村に置いておく事を条件にして……」


 なるほど……僕が感じた雰囲気はこれの事か……


「そして4歳の頃から指導が開始された。それからは毎日修行漬の日々を送った。そして今では剣の腕前もかなり上がり、レベルも30目前まできている。ちなみにフェイにかけたのは『治癒魔法(4)』よ。」


「えっ……(4)って一般的には、国から特別な称号を与えられ一生生活に困らない稼ぎを得られるレベルじゃないか」


「そう、でも私は勇者なの。あくまでレベリングの副産物なのよ。私がここに来たのは、勇者としての自分に磨きをかけるため。それが理由よ」


 正直僕は凄いと思った。同じ年なのに遥か高みにいる彼女のことが。


「それよりリリアンはこんな所にいてご両親に何か言われないの?」


「えぇ、両親も私が強くなるためにやっている事には余り口を出さないわ」


「そっか……」


 僕より大変なんじゃ無いか……勇者という名の重圧に押し潰されそうになりながら生きていくのは……


 それからしばらくリリアンと色々話した。家族のこと、村のこと、その他諸々。


「ところでフェイは家からに帰らなくていいの?」


「あぁ、2〜3日家を空けるって書き置きしたから」


「そう。じゃあさ、家に来ない?このまま怪我したフェイを置いては行けないから。さっきも言ったけどそんなに遠くないから」


「えっ、いいの?邪魔にならない?」


「いいのいいの、私修行ばかりで同年代の友達とかいなかったから……フェイが来てくれたほうが楽しそうだし」


 リリアンはそう言った。


 僕は心の中で人生最大のガッツポーズをした。


 だめだ……ここで感情を表に出したら……


 平常心、平常心


「そ、そういう事ならお邪魔しようかな……」


「オッケー、じゃあ行こっか」


 リリアンはそう言うと僕の前に背中を向けてしゃがんだ。


「えっ……リリアンこれは何?」


「何っておんぶだけど?」


「いやいや、そんな事しなくていいよ。自分で歩けるから」


 女の子におんぶされるなんてそんな恥ずかしい事出来るかっ!


「何を遠慮してるの?治癒魔法をかけたとは言え、まだ完全には治ってないんだから。ほら早く、こう見えても『身体強化 中』も持ってるんだから」


「いやいや、だから大丈夫だって!」


 こんなやり取りを数分続け、僕は結局リリアンに言葉負けしておんぶされる事になった。


 くっ……恥ずか死してしまう……


 僕はそんな思いに身を悶えさせながらリリアンの背中に乗った。


 そしてリリアンは『身体強化 中』を発動させ、颯爽と森の中を駆け抜けて言った。


 そして30分後



 リリアンが住んでいる村に到着した。

 

 

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