第2話;兄様は口が悪い
一番下に現時点のステータスを書いておきました。
目の前の大きな扉を見上げる。恐らく僕の2,3倍くらいはあるだろう。この扉の奥が食卓となっている。
あまり気は進まない。それでも行かなければまた何か言われるかもしれない。そう思いながら扉に手をかけて開けた。僕以外の家族なら扉を開けてくれる側付きの人がいるのだけれど……
今この家で僕に対して優しくしてくれるのは、母様とセレスさんだけだ。味方はそれだけで十分だ。
そう思いながら、扉を通り抜けると、部屋の中央にある直径約3メートルほどの円型のテーブルが見えた。
僕以外の家族は既に席に着いていた。
「……」
無言で紅茶を口にしているのは、僕の父様であるマカド=ローレンだ。
本当に僕に興味がなさそうにしている。だが毎朝これだから僕も流石に慣れてしまった。いつものように用意された安いパンを食べる。母様は止めるのだけど父様が許さないらしい。
「ははっ、フェイ。お前本当可哀想だなぁ……まぁ当たり前か、くっくっく……」
本当毎日飽きないなぁ、と逆に感心している。兄様が毎日続けてるのは剣と僕への煽りだけじゃないのか?
そう皮肉たっぷりで僕に嫌ごとを吹っ掛けてくるのは兄であるレクス兄様だ。
まぁ何年もそんなことを聞かされたおかげでスルースキルが身についた。これはとても使える。何なら『身体強化 小』よりも使える……それは冗談だ。
本当僕が言えたモンじゃないけどこれが跡取りで大丈夫なのか?確かに単純な力じゃ十分それに値するのだけど……
そんな心配を他所に兄様はまだ飽きもせずに煽り続けている。
「お前ご飯食べた後も暇なんだろ?良いよなー剣の指導が無くて。本当羨ましいわぁ」
「こら、レクス止めなさい。そんなことばかり言ってると碌な大人にならないわよ?」
「少なくともこいつよりはマシだよ、母様」
「ごめんねフェイ。毎日嫌な思いさせて」
そう優しく僕に声をかけてくれるのは母様のイリル=ローレンだ。もともとは平民であったが父様の目に留まりそのまま結婚したらしい。父様はかなりアタックしたようだ。今からは想像も出来ないが……
「いえ、別に気にしていませんよ。事実ですし」
本当母様は優しいな、と思いつつこの後何をしようか考えた。
レベリングをするのは決定事項なのだが、やっぱ手っ取り早くレベルを上げるのは魔物を狩ることかな。まぁそんな簡単に上がったら苦労しないのだけれど……
◇◇
僕は朝食の後部屋に戻り今後どうするかを考えた。
やっぱりあそこに行くしかないか……
ダンジョン、それは魔物の蔓延る場所。もちろん魔物自体は割とどこにでもいる。ただ、ダンジョンに関しては魔物の質が違う。簡単に言えば、同じ魔物でも強さ、厄介さがかなり違う。
スライムを例に挙げるなら、そこら中にいるのは、襲っては来るが3歳児に殴られたくらいの威力しかない。だが、ダンジョン内では10歳の子供に殴られたくらいの威力がある。それに加えて、変わったスキルを持っていることが多い。
なのでダンジョン外で狩るのとは労力が全然違う。正直今の僕に行けるかと言われたら厳しいだろう。ただ普通に狩っているだけでは埒があかない。恐らくそこに行かなければlv,10には辿り着かないだろう。覚悟を決めるしかないか……
そうと決まれば情報集めだ。幸いにもこの家には沢山の資料がある。早速書庫に行って見てこよう。
「んー、どうするか……」
僕は悩んでいた。予想以上に敵が強力らしい……
正直普通の魔物だとゴブリンあたりが限界だ。なのによりにもよってオークなんて……
だがオークが居るのは最下層と書いてある。行っても4階層までだ。ただ『身体強化 小』がどこまで通用するか……
「買っておいたポーションを持っていくか」
正直怖い、死なない確率が0ではない。それでもやるしか無い。たが、超えられない壁ではないだろう、もっと気楽に行こう!
「よしっ、行こう!」
僕は部屋に手紙を残し出発した。
〜2〜3日家を出ます〜
2時間後
「はぁはぁ……やっと着いた……」
かなり遠かった。『身体強化 小』を休み休み使ってこの時間だ。歩いていたら5〜6時間は掛かっただろう。
呼吸を整え、顔を上げるとそこは、いかにもっ、て感じのダンジョンがあった。
「結構高いな……20メートルくらいあるか……」
このダンジョンに名前は無い。だが有名なダンジョンには名前がある。
それは世界最高攻略難易度ダンジョン「ゼウスの塔」
そこを制覇しようと挑むのは、頂点を目指す者達。生半可な覚悟では足を踏み入れることすら出来ない。
外観はオシャレな塔って感じ。細かい所まで彫刻が施されている。神の領域と呼んでもなんら不思議はないだろう。僕は1度近くで見たことがある。
圧巻だった。雲を突き抜けて尚、それは天高くまで聳え立っている。現在確認されている最上階は101階、最近になって更新されたらしい。
それと比べたらここは全5階層と随分簡単だ。ただの土壁にも見えなくはない。だが油断はしない。しっかり休んでから行こう。
ここまでの旅路の疲れを休めるために1時間ほど休憩した。
アイテムも持った。休憩もした。覚悟も決めた。準備は万端だ。
「いざ、lv,10に向けて……攻略開始!」
☆☆
ローレン一家のステータス
フェイ=ローレン 種族 人族 lv,9
スキル:「身体強化 小」
レクス=ローレン 種族 人族 lv,31
スキル:「身体強化 大」「縮地」「気配感知 大」「炎魔法(3)」
マカド=ローレン 種族 人族 lv,56
スキル:「身体強化 中」「風魔法(3)」「風操作」「魔力感知 中」「思考加速 大」「炎魔法(2)」
イリル=ローレン 種族 人族 lv,43
スキル:「思考加速 中」「回復魔法(2)」「光魔法(3)」「魅了」「料理」
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