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第2話 突然ですが家庭訪問です。①



とはならずなんと奇跡的に全ての火の玉が俺を避けるかのように歪んで軌道を変えた。



「え、なんで……?」



少女がとても驚いた様子で立ち尽くしている。

彼女にわざと外す気は無かったらしい。



「カハエル・ラ・トライズ」



次は大きな水の塊のようなものを出現させ俺に向かって打ち込んできた。

が、しかしそれも当たらず。放たれた水は俺を交わした火の玉たちを鎮火させただけだった。

もしかしてこれが俺の能力なのだろうか?超防御とか?



「なっ、なんでっ!!??あなた一体何者なの!」



「俺も自分自身全然わからないんだ。なんで呪文が当たらないのか、なんでこの世界にいるか、なぜこの部屋にいるか、なぜこんな絶世の美少女のベットに寝ていたのか」



「ぜっ、絶世の美少女……そっ、そんなことはどどどうでもいいのっ!!まじめに答えてよ」



顔を赤らめながらいっているあたりまんざらでもないんだろうか。反応がとてつもなく可愛い。ピュアか。

どうやら彼女もだいぶ落ち着いてきたようだ。



「詳しく説明すると、俺は異世界からやってきた……んだと思う。それで気づいたらここにいたんだ。

ごめん、全く理由になってない。でもこれしか説明ができないんだ。本当にすまない。」



「……異世界とな?それはどんな世界なのだ?」



どうやら平静を取り戻したようで彼女はきっといつもはこうなのであろう態度に戻っていた。やけにしっくりくる。



「ここの世界を知らないからなんとも言えないけど、少なくとも俺の住んでいたところは海が綺麗なところだったよ。あ、海って通じる?」



「海……海か。多分認識が同じであれば広大に広がる水たまりのことであろう?」



なぜだか彼女は海と聞いた途端悲しそうな顔になったような気がした。



「他には何があるのだ?」



「んー他には人がいっぱいいて……食べ物も美味しい!うにとか!」



自分の住んでいた場所の話をしているとだんだん寂しくなってきた。もう帰ることはできないのだろうか。



「ふに?ふにとはなんだ?」



「うに、ね。うにっていうのは黒いトゲトゲに包まれていて、なんだろ表現しずらいな。うにょろみたいな食感」



「な、な、なんだうにょろとは!うにを食したい!」



「俺も久しぶりにうに食いてえなあ」



そんなこんなで彼女としばらくの間会話をしていた。

話していてなんとなくわかってきたのはこの世界と俺の元いた世界での言葉の基本的な認識は変わらないということ。

例えば海や〇〇語といった言葉。それこそヨプウェル語だとかヤドリ語だとか訳の分からない言語なのだが。



「すまぬがお主のいっている異世界転移、についてはわからぬな。言葉の意味自体はわかるのだが。呪文なのか場所なのか原因がまったく想像できぬ」



「そうか。んー手がかりなし、か」



彼女の知識量は相当なものだった。どうやらこの屋敷の一階にある図書室の本を丸暗記しているらしい。

そんな彼女が知らないというのだからやはり珍しい出来事であることは確かだろう。

そのときボーンと鐘がなった。1、2、3回。



「3時じゃ!」



そう言って彼女は勢いよく部屋を飛び出した。

脈絡もなく叫ぶものだから相当驚いた俺は飛び出していく彼女に声をかけることができなかった。



もしかしておやつか?3時のおやつなどという認識も共通なのかなどと考えながら女の子の部屋に1人でいるのもあれなのでとりあえずおいかけてみる。



部屋を出ると幅5メートルほどの巨大な螺旋階段があった。部屋の内装や彼女の衣服を見るに相当な金持ちだとは思っていたがまさかここまでとは。

下を覗き込むと階段を駆け下りていく少女が見えた。



そうするより他ないので追いかるため階段を降りようと手すりに触れるとやけに埃っぽかった。



「うおっ!きったね!!」

思わずその汚さに声が出てしまう。何年掃除してないのだろうか。家の角に目をやると蜘蛛の巣がいくつも張っているのがみえる。

そう考えて気づいたのが人の気配があまりにもない、ということであった。

あんな13歳くらいの少女が1人で暮らしているのだろうか?あとできいてみるか。



階段を下りきるとそこは長い廊下だった。よくあるお屋敷らしいボルドーの壁に絵画が飾られておりいたるところにお高そうな壺や宝具がおいてある。

いくつもドアがあって彼女がどの部屋に入ったのかわからないのでとりあえず名前を呼んでみる。



「おーい!…………」



そういえば名前を知らない!お互い自己紹介もせず数時間話し込んでいた。彼女は俺のことや世界について聞くばかりで何も自分のことを話さなかった。

聞きたいことが山ほどある。早くさがそう。



「おーいって!どこに行ったんだー!?」



その言葉に答えるかのように2つ前の右のドアからドサドサっと大量にものが落ちる音がした。



「大丈夫かっ!?」



少女がものに押しつぶされていないか不安に思いドアを急いで開けた。



そこは本の山だった。前方で本が崩れていたがどうやら少女が押しつぶされているわけではなさそうだ。ホッと胸をなでおろして辺りを見回す。ここが彼女の言っていた図書室だろうか?



ん???もしや!?俺の異世界転移アンテナが反応する。図書室?もしかしてツインドリルのロリババアがいたりして!!



本心ではそんなわけないだろと思いながらもちょっとだけドキドキしながら本が崩れてきた左の棚を整理しよ始めた。



……気配を感じる。明らかに気配を感じる。

それとほぼ同時に尋常じゃない揺れが俺を襲った。

デジャブ!!



グラグラグラグラグラ!!!!!

ともに不安定に積まれていたおびただしい数の本が俺の上に降ってくる。

あ、やばい今度こそ死ぬ。



しかし、運の良いことに本たちはうまいことぶつかり合い全て棚に収納されるか下に積まれるかして整理整頓されていった。

本が整理されて視界が開ける。



目の前にはただのババアがいた。




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