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セリアの音楽

「それはメイドの……仕事なのか?」


エリアス様が声を震わせて、お訊ねになりました。私はもちろん胸を張って答えます。


「当然です」


「お、お前、本当に人間なのか?」


「ご冗談を」


「……今、理解したよ」


「何をですか?」


「ずっと不思議に思ってたんだ。何で伯爵が俺のところにメイドを寄越すんだってな。要はやっか……」


「伏せてください!!」


 私がエリアス様の頭を甲板に叩きつけると同時に、頭上をぶどう弾がかすめていきました。戦場で不意打ちなど、と怒るわけがありません。ですが、主人との語らいを不躾に邪魔されて、平静でいられるメイドがいるでしょうか。


 私は地を這うようにして甲板を駆け抜けますと、一気に大砲のもとまで詰め寄り、二人の無作法な砲兵の腕を切り落としました。


 ですが、ガウルもこの戦いに賭ける思いは、アウェリアと負けず劣らず強いものだったのでしょう。彼らは私の斬撃に怯むことなく、その傷ついた身体で私に襲い掛かってきたのです。


 私は咄嗟に足払いをしてやり過ごしますが、その僅かな時間で大砲の準備は完了したようでした。砲口は私を目の前にして大きく火を吹いたのです。


 ぶどう弾は、その軌道上にあった全ての人間を容赦なく肉塊に変えていきます。私はタン、と小さな音を立てて砲口の上に着地しますと、その様を確認し、砲兵の一人の首にサーベルを突き刺してやりました。


 砲兵は血を泡を吹きながら、隣にいた者に倒れ掛かります。そしてその男が悲鳴を上げながら、慌てて腰からピストルを抜こうとしましたが、時は既に遅かったようです。


 その男は、いきなり頭に穴を開けて倒れたのです。誰か銃撃したのだろうと周りを見渡してみますと、檣楼トップでマスケット銃を構えたローリー海尉がニヒルに私に笑いかけてきました。


 私はそれに頷き、残りの砲を対処すべくサーベルを向けたところで、一つの幕が下りました。何とエリアス様が私に大砲を向けている兵たちに横から突っ込んでいったのです。


 腰だめに構えたカットラスで男の脇腹を突き刺す。それで死なないのを見ると、手斧を取り出して滅茶苦茶に振り回していきます。一見して無様ですが、敵が怯むには十分なもの。


 またそこにホレイショー様のご子息たるエリアス様の覇気が加われば、最早大砲以上の威力が生まれます。そしてその勢いに乗って、残りのエリーゼの海兵が一気になだれ込んでいきました。


 大砲を奪い、ブレークにいたクサラの海兵も一掃したのは、すぐのことです。これで大勢は決したように思われますが、クサラは何と最後の悪あがきに出ました。クサラはブレークに掛かっていた桁を取り外すと、砲甲板の大砲を私たちに向けて撃ってきたのです。


 そのほとんどはぶどう弾だっために、舷縁に隠れれば問題はありませんでした。ですが、次の砲撃で三二ポンドを撃たれたら、ひとたまりもありません。


 何せガウルの艦は防御力が低いのです。このままでは、全員死んでしまいます。私は砲撃が止んだの確認すると、助走をつけて、急いでクサラの砲甲板に飛び込みました。


 大砲は連射できない。その隙をついての攻撃です。


 私の行動に驚き呆然としているクサラの兵を見渡すと、サーベルで横に一閃。声を発することもなく、三人の砲兵は喉から血を吹き出しながら倒れます。


 私は残った砲兵を静かに見つめました。ヒッと僅かにくぐもる悲鳴は、一体どこから漏れたものでしょうか。


 私はそれから音楽のように奏でられる刃音と銃声、それに協奏する悲鳴を背景にして、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺し回りました。エリアス様のために、ただひたすら辺りを血に染めていきました。

 


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