序章 転生
-ここは何処だ?
俺は死んだのか?
辺りを見回すと、真っ白な空間が広がっている。
-…ルム…ヴェルム…。
誰かが俺を呼んでいる。
誰だ!俺を呼んでいるのは!!
すると突然、目の前に黄金に光る巨大な人影(?)が現れた。
咄嗟に身構え…ようとしたが、何故か金縛りにあったように身体が動かなかった。
巨大な人影が話し始めた。
「ヴェルムよ。そなたは地上において、幾度も大罪を犯してきた。これ以上、そなたは人間として生まれ変わることが出来ない」
いきなり出て来て、何を言っているんだ!?
生まれ変わるって何のことだ!?
「生まれ変わるということは、天上界に還った魂が、再び肉体をつけて地上に生まれてくること。どの魂も、それを繰り返しながら生き続けている。世に言う転生輪廻だ」
「なっ!俺の心を読んだのか!?ここが天上界ってことは、お前は神ってやつか!?…それよりも、俺が人間として生まれ変わることが出来ないって…」
神は淡々と続ける。
「そなたは、人ならざることを犯してきた。真っ当な人間として、生きようとはしなかった。よって、これ以上の人間への転生は認められない」
突然、足元が崩れ去ったような浮遊感に襲われた。
その後に来る喪失感。
俺は、とんでもないことをしてきた。
今までの犯罪行為を反省するのに、充分な仕打ちだった。
生きる希望を失うってのは、こんな感じなのか…。
そう思えば思う程、自分に嫌気が差す。
絶望の淵へ追いやられた。
次の神の御告げを聞くまでは。
「しかし、私が神だと分かったのは、僅かながらも信仰心がある証拠。ここでは、地上で罪を犯した者に再び人間として生まれ変わる為の試練を与えている。忍耐力や根性が無い者は、二度と人間にはなれない。試してみないか?」
ハッと目を見開いた。
神の言う試練を突破出来れば、また人間として生まれ変われる!
躊躇いもなく頷く。
「分かった。そなたに試練を与えよう。そなたには、動物となって人間の優しさを理解して貰う。ただし、一度だけではないぞ。最初は下級の動物から始め、最後には最上級の動物に転生する。また、次の動物へと転生する為の条件は、そなた自ら人間を手助けすることだ。ただ、人間の優しさに触れるだけでは転生出来ない。よいな?」
ポカーン。
いつの間にか、俺の口が開いていた。
「お、俺が動物になる!?動物になって、人間の手助けをやれだとぉ~!?」
神はそうだ、と頷く。
「安心するが良い。地上には、そなたを手助けする天使を予め用意している。まずは、彼女に会うのだ。その後のことは、彼女に聞くといい」
天使?
彼女ってのは、女か…。
「地上に降りたら、彼女がいる。さあ、そなたに試練を…」
眩しい光が俺を包み込む。
-意識が途切れた。