少子化克服エンジェル ゆにばぁさりぃ サブテキスト
真新しい制服たちはピカピカの校舎を目指す。
県立霞城中央学園高等学校。
今春開校したばかりの真新しい学校に、私たちは入学する。
「ね? あなたサバイバルゲームとか興味ない?」
先輩なんて一人もいない、つまりは正式な部活だって存在していないはずなのに、気の早い子は通学中の同級生に声を掛けまくってる。ゼロからのスタートなら早い者勝ち、とでも言わんばかりに。
「ノーセンキュー!」
だけど山田は迂闊な興味など示しません。きっぱりと断ります!
「そこに座りなさい桜里子」
「どうしたのお母さん?」
オフィシャルな家族会議など滅多に開催されません我が家、山田家では。
なのに突然、お母さんが告げてきた。珍しいこともあるもんです。
「高校へ通う前に、言っておきたいことがある」
「何よ改まって?」
「かなり厳しい話もするが、お母さんの本音を聞いておけ」
入学式を数日後に控えたとある日のこと。洋間のソファで向かい合って座る、私とお母さん。
「あ? もしかして高校生になるにあたって、お小遣いの金額交渉とか?」
「…………」
「だったらまず精算して! これまで十五年間預けっぱなしのお年玉! お母さん銀行による預貯金の不正横流し疑惑を追求させて……」
「桜里子!」
「話をはぐらかそうったってダメだよ、お母さん!」
「話題を逸らしているのは桜里子でしょ? いいから聞きなさい!」
ちっ……この際だからハッキリさせておこうと思ったのに……
「あのね桜里子」
使途不明となった相当額、私、絶対に忘れませんから!
「浮かれポンチの新入生が一番気をつけなくちゃいけないこと」
「はい?」
「言ってみなさい」
なんだろうな……?
「出会い頭の交通事故? 食パン咥えながらガッシャーン! って?」
「違います」
じゃあ、なんなんです、お母様? 勿体ぶらずにご教示下さい。
「それはね――胡散臭い勧誘よ」
「あー」
「あなたたち新入生は世間の「せ」の字も知らないひよっ子、純真無垢な雛鳥なの。悪い人から見たら格好の得物よ。一番狙われやすい時期なの!」
お母さんは至極真面目な顔で金言を授けてくれた。
「浮かれ気分で甘言に乗せられたら、後で大変な目に遭うんだから!」
「な、なるほど」
「たとえ外面が良さげに見えたとしても、実は腹に一物、じゃ目も当てられないわ」
「ですね」
「いい、桜里子?」
「はい、お母様」
「人を見た目で判断してはダメよ。用心して観察しなさい」
「はい」
「もし少しでも怪しいと感じたら、躊躇せず逃げること。分かった?」
これ! こうですね!
耳障りの良いお誘いでも、毅然とした態度で断る! 中途半端な罪悪感は無用の長物!
こうしていれば面倒事に巻き込まれることもありません!
(感謝感謝お母さん!)
やっぱり持つべきものは親ですね! 身内のアドバイスこそ一番親身だもん!
損得打算など関係なく心から私を思ってくれるのはお母さんだけです!
「よしっ!」
お母さんの尊い教えを胸に、桜里子、羽ばたきます!
女子高生として、正しい道を歩んでいきます!
「頑張れば、頑張るとき、頑張るぞーい!」
山田桜里子、女子高生としての第一歩です!