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廃棄世界に祝福を。  作者: 蒼月 かなた
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告げる言葉

 あの後―― 不穏な空気が流れる食堂に辿りついた私達だったんだけど……。 食堂の中は混沌としていた。

 美味しそうにユーリの足元でご飯を食べるルカと、 ほとんどの片付けが終わったものの、 ヴァイさんを心配してかこの場から離れられないでいる顔色の悪いガルヴさん。

 ヴァイさんはご飯は食べ終わったらしいけど、 もうどうにもしてくれって感じでテーブルに突っ伏している……。 ユーリは相変わらずの状態だけどご飯は食べ終わってるらしい。 表面上は、 にこやかにルカと談笑してた。 

 ユーリ…… いつの間にルカと、 そんなに仲良くなったの?


 『あぁ―― 伝言の件はコイツルカから聞いた…… その顔じゃあ決心したんだな? ルカルド』


 『あ―― あぁ。 えぇ、 はい…… それで、 黒竜騎士団ウチの皆に聞いてもらいたい事が―― 』


 説明しようとしたルドさんより先に、 ユーリにそう言われて珍しく動揺したらしい。 ルドさんの物言いが、 なんとも歯切れの悪い物になってしまった。 


 『そうか。 丁度良かった…… 俺もお前たち全員に話したい事があったんだ。 だが、 そうだな―― 俺も、 お前も話が長くなるかもしれないからな…… 業務に支障が出るのも拙いだろう? リゼが俺達の為に親睦会を開いてくれた店でいいよな? 』


 ルドさんが告げる言葉は一旦飲み込まれ、 何とも言えない沈黙が降りる。 …… 皆の予定とか聞かない辺り、 強制連行ですか? ユーリ。

 けど、 誰も今のユーリに逆らえる気はしない。 なので、 仕事が終わったら飲みに行くことになりました。 ―― 私は飲まないけどね。 

 昨日の書類仕事は、 案の定ミスが多かったようでユーリから沢山の書類が返ってきましたよ。

それを胃が痛いような気持ちで修正しましたとも。 無意識のうちに一応は仕事ができても、 その完成度は悪かったらしい。 


 で、 現在。 


 変な空気のまま、 例の飲み屋に到着して着席した所だったりします。 何の因果かこの前と同じ部屋だった。 アスさんが奥に行ったので私もその後に続いて座る。 そんな私の横にユーリが座った。 追い詰められたウサギってこんな気持ちだろうか。

 ユーリから、 一番離れたかったであろうヴァイさんはアスさんの前、 その横にエイノさんそしてガルヴさん。 今回の扉に近い席にはルドさんが着いた。

 席にはすでに飲み物や食べ物がセッティングされてる。 ―― 小さいサイズの『神殺し』 があるんだけど…… ユーリ、 これ飲む気??


 「さて、 今日はいきなり悪かったな―― それと、 昨日からの俺の態度も…… かなり、 お前達に負担をかけた―― と自覚はしている。 まぁ、 それの詫びと言う訳でも無いが、 今日は奢りだ。 話が終われば追加注文もしていいぞ? 」


 あれ? 何だかユーリ、 普通の状態に戻ってる……――??

呆気に取られてユーリを見れば、 苦笑したユーリに頭をポンポンと叩かれた。 ―― また子供扱いですか……。 けれど、 その様子を見た他の団員みんなが、 緊張した空気を解いて大きな長い溜息を吐いた。 

 ヴァイさんに至っては、 椅子から半分ずり落ちるようにして天井を見上げて両手で顔を覆ってるよ。 今回一番苦労したもんね。 ユーリの攻撃目標って感じだったし。 

 今思えば、 ユーリのヴァイさんに対する仕打ちも、 私の事を保護者のような気持ちで守ってくれようとしたのかな、 とか思わず自虐的に考えてしまった。 子供扱いデスモンネ。


 「俺―― 生きてる…… 生き残ってる」


 不穏な事を口にしてるのはヴァイさんだ。 そんなヴァイさんをユーリが苦笑しながら見ていた。 

良かった。 張り付いたような満面の笑みも無ければ、 瞳の色も変化したりしていない。 本当に元のユーリに戻ったらしい。


 「俺の話は後で良い―― ルカルド、 まずはお前の話を聞こうか」


 「団長からじゃなくても良いと? ―― あたしは別に後でも構わないけど」


 勢い込んで話すつもりが、 結局仕事終わりまで待たされる事になった所為か、 ルドさんの口調はいつもの調子に戻ってしまった。 当人的にもこの方が気負わずに話せるから―― とも言っていたけれど。


 「多分、 俺の話よりお前の話の方が先が良い」


 俺のが長くなりそうだしな―― とユーリが苦笑しながらそう言った。 


 「なら、 遠慮なく―― 朝も言ったケド、 あんた達全員に聞いてもらいたい事があるの。 まぁ、 団長の件で大分印象は薄れちゃったとは思うんだけど…… ここん所、 あたしも様子がおかしかったでしょ? まぁ、 その理由ってヤツ」


 勢いがあった朝とは違い、 言い難そうにしてるのは出鼻を挫かれたからだろうか。 朝の勢いのまま話せてたらきっともっと楽だったに違いない。

 だからと言う訳でもないだろうけど、 チクリとユーリの様子がおかしかった所為で印象が薄れたって言ってるし。 言われたユーリは苦笑してるけどね。

 

 「話せば、 長くなるから掻い摘んで言うけど―― あたしが黒竜騎士団に異動―― ってより左遷されたそもそもの原因、 あんたたちも知ってるでしょ? 正直なトコ、 あれは濡れ衣だったんだけど、 それを証言してくれるはずの人がいたのよ。 ―― まぁ、 あたしが結婚するつもりだった相手なんだけど…… 」


 「―― 結婚…… 」 「え? 相手は男か?? 」 「ヴァイ―― それは無いだろ。 ルドはノーマルだぞ」 「ルドにそんな女性あいてが居たんだねぇ…… 」

 何と言うか、 皆―― 言いたい放題だね。 

 アスさんはポツリと一言。 ヴァイさんがバカっぽい事をのたまってルドさんに睨まれて―― 呆れ顔のエイノさんがヴァイさんにそう言った後、 ガルヴさんがしみじみとそう呟く。

 てか、 ヴァイさん。 男同士で結婚っていうのは私は聞いたこと無いんですけど…… ルドさんの事、 本当に男の人が好きだって思ってたんだろうか……。


 「ヴァイ―― あんた後で覚えときなさいよ…… まぁ、 取り合えず、 その彼女がね…… レラン伯に監禁されてるの」


 半殺しにしそうな目つきでヴァイさんを睨んだ後、 ルドさんが吐きだすようにそう言って唇を噛んだ。


 「―― レラン伯って…… 例の件の? あの令嬢の父親だよな?? 」


 流石にそこは知ってたらしいヴァイさんが、 訝しげに疑問を投げかける。 

 他の面々も、 ユーリと私以外は理由が思いつかなかったようで、 問いかけるような眼差しがルドさんに集中する。 まぁ、 そうなりますよね。 

 証言者が迷惑ってだけなら、 正直な所、 監禁せずに殺す方が簡単だし。 娘と結婚させたいからルドさんの恋人が邪魔だってんなら、 冷酷なようだけどそれもまたご同様だ。  


 「何でそんな事になってるんだい? 」


 ガルヴさんの言葉に、 ルドさんは、 溜息を一つつくと話はじめた――

 エルナマリアさんと愛し合ってた事。 ファーリンテ嬢がどのように関わって来たか―― 誤解を解くためにエルナマリアさんが証言するはずだったのに、 どうして証言が行われなかったのか―― とかね。

 そして、 塔に閉じ込められたエルナマリアさんが、 どういった仕打ちを受けているのかと言う事と、 ガート男爵と結婚させられそうになっているって事もしっかり話す。


 「もちろん、 助けに行くんだよな? 」


 間髪いれずにそう言ったのはヴァイさんだ。 その顔を見れば、 助けに行かないって言う気なら殴るぞって書いてあって思わず苦笑する。


 「えぇ」


 迷い無く答えたルドさんだけれど、 その顔には苦悩が浮かんでいた。

 その様子を見たガルヴさんが、 少し哀しげな様子をみせた後、 労わるように言葉を紡ぐ。


 「―― ルドは、 今も彼女を愛してるんだね」


 「正直、 ずっと恨んでた。 裏切られたって思ってたしね…… けど―― そうね…… 少し前まで認めたくなかったけど、 認めるわ。 まだ愛してる」


 愛してる。 ちゃんとそう言える位には自分の気持ちに折り合いをつけられたんだなぁって思って、 私は安心した。

 ちょっと前まではグチャグチャのボロボロだったしね。 愛してる気持ちを押しこむために裏切ったエルナマリアさんを恨んでたのに、 実はエルナマリアさんも被害者だった上に、 今も監禁されてるとか―― 悪夢でしかない。

 レラン伯の事を信じずに、 ちゃんとエルナマリアさんを探していたら―― とか彼女を恨んで来た見当違いの時間とか―― 突然突き付けられた真実に翻弄されて自己嫌悪に陥ってたっぽいし。

 

 「それなら、 間に合う―― きっと」


 アスさんがそう言って笑顔を浮かべた。 


 「ルドの口から、 女を愛してるとか聞くと不思議な気もするけどな。 で、 俺たちは何を手伝えばいい? 」


 男が好きだとは思って無かったが、 女嫌いだったろ―― そう言ってエイノさんが笑顔で言う。

自分達が当然手伝うんだろうって思ってる言葉に、 私は嬉しくなったんだけど、 ルドさんは違ったようだ。 驚いた顔をした後、 身を乗り出して気まずそうに話す。


 「ちょっと待って! 手伝って貰おうとは思ってないわよ。 ただ、 この件で―― あんたたちに迷惑を掛けるような事があるかもしれないから、 断っておこうと思っただけで―― 」


 尻すぼみになって行く言葉に、 呆れた顔をしたのはヴァイさんだ。


 「はっ! 冗談だろう? 同じ釜の飯を食った仲間じゃねーか。 迷惑が掛かるかもって言うんなら最初から話に噛ませろ」


 その方が迷惑じゃないしな! と言う言葉に他の皆も頷く。


 「ヴァイの言うとおりだ。 どうせ、 団長達も首を突っ込む気でいるんだろうし。 足手まといにはならんさ。 手が増えれば、 事が早く済むだろうしな」


 エイノさんがそう言って苦笑しながら私とユーリを見る。 端っからルドさんだけにさせるつもりは無かったので、 笑顔を浮かべて肯定しておきましたとも。


 「馬鹿じゃないの? 皆で首を突っ込めば、 黒竜騎士団が責められる事になるかもしれないのよ? あたしが一人でやれば、 責任は私だけが取ればいいんだし―― 最悪―― エルナと一緒に逃げれれば―― 」


 おっと、 最悪は駆け落ちする気だったのか。

 まぁ、 それはそれで女性に受ける物語ロマンスになりそうな話だけどね―― ルドさん? でもね、 私は―― ユーリもだと思うけど、 黒竜騎士団ウチの優秀な人材を易々と手放す気は無いですよ? 

 一番のハッピーエンドは、 エルナマリアさんを救出して陽の下を何の不安も無く歩けるようにしてあげる事と、 ルドさんが何の罪に問われる事も無く、 騎士を辞めずに済むようにする事だって思ってる。


 「それは止めた方が良い。 オレも他の皆の意見に賛成だよ。 一人で出来る事なんてタカがしれてるし…… ルドだけじゃ助けられないかもしれない。 彼女を救出できても、 ルドが黒竜騎士団を辞めるような事にはなるのは嫌だな」


 ガルヴさんがそう言って、 ルドさんに言い聞かせるようにして話した。

父親の元から娘を攫うなんて本来なら犯罪なんだけどね。 この場合は父親がロクでもないから誘拐というより保護だろうし。 

 何より、 リアから揉み消して良しってお墨付きも貰ってる。 むしろ揉み消すなら積極的に協力してくれるみたいだしさ。 だから、 ルドさんが考えるように黒竜騎士団に迷惑がかかるような状況はありえない・・・・・。―― 王妃様頼りにしてます。


 「―― 救出さえ出来ちゃえば、 揉み消すだけの準備はありますよ? この件の裏を取る為に情報収集をお願いした私の幼馴染兼親友が『ありとあらゆる権力を行使して守ってげるから』 と言ってたので」


 笑顔でそう告げれば、 ユーリが少し考える仕草をした後に安心したような顔をした。


 「あぁ、 成程。 いざとなったら、 俺がどうにかするつもりだったんだが―― 貴族連中に信用が無い俺よりも、 その方が安全で確実だろうな」


 どうやら、 ユーリの方も何か考えがあったっぽい。 

 けれど、 ユーリの持ってるカードより私が持ってるカード…… と言うかリアが切れるカードだけど―― それの方が安全確実だって判断したようだ。

 確かに、 評価が上向きになりつつある黒竜騎士団と団長ユーリだけど、 最近―― やたらと侍女さんに話しかけられるようになって来てるユーリだけど―― 腐っても王弟殿下だし……―― 貴族の人達の評価が昔みたいに戻ったかと言えば、 まだまだだし。 

 あぁ、 でもその内、 うちの娘をどうでしょう? とか言われるようになるんだろうな…… ユーリが正当に評価してもらえるのは嬉しいんだけど、 いつか、 ユーリが結婚する事を思えば複雑な気持ちになった。 その思いをぎゅうぎゅうと押しこめて、 私はチクリと痛む胸に気付かない振りをして話をした。 


 「あれ? ユーリ。 その辺はルカから聞いて無かったんですか?? まぁ、 ユーリがどうにかしちゃうと、 うちの団員の話なんで贔屓だとか何だとか色々勘ぐられそうですしね」


 そうそう。 評価云々よりも、 ユーリが身贔屓で問題を握りつぶしたとか言われたりするのは勘弁だ。

それに、 そんな風に言われてしまったらエルナマリアさんとルドさんの未来にもケチが付きそうだしね。


 「―― 王弟殿下より、 確実安全なカードが切れる人間って誰よ…… 」


 考えるのも怖いんだけど―― って嫌そうな顔でルドさんに言われた訳ですが。

 私はちょこっと考えた後―― 説明すると、 それはそれで面倒そうだと判断して笑顔で誤魔化す事にする。


 「ん? その内、 嫌でも分かると思うんでノーコメントで。 でも、 そこは本当に心配しなくても平気ですからね」


 うふふと笑顔で笑いあう私とルドさんに周囲からは呆れたような気配を感じますが。

 カードを切るって事は直接的にしろ、 婉曲的にしろいずれ王妃殿下の名を出さなくてはいけない時が来るって事だ。 その時にまぁ、 説明すればいいよね。 とは言え、 さっきも言ったように幼馴染なだけなんだけど。 


 「むしろ、 救出した後ですよね。 エルナマリアさんが隠れ暮らさないといけないようなのはちょっと…… 」


 「そっちは、 俺に考えがある。 身元―― と言うか新しい生い立ちを作って、 貴族の養女にすればいい。 あてもあるしな…… そうすれば、 いずれルカルドとも結婚できるだろ? 」


 私の心配に答えたのはユーリだった。 流石は団長―― まぁ、 確かにそれが一番の早道かな。

エルナマリアさんには召喚の力がある訳じゃ無いし、 師匠に頼んでウチの親戚って訳にもできないし、 ユーリに丁度いいあてがあるのならそれに越した事は無い。 そっちはユーリに任せて置く方が良さそうだ。


 「―― 団長! それはちょっと先走り過ぎだわ。 養女の件には賛成するけど、 エルナはもう―― あたしの事をそんな風に想ってないかもしれないんだし…… 」


 駆け落ちするみたいな発言をした癖に、 ルドさんは戸惑ったようにそう言った。 身なりもこんなんだし、 噂を聞けば、 自分がどんな事をした事も分かってしまうだろう―― そう話して口を噤む。

 オネェさんになって、 人の結婚話を壊して回った事を言ってるんだろうけど、 それは理由があっての事だし話せば理解してくれると思うんだけどな。


 「まぁ、 会ってみないと分かんないですよね。 けど、 そこは大丈夫だと思いますよ? どっちかっって言ったら、 自分の所為でルドさんが辛い目に遭ったって思ってるみたいですし、 その罪悪感からルドさんから逃げ出しそうな気がします。 だから、 ちゃんと捕まえてあげて下さいね」


 まぁ、 それこそカンみたいなものだけど、 エルナマリアさんはまだルドさんに好意を持ってるんじゃないかなって思う訳ですよ。 

 泣きながら、 ルドさんに縋る資格が無いって言う位だし。 泣くほどそう思うのはルドさんの事を愛してるからじゃないのかなって……。 


 「はぁ…… ありそうで嫌だわ。 けど、 リゼ…… 何だか急に女心が分かるようになったみたいね」


 ニヤニヤと笑ってそんな事を言われて私は思わずルドさんを睨みつける。 何言ってんですか。 女心――? 元々私は女ですが――。 そんな事よりも、 言外にユーリへの気持ちを見透かされたような気持ちになって思わず語気が荒くなる。


 「女心?! 違いますよっ! 純粋な考察と、 推理の結果っ―― そう結果ですよ」


 そうだ。 ちゃんと根拠のある事だしね? そんな女心とかいう曖昧な感じの乙女ちっくな事柄とは関係ない―― はずだ。


 「まぁ、 そう言う事にしておいてあげるわ。 ふふ。 あたし、 大分冷静じゃ無かったかしらね? ただもう突っ走ってって助けられれば良いって思ったわ。 ―― ありがとう。 騎竜を絆を結ぼうって時に、 面倒事に関わらせちゃうけど…… エルナを助けるのに協力して欲しいの」


 そう言う事にしておいて貰える事になったらしい。

 文句を言えば、 余計な事を突っ込まれかねない予感がして、 私は黙った。 それを見たルドさんが、 柔らかく微笑んだ後、 ふっきれたように言葉を続ける。


 「任せろ。 特に荒事なら得意だぞ? 」 「荒事にならないように、 普通は立ち回るんだがな? まぁ、 この面子ならどうにかなるさ」 ヴァイさんの不穏な発言にエイノさんが突っ込みを入れつつも『大丈夫』 だと言い切る。

 「うん。 僕もルドの力になりたい」 「うんうん。 団員みんな家族みたいなもんだしね。 あれ? 違ったかな」 呟くように、 けれど力強く言うアスさんの言葉に、 嬉しそうにガルヴさんが笑顔で話した。

 良いなぁ、 この仲間が困ってるんなら助けるのは当然だって言う空気感。 面子は違うし、 人数も少ないけれど―― エイス団長の―― 昔の黒竜騎士団を思い出す。 


 「いいや―― ガルヴの言うとおり、 家族みたいなものさ。 ―― 俺はそんな事も忘れてたんだなぁ…… まぁ、 取り合えず、 エルナマリア嬢の救出には黒竜騎士団全員であたる。 幸い、 どこからも文句は出ないようだしな」


 ガルヴさんの言葉に目を瞠ったユーリだったけど、 一瞬哀しそうな顔をした後、 嬉しそうに笑ってそう言った。 『家族みたいなもの』 その一言が、 ユーリに与えたのは救いのようなものだったのかもしれない。

 ポッと出で副団長になった私の言葉なんかよりもガルヴさんの言葉はきっと―― ユーリの心に響いたはずだ。 それを否定する事無く、 当たり前に頷く他の団員みんなの存在もだけれどね。 

 遅くなりました。 申し訳ありません。

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