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廃棄世界に祝福を。  作者: 蒼月 かなた
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団員がここに居る理由。

短いですが。

 部屋から出て、 一旦執務室に向かう。 机の中に入っている団員の身上書を引っ張り出して、 お供を引き連れ食堂へ。


 『何て言うか、 座りたく無い環境だね? 』


 ルカが言うように、 床は汚れが酷い。 調理場はいつから洗われていないのか、 カビで黒くなった食器が積み上がっている。 正直衛生的にもヨロシク無いし、 見た目的にも完全にアウトだ。 


 「自炊、 してないねぇ」


 朝食だけは騎士達が交代制で食事を作るハズなんだけどな。 長期の討伐や何かがあると自炊するしかないから、 それの練習のためにね。 

 ちなみにここの連中、 城内の共同食堂は他の騎士と揉めて出入り禁止になってる。 

空き瓶やら、 持ち帰り用の紙の入れ物やらが散乱しているから、 街でご飯を食べたり屋台で買ってきた物を食べてるんだろう。

 それは別に良いんだけどさ。


 「片付けろっての」


 『…… オレ、 鼻が曲がりそうなんだけど』

 

 クロが半泣きしそうな声で言う。 シェスカは完全に涙目だ。


 『僕、 外で待ってたらダメ? 』


 リィオの言葉に『『『お前だけダメに決まってるだろ! 』』』 とクロ達の声がかぶる。

皆には申し訳ないけど、 ここは私に付き合って貰うしかない。 一気に終わらせたいし。


 「シェスカとルカは正面玄関に出られないように廊下を塞いで。 クロとリィオは扉壊しちゃっても良いから、 寝てるやつら起こして纏めて此処まで連れて来て。 分かってると思うけど、 話したりしたら駄目だよ。 悪いけど、 動物のふりしててね」 


 そう指示を出して皆が出て行くと、 私は比較的綺麗な椅子に腰かけて身上書を簡単に読み始めた。

団員は普通の騎士団では最低でも十人は居るんだけど、 この騎士団には五人しかいない。

 まともな神経を持った人はこの現状に耐えきれず、 異動願いを出して出てったからだ。

では残ってる団員は? 脛に傷があるために異動願いを出しても受理して貰えない者達だ。



  『ルカルド・アル・セティル (二十六歳) セティル伯爵家三男。 風の領ウィントス出身。

   学院の成績は優秀。 紫鷹騎士団に所属。 同団員の婚約者を寝取ったため黒竜騎士団に異動』

  

  『ガルヴ・エンノート (三十歳) しょうの領ゲーティア出身。 白竜騎士団に所属。

   人を襲ったため殺処分の決まった飛竜を逃がしたため黒竜騎士団に異動』

  

  『ヴァイノス・セルドレ (二十八歳) 火の領ファイオス出身。 赤虎騎士団に所属。

   街中で一般人に重傷を負わせる。 これにより黒竜騎士団に異動』

  

  『エイノルト・マッカート (二十三歳) 水の領ウィンディア出身。 青狼騎士団に所属。

   同騎士団内で同僚の財布を盗んでいる所を発見され黒竜騎士団に異動』

  

  『マイアス・ゼン・クアト (二十二歳) クアト男爵家二男。 地の領アースゲイド出身

   緑鹿騎士団所属。 領内で毒草を育てていたため黒竜騎士団に異動』



 まぁ、色々なとこから宜しくない理由でトバされて来てますね。

けど、 陛下が『元は実力がある』 って言ってたし、 異動させられた本当の理由も陛下に聞いて知っているので根性叩き直せばどうにかなるんじゃないかと思っている。


 「はっきり言って理由を聞くと皆、 世渡りが下手なだけな気がするんだよね」


 身上書をパタパタしながら聞いた話を思い返してみた。


 セティルは友人の婚約者を寝取った事になっているけど、 実際はセティルに一目ぼれした友人の婚約者が暴走してセティルを呼びだし押し倒したらしい。 で押し倒された所を、 他の同僚に発見される。 もちろん、 当人に寝取る気は無かったから否定。 すると受け入れて貰えなかった事に腹を立てた友人婚約者が乱暴されそうになったと騒ぎ…… 周りは令嬢を信じた。 

 この騒ぎを起こす前は大人しくて自己主張も出来ないような娘だったから、 その娘がそんな大それた事出来ないでしょとなったみたい。 かくして、 誰にも信じて貰えず異動になった彼は女嫌いになったうえオネエになった。 美貌を活かし、 気にいらない令嬢の恋人を取ってから捨てるのが彼の趣味だ。 

 エンノートは人を襲った飛竜を逃がした訳だが、 これは襲われた人間に問題があった。

その飛竜は、 とても穏やかで優しい気質。 嫌がらせされても暴れたりしないとても良い子だった。

 その飛竜の乗り手は小柄なお嬢さんで、 平民出の可愛い子だった。 さて、 どこでもバカと言う物は存在する。 この子を好きになったのが、 同じ騎士団に所属する某侯爵家の二男。 よりにもよって竜舎で彼女を押し倒した。 この時最初にバカを邪魔したのが主を守ろうとした飛竜。 その騒ぎに気付いてエンノートが彼女を助けた。 

 それが気に食わなかったバカは、 襲われかけた醜聞を恥じて彼女が黙っていた事で、 処分されなかった事を良い事にエンノートと飛竜に嫌がらせをはじめる。 エンノートは耐えていたが、 飛竜はそうはいかなかった。 

 主に酷い事をした人間を許せなくて、 重傷を負わせたのだ。 結果、 バカは騎士を続けられなくなり飛竜は殺処分が決定する。 後はそれを憐れに思ったエンノートが飛竜を逃がして異動する事に……。


 セルドレが街中で一般人を半殺しにしたのもちゃんとした理由がある。

彼の場合は夕暮れ時の裏路地で『良いトコのお嬢様とお坊ちゃまがいかにもお忍びで街に出たら、 カモ認定されて乱暴されそう』 になっている所を見かけたのだ。

 坊ちゃまは殴られて青い顔をして戦意喪失中。 お嬢様は服の胸元を破られて真っ青になって震えている状態。 妹が居るセルドレは頭に血が昇り三人相手に孤軍奮闘。

 気付けば、 お嬢様とお坊ちゃんは逃げた後で騒ぎを聞いてきた警邏隊にセルドレの方が捕まった。

三人の男達は結託して、 歩いていたらセルドレと肩がぶつかってしまい謝ったのに殴られたと主張。  セルドレにとって最悪な事はお嬢様達が名乗り出なかった事だ。 あんな所で乱暴されかかったなんて言ってしまったら、 婚約してたら破棄になるし婚約してなくても結婚話が来なくなるからね。


 マッカートは財布を取ったとされているけど、 事実は逆だ。

マッカートの同僚が賭けに手を出し借金。 返済に困って、 別の同僚の財布を盗んだ。 マッカートは財布を取った同僚と仲が良くて友人が財布を盗んだ事に気がついた後、 友人にはお金を貸して、 自分は盗まれた財布を返しに行った。 

 財布を盗まれた同僚はポケットに財布が無い事に気付き、 部屋に忘れたのだろうと取りに行った。 そこで自分の部屋の前で特殊な器具を使って鍵をめようとしているマッカートを発見する。 

実際はマッカートは鍵をけて財布を返そうとしていた所だったのだが、 彼は孤児時代にスリをしていた事もありその主張は退けられた。 

 マッカートの友人は、 大事になった事で彼を切り捨てる事にしたらしい。 マッカートが金に困っていたようだと密告して全てをマッカートになすりつけた。 


 クアトの毒草騒動は、 彼が趣味の野草を育ててた事から誤解が生じている。

元々、無口で誤解されやすいクアト。 彼の趣味が野草を育てる事だった。 しかも毒性を持つ物が多かったのだ。 

 しかも彼はそれを干して粉末状にしていて、 部屋の棚の中にわざわざラべリングして置いていた。 

友人の居なかった彼の趣味は暫くの間発覚しなかったんだけど…… ある日の早朝発覚する。 

 友達の居ない彼がいそいそと城の裏手の森に入って行くのに気付いた者がいたからだ。 楽しそうな彼の様子に、 もしや根暗男に彼女がいるのか、と団員の幾人かが後をつけていった。

 そこで見たのは毒草をニヤニヤしながら育てているクアトの姿。 その団員達の報告を受けてクアトの部屋が捜索されて、 まったく隠されていない毒草の粉が発見される。 コレの所為で、 クアトは誰かを毒殺しようとしていると言う事になってしまった。

 ちなみにこの毒の粉末、 量を間違えずに調合すれば薬になる。 

ここまでくれば分かるだろう。 彼の本当の趣味は毒性のある野草で体に良い薬を作る事である。


 何と言うかまぁ、 見事に冤罪。 ただ、 それを証明できなかったが為に彼等は今ここにいる。

実際目撃者とかいたりとかもしたんだけど、 証言としては弱いって採用されなかったりね。

 まぁ、 信じて貰えないって言うのはツライものがあるのは分かるけど。 だからって黒竜騎士団で怠けて良いって事にはならないよね? まずは実際に会ってみてからだけど話し合いが駄目そうなら肉体言語で会話しようか? 


次は団員さん達とご対面。 ヘタレな団長が出てくるにはもう少しかかるかも。

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