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廃棄世界に祝福を。  作者: 蒼月 かなた
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どうせ私は童顔ですよ。

白竜騎士団第一分団出そろいました。

 会議室に入ると六人の男女が席から立ち上がった。 お互い騎士の礼を取る。

白を基調とした室内は、 大きな窓から入る光によってとても明るい雰囲気だ。 うちの騎士団は焦茶と黒を基調とした重厚感がある雰囲気なので、 騎士団によって大分違う物だと思わず目を走らせた。

 真ん中に大きな長方形のテーブルがある。 角が取れて丸くなっているので圧迫感は感じない。 

 

 「ようこそ、 白竜騎士団へ。 初めての人もいるようだから自己紹介しておこうか。 僕は白竜騎士団第一分団分団長ケイオス・セイ・クラレスです」


 ケイオスがにこやかに笑ってそう言った。


 「今回の件、 感謝する。 黒竜騎士団団長ユリアス・ヴァン・ファーレンシアだ」


 ユーリがケイオスと握手を交わして笑顔で言った。 ユーリもちゃんとしようと思えばそれなりにできるらしい。 騎士団会議の時よりしっかりして見えるのは何故だろう。


 「暫く、 になるか…… 当分になるかは分からないが宜しく頼む」


 「ふふ。 そうですね。 全ては報告を聞いたうちの団長が判断する事ですから。 一応、 僕達は公平にありのままを報告しますよ。 そこは安心して貰って大丈夫です」


 ケイオスが爽やかな笑みを浮かべているからと言って安心はできない。 付き合いは浅いが、 ケイオスもまたセト様の血縁だと言う事実がこの笑顔で確信できたからだ。

 セト様の系統って面白い事が大好きなんだよね。 ケイオスのこの笑顔はセト様が新しい玩具を見つけた時とか、 楽しい事があるってワクワクしてる時の顔にそっくりだった。 

顔の作りは違うのに…… 血って怖い。

 まぁ、 たまたま似てるだけで何の裏もないって場合も考えられるけど。 

うーん。 こんなことなら、 学院にいる間に仲良くなっておけば良かった。 もっと性格が分かってれば今の笑みがどっちの笑みか分かっただろうに。 正直言うと学院にいる時は敢えて近付かないようにしてたからなぁ……。


 「さて、 一緒にこの大仕事に関わるんですから、 他の団員にも自己紹介して貰いましょうか」


 ケイオスの言葉を受けてロービィが一歩前に出る。


 「ロービィ・デル・ハイムです。 宜しく。 ロービィって呼んで下さい」

 明るい茶色の髪に、 青い瞳。 誰にでも好かれる人懐っこい笑顔。 付き合ってみれば性格には癖があるけど、 基本はいいヤツ。 


 「エーリケ・レナ・シェストよ。 エーリケでいいわ」

 黒っぽい緑の短髪。 前髪に片目は隠れているけど赤茶色の瞳。 表情が読みづらい。 エーリケは普通は男性名がから最初男性かと思ったんだけど、 どうやら女性のようだ。 女性にしては身長が高い。


 「フィオナ・ジス・カイベルです。 フィオナと呼んで下さい。 宜しくお願いします」

 柔らかな口調で話すのは、 ほわんとした表情で、 長い金髪を編み込みで纏めている碧眼の美女だ。

羨ましいまでのバランスのとれた肢体。 ヴァイさんとエイノさんのテンションが上がるのを感じる。

好みだったらしい。 


 「ジョイナス・クルト・マードックだ。 宜しく。 ジョイナスでいいぜ。 ちなみにフィオナは俺の彼女だから。 手ぇ出すなよ」

 そう言ったのは、 この中で多分一番年上の男性。 顎に無精ひげを生やしたがっしり体型の青年だ。

どうやら、 フィオナさんの彼氏らしい。 挨拶する笑顔に恫喝が含まれている。

 まぁ、 これだけ美人さんの彼氏だと牽制しとかないとって気持ちは分かる。 恫喝するジョイナスさんにフィオナさんはしょうがないわねと苦笑しながらもどこか嬉しそうだ。

 「マジか! すげぇ残念」そう正直にヴァイさんが言ったのに私達も苦笑する。

その後はこちらが自己紹介をして席に着いた。 


 「今回の件で断っておかないといけない事がありまして。 今回、 うちの団長からの指示で僕の召喚獣は作戦に参加させません。 理由は一つ。 他騎士団に普通召喚獣はいませんから、 その想定でやるようにと。 それからいるのと同じ位の結果を出してこい…… だそうです」


 ケイオスが苦笑しながらそう言った。 ケイオスの召喚獣と言えば神狐しんこほむら。 真っ白い毛並みに足元と尻尾の先に朱色が入る狐だ。

 騎士団の所属は基本的に出身領であることが多い。 特に、 領主の血縁者は確実だ。

なので、 召喚獣を擁してる騎士団は白竜だけになる。

 部屋に入ってからずっと気になってたんだよね。 部屋の隅。 白い塊が尻尾を床にベシベシしててさ。

前に会った事があるから知ってるけれど、 あれは焔だろう。

 ケイオスと一緒に仕事が出来なくて拗ねてるんだね。 

 

 「残念ですが、 そう言うことなら仕方がない。 頑張って結果を出すとしよう」


 焔の尻尾を見て苦笑しながらユーリが言った。 ユーリの言葉に焔の尻尾がより一層ビタンビタンと床を叩く。 ケイオスはしょうがないなぁって顔をしてるし、 ロービィは肩を揺らして笑いを噛み殺してるけど…… 後で焔に噛まれても文句は言えないぞ、 それ。


 「さて、 では肝心の作戦をどうするか、 ですが」


 「分団長。 黒竜騎士団と合同であれば、 アレが出来ると思いまーす」


 ケイオスの言葉に、 にやりと笑ったロービィ発言した。

笑いながらこっちを見る感じに、 嫌な予感がするんだけど。 ロクな事考えてる顔じゃないよねコレ。


 「まぁ、 そうだねぇ」


 「アレとは? 」


 やっぱりこちらを見て笑うケイオスとロービィを睨みつけといて私は聞いた。

…… 聞こうじゃないか。 私に何をさせたいか。


 「囮作戦をしようかと思ったんだけれどね。 うちの女性陣だと年齢的に若い娘役は無理だったんだよ」


 確かにフィオナさんはどう考えても少女って感じにならないし、 エーリケさんも身長とかまぁ色々少女向きではない。 そんな事を考えてたら、 私に視線が集中している事に気がついた。


 「…… 私から言えと? 」


 言いたい事は分かったものの自分から言うのはシャクなので、 そう言ってを睨み返す。


 「いやまぁ、 ね? リゼッタさんは年齢の割に若く見えるし、 背も小さいから…… ね? 」


 お伺いをたてるように言うケイオスに、 苦笑を噛み締めるユーリ。 隣に座るユーリの足は思いっきり踏んでやった。 痛みを堪えて変な顔になってますよ団長。  

目を逸らしたウチの団員達は次の鍛錬の時に覚えてるがいい。 いつもの倍しごいてやる。

完全に笑ってるロービィは後で絞める事にしようか。 それともロービィが酷いってミィナに告げ口してやるほうが効果的かな。  


 「どうせ私は童顔ですよ。 小さいのは母方の家系のせいです。 しょうがないでしょ。 まぁ、 やるのはいいですよ…… その方が、 犯人の懐深く潜れるでしょうし。 攫われた子達の無事の確認もしやすいはずですから」


 攫われてるのは主に十代前半の少女。 一番幼いのは五才の少女と聞いた。

私の顔はそんなに童顔だろうか……。

 いや、 身長が低いから年齢より幼く見えるに違いない。 牛乳飲もうが木からぶら下がろうが…… どうやっても伸びなかったもんな。 母方の女性はみな同じ位の身長で成長がとまるようにできてるらしい。 まるで呪いのようだ。 その証拠に私の二才下の弟は、 私より遥かに背が高い。 父に似たのだろうけど羨ましい。 

 

 「他領から来た娘が迷子になったように見せれば良いと思うのですけどね」


 「リゼッタ、 できるか? 」


 ユーリが私の呼び方を変えたのは、 呼び方を統一しないと誰が誰だか分かりにくいって話になったからである。 とはいえ、 ユーリにリゼッタと呼ばれるのは…… 変な感じがするよね。

 なんていうか、 ざわざわする? うーん。 

別に他の人に呼ばれても特に何もざわざわしないんだけどな。


 「出来ると思いますよ。 ある程度の設定を作って貰えれば」


 半ば投げやりになって言う。 演じてやろうじゃないか女の子。


 「可愛くしてあげる。 うふふふ」


 いきなり美少女、 と呟くエーリケさんがちと怖い。 どうしたんだろうこの人。 さっきまでの無口そうな雰囲気は何処に消えた。 なんだか涎を垂らさんばかりのネットリとした視線を感じるんだけど。


 「うんうん。 お姉さん達が可愛くしてあげるわよ」


 フィオナさんも嬉しそうにしているのは良いが、 にぎにぎしてるその手はなんですか?

爽やかな笑顔と行動がそぐわない。 急に不安になってきたんだが。

やっぱり辞めたいって言うのは駄目だろうか。 

 何と言うか本能的に危機を感じてユーリとケイオスを見る。


 「あー…… エーリケは女の子が好きなんだよ。 あぁ、 恋愛対象って意味じゃないから大丈夫。 フィオナは女の子を可愛く飾り立てるのが好きでね? まぁその、 頑張って」


 困ったように言うケイオス。 ロービィがもう耐えられないって感じに笑いだした。

マジ絞める。 それを知ってたが故のアレ(・・)発言だよな。 お前。 


 「自分でやりたいんですけど」


 身の危険を感じたので、 エーリケさんとフィオナさんから目を逸らしてそう言ってみた。 


 「リゼッタさん、 聞きづらいんだけど化粧の経験は? 」


 ケイオスにそう言われて、 眉をしかめる。 自慢じゃないが、 ウチの一族は総じて化粧っけがない。

幼いころは野山を走り回るのが楽しくて興味なかったし、 学院に入ってからはそんな暇無かったから今もスッピンだ。 でもそれが何の関係があると言うんだ。


 「ないですけど…… 地方から来た少女ってそんな事してます? 」


 「してるな」


 「してるね」


 私の疑問に、 ユーリが、 ケイオスが真顔で言った。


 「諦めろ」


 トドメとばかりにユーリが、 残念な子を見る目で私に言った。

周囲からの視線が痛い。 別に良いじゃないか。 お化粧なんてしなくても。 

 戦闘職にそんなもの必要なくないかと言ったら、 汗で落ちないのがあるから! とエーリケさんとフィオナさんに力説された。

確かに、 二人は邪魔にならない程度に薄化粧してるっぽい。 


 それにしてもマジか。 最近は幼い子でもお化粧するのか。 

私の村でそんな娘いたかな…… うん…… あぁ、 いたかも。 


 私より幼い子達がべにがどうとか話てたのを思い出す。 その頃の私は男の子の恰好をして男の子と走り回ってた。 森とか森とか森とか。 主に狩りとかしてた気がする。

 自分よりずっと年下の女の子の方が女子っぽいってなんだかちょっと切ない。 

でも、 お化粧とかあまり好きじゃないんだよね……。 なんか皮膚呼吸ができない気がして。

 まぁ、 仕事だしょうがない。 腹を括ろうと思う。


 「それじゃあ、 後はお洋服よね。 私が村に居た頃のなんかどうかしら? 」


 そうワクワクしながら言うのはフィオナさん。


 「いいんじゃないかな。 新品じゃいかにも怪しいし…… 使ってた物の方がいいわよね。 後はメイクかな。 元はいいし、 素材を活かせるようにしないと」


 キラッキラした目で言うエーリケさん。

 

 「そうね。 目の色が引き立つように瞼には淡い金色をのせてもいいかも。 もう少し幼く見せる為にラインを引きましょう。 目が大きく見えるわ」


 フィオナさんが頬を紅潮させて言う。

 

 「そうね、 それがいいわ! 爪はどうする? やっぱり淡いピンクかしら? 」


 こちらもテンション上げて言ってるのはエーリケさん。


 「えぇ! 初々しさが引き立ちそう。 口紅もピンクかしら? 」


 熱弁は止まらない。 二人して意気投合してテンションがガチ上がりしていくのと共に、 私の不安に思う気持ちもガチ上がって行くんですけど。


 「その方がいいわね。 王都の貴族の子には黄緑とか、 黄色がはやってるけど…… 領の子達はそんな色使わないし」 


 私を可哀想な子を見るような目で見るのヤメテ下さい。 団員達の生温い視線がブスブス刺さる。

ジョイナスさんが片目をつぶってスマンと口パクしてきた。 スマンと思うなら貴方の彼女を止めてくれ。

 エーリケさんとフィオナさんの暴走が止まらない。 私どうなっちゃうんだろう。


作戦はリゼを使った囮作戦のようです。

次回は、 リゼを着飾らせる予定。

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