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廃棄世界に祝福を。  作者: 蒼月 かなた
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犯人はセト様。

追いかけっこは決着するのか………?

 近況報告。 ここ数日は団員とは鍛錬したりして過し、 後はユーリと追いかけっこをしています。


 『また、 お前か』


 『はい。 団長』


 木陰で寝そべっている団長を発見。 その後逃げられる。


 『いい加減にしろ』


 『嫌です。 団長』


 南の塔の上で団長を発見。 また逃げられる。


 『なんでここが分かるんだ? 』


 『団長の大体の行動パターンを把握してますので』


 隠し部屋の奥に団長を発見。 別の出入り口から逃げられる。


 『おいっ! ここは初めての場所だぞ?! 』


 『そうですか? いい加減諦めて話しませんか? 団長。 』


 城の外の森の中、 木の上に団長発見。 飛び降りて逃げられた。

後はもう、 私の顔を見た瞬間に逃げる逃げる………。


 本当は気長に行くつもりだったけど、 逃げられ続けて追いかけっこはデットヒート。

遂には日中、 昼寝を諦めて移動しながら過ごす様になりやがった………。 のでまったく捕まりやしない。どんだけ、 話すの嫌なのこの人! 

 元々、 夜寝てないみたいなのに、 昼寝もしてないから顔色悪くなってくし。 本当にバカ!


 「なんで……… ここにお前が……… 」


 「あんたが、 日中逃げ回ってるからですよ! 」


 今まで追いかけてたのはほぼ城内。 一向に捕まらないので夜の酒場に押し掛けました。 

酔っ払いの喧騒が響く中、 私を見つけてぐったりした様子のユーリ。


 「おっ! なんだいねーちゃん痴話げんか? それなら俺達と飲もうぜー」


 私服だったせいもあって痴話げんかをしていると思った酔っ払いが、 私の肩に抱きつき寄りかかる。

酒臭い息を掛けられて。 イラっとした私はニッコリと笑ってやった。


 「離せ。 ――― 潰すぞ」


 冷たく底冷えするような声で言ってやったら酔っ払いが両手をあげて後ろにさがる。


 「モウシワケアリマセンデシタ」


 酔っぱらいをそうやってあしらっている間に、 こっそりと店を出ようとしていたユーリを追いかけた。


 「どこいくんです? 」


 「お前がいない所だ」 

 

 店を出て通りを進んで行くユーリ。 けど軽くお酒も入っているうえに体力にも限界が近いのか、 その足取りは重い。 重たい身体を引きずるようにして歩いて行く。


 「そうやってまた逃げるんですか? 」


 「うるさい。 だまれ」


 私達が言い合いをしながら帰って来たので、 門衛に不審そうな顔をされた。 ユーリは顔パスでさっさと入る。 私は慌てて団章を門衛に見せて城内に追いかけて行った。 


 「どこまで行く気ですか? 」


 「お前こそ何処までついて来る気だ」


 「貴方が、 諦めるまでですよ。 私から逃げて逃げて、 寝不足のフラフラの状態で――― 明日の巡回に出る気ですか? 」


 明日は黒竜騎士団の巡回の日だ。 こんな状態でこの人は本気で一人で行く気なのだろうか。

逃げるユーリの後を付いて行ったら、 いつのまにか北の塔まで来ていた。 

 まだ早い時間で人目があるのが煩わしかったのだろう。 さっきもすれ違った人達にジロジロ見られたし。

 塔の階段を上がるユーリを追いかけながら会話を続ける。

塔の一番上までやって来た所でユーリが立ち止まり、 私が振り向かせようと伸ばした手を鬱陶しいとばかりに振り払った。


 「放っておいてくれ。 ……… 俺は大丈夫だ」


 言われた瞬間、 ユーリの腹に一撃を入れる。


 「嘘つき。 これも、 避けられないのに? 」


 「っお前なぁ………! 」


 苛立ちをあらわにユーリが頭を掻き毟る。


 「今の貴方は団長としてだけでなく、 騎士としても失格です。 明日の巡回は白竜騎士団に変わってもらいました。 なので黒竜騎士団うちは非番です。 兎に角、 休んで下さい」


 「ふざけるな!! 何、 勝手な事をしてやがる………! 」


 怒りを隠しもせずに、 ユーリが私の胸元を掴んで睨む。 正直、 この時の私は大分冷静さを欠いていたと思う……… 主に頭に来てて。 私はポケットの小瓶に入れていた黒い丸薬を口に含むと、 ユーリの髪を思い切り掴んで引き下げた。


 驚くユーリを無視して口付ける---。


 「ふぐっ?! 」


 「いいこです。 ―――ちゃんと飲めましたね? 」


 衝撃で丸薬を飲んでしまったユーリを確認して満面の笑みを浮かべてやる。


 「おっ、 お前何を………? 飲ませ――― 」


 ズルズルと意識を失って行くユーリを支えきれずに、 私はそのまましゃがみ込んだ。 胸に乗ったユーリの頭が重い。


 「飲ませたのは、 即効性の睡眠薬ですよ。 こんなのも、 避けられないなんて死にに行くようなものでしょうに。 本当、 バカ」


 口の中で溶けた睡眠薬を飲み込まないようにハンカチで拭う。 効果は見ての通りだ。 ユーリは夢も見ないで朝までぐっすり眠るだろう。 

 

 「そりゃ、 酷い事してるとは思うケドさ。 そんなに私と話すのは嫌? ユーリ」 


 後頭部を撫でてやれば、 ボサボサの髪でも手触りは滑らかだ。


 「毎日毎日……… 人の顔を見るたびに逃げられて、 ちょっと位は私だって傷つくんだぞ」


 十年前のあの時だって、 他の騎士団の人達は私の事が女の子だって分かったのにユーリだけは最後まで気がつきゃしなかった―――。

ずっとずっと、 男の子扱いで………。 


 「思い出したら、 ちょっと腹立ってきた」


 寝ているユーリの頬を引っ張る。 


 「鈍感。 強情。 意地っ張り……… 私が本気で心配してるなんて思ってもないんでしょ? 」


 巡回の兵士が来た時に、 この状態は流石にマズイからユーリの重たい身体を引っ張って何とか膝枕をしている体制に。

 言い訳としては、 話込んでたら寝てしまったと言う事にしよう。 無理矢理だけど。

そうすれば、 ユーリを何処かの部屋に連れて行くのを手伝って貰えるはず……… そう思ってたんだけど。


 何故だかその巡回が来ない。


 そもそも、 こんな所で飲ませる気なかったんだよね………。 腹を割って話そうとか言って、 どこかの宿屋に連れてってそこで飲ませるつもりだった。 頭に来てついやっちゃったけど。


 「う~。 失敗したかも」


 今が温かい時期で良かった。 冬だったら凍死しそうだ。

クロ達に呼びかけてみたけど、 見事なまでに無視される。 遅くなるって言って来たし、 もう寝ちゃったかな………。 そんな事考えてたら、 私も見事に寝てたみたい。 朝の光が射して来たのを感じて目が覚めた。 そんな私が身じろぎしたのに反応してユーリも目を覚ます。


 「起きました? おはようございます。 これ、 飲んで下さい」


 私はポケットの別の小瓶から、 白い丸薬を取り出してユーリに差し出した。


 「……… コレはなんだ」


 まだ、 頭が働いてなさそうだけど不審げな眼差しで、 私と丸薬を見る。


 「昨日飲んで頂いた、 睡眠薬は効き目が強いので起きたらボーっとして体がだるくなるんだそうです。 なのでそれを解消する薬ですよ」


 「……… 」


 「殺すつもりなら、 昨日やってます。 それとも口移しがご希望でしょうか? 」


 顔を近づけて囁けば、 ユーリが私を押しのけながら口元を押さえて飛び起きた。 

今まで、 膝枕してたので流石に足が少し痺れている。 


 「っ! 」


 現状を確認したらしい。 心なしかユーリの顔が赤くなってる。 それを見て、 流石に私も少し恥ずかしくなった。 ごまかす様にしながら、 衣服の皺を引っ張って直してから立ちあがる。


 「はい。 どうぞ」


 強張った身体を伸ばしてから、 ユーリに丸薬を差し出したら渋々とはいえ薬を飲む事にしたようだ。


 「団長。 団長があんな調子で巡回に行ってもし死んだら陛下が悲しみますよ? ……… 私だって嫌です。 団長に死んでもらいたい訳じゃないんですから」


 「……… 」


 薬を飲んで、 無言のユーリに言葉を続ける。


 「だから、 私から逃げないでくださいよ。 逃げなければ、 私だってあんなムキになって追いかけないし」


 「……… ムキになってたのか? 」


 あれ? って顔をするユーリに私は思わず頬を膨らませて不満をぶつけた。

 

 「毎回、 毎回人の顔見て逃げるんですもの……… このヤロウ位の事は思います。 私、 逃げられると追いかけたくなるんで」


 「……… 逆効果かよ……… 」


 唸るようにそう言ってしゃがみ込むユーリを私は上から覗き込む。


 「逆効果? 」


 「……… 逃げ続けてたら諦めると思った」


 他の連中のように--- と。 ボソリと呟かれた言葉を私は聞き逃しはしなかった。

あぁ、 それは残念ですね? 私を他の人達とは一緒にしない方がいいですよ。


 「残念ですけど、 私が諦める事は天地が引っくり返ってもありえません。 だから、 そこは諦めて下さい。 で、 提案なんですけど、 私も無理矢理追いかけるのは辞めます。 だから団長は逃げないで下さい――― 煩くしないので昼寝しちゃってもいいですから、 時々傍に居させて下さい」


 しつこくし過ぎた自覚はあるので反省しました。 ユーリの体調を悪くさせるのは本意じゃない。

だから、 私からの最大限の譲歩。 まずは、 『私』 と言う存在に慣れて貰おうと思います。

 

 「……… 分かった」


 取り敢えずは了解を貰えたので一安心、 かな。


 「私はこれから帰りますけど、 団長は? 」


 明けた空を見上げたままで、 ユーリは答えた。 


 「俺は、 もう少しここにいる」


 「そうですか、 では」


 ユーリと別れて、 北の塔を降りる。 結局巡回は来なかったようだ。 

宿舎には朝帰り。 幸いまだ朝が早いので、 誰にも見つからずに戻る事ができた。

クロ達も部屋で寝ているだろう。 そっと部屋に入る………。


 『おかえりぃ。 どうだった? 』


 寝てる。 そう思ってたんだけど………。 全員に飛びかかられて、 もう少しで引っくり返りそうになりました。

 んん? なんで皆起きてるし? 


 「え……… とただいま」


 戸惑いを隠せずそう言えば、 クロが目をシパシパさせて口を開いた。


 『朝までかかると思わなかったぞ。 お陰で眠い』


 『私としては進展があったと思いたいなぁ。 ふぁ』


 ルカは大あくびを隠そうともしない。


 「んん? 皆寝てないの? 」


 あまりにも眠そうな様子に、 私は当然の疑問を口にした。


 『えぇ。 帰って来るまでは落ち着かないしね』


 「いや、 途中で呼んだんだけど。 起きてたなら来てよ」


 シェスカのその言葉に、 私は首を傾げた。 呼んだのに来て貰えなかったから私とユーリは北の塔の上で寝るしか無かったんだから。 そうしたら、 私と同じように首を傾げたクロが………。


 『? 俺が散歩している時にセト様が来て、 リゼから伝言だって言ってたぞ。 リゼが間違えて呼んじゃうかもしれないけど絶対来るなって言ってたと』

 

 皆にもそう言っておけって言われたらしいよ? オイオイ。 なんじゃそら。 君達もなんでそれを信じたかなぁ。


 「セト………様? 」


 あー。 全ての犯人はこの人か………。 兵士の巡回が無かったのも。 多分そうだろうなぁ………。

私は思わず頭を抱えて座り込んだ。


 で? セト様、 貴方何がしたかったんです?? 

 


  

 セト様の不審な行動も気になりますが。

こんな所で、 初ちゅーするとは思いませんでした。 なんでこうなった………。 

不注意で世界が消失したので異世界で生きる事になりました。もこの後、 更新予定です。


次の次位にはリゼとユーリが騎士団の会議に参加できれば良いと思っています。 思ってますよ?


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