銀の魚
刹那に輝く光
銀の鱗
海はいつか
大きな一匹の魚だった
この地球を抱く
魚だったのだ
波が跳ねれば
その躍動に
胎内の記憶が
呼び起こされる
ぬるく
ほの暗く
ひしめき合う細胞の音
私たちは
隙間という隙間を埋め
育まれた卵
放たれれば
削がれ
流され
しがみつき
生きてゆかねばならない
ひとつの命
銀色を夢をみた
はかない命
潮の匂いがした
遠い昔に吹いた風から
波打つ光の形状を
きっと私たちは
知っている
今はただ一本の
美しい水平線も
あなたを
大きく抱きしめるために
丸めた背中
つづきなのだ
望む望まざるにかかわらず
果ては
いつも命の
つづきなのだ
孤独な魚が夢みた
満ち満ちた光
いつか朽ち果てれば
この声よ
波の音に還れ
脈打つ
美しい銀の鱗
いつも
いつの日も
つづいていく
その響きを追うように