第1章 ルーク金貸し店 第2話 ルーカスという男
なんだかものすごいイケメンさんに声をかけられた。髪は金で目が赤い。眼鏡をかけているのに眼光は鋭く目を合わせていられないよ。身長も僕より10センチは高いな。モテるんだろうねえこんなかっこよかったら。
「これは俺の10エール鉄だ、と言った。手が滑って落としちまったんだ。」
「いえ、別に落ちてたしもったいないなあと思って拾おうとしただけです。持ち主がいるのならその人が持っているべきだ。」
僕は拾った10エールをイケメンさんに渡した。
「…10エールの端金が勿体無いと思うのか?現に誰も見向きもしないし拾おうともしなかったぞ?お前以外はな。」
「例え1エールであっても僕は勿体無いと思いますよ?お金はそれほど大事なものですからね。」
「珍しいやつだなお前は。」
金髪の男は笑う。女の子だったらイチコロの笑顔だ。クソくらえだ。
「…なんか失礼なこと考えただろう。」
「いえ、なにも」
イケメンさんは感も鋭いらしい。
「魔王が倒されて魔族と人間が協定を結んでから10年。すっかり平和になっちまってな。金の重みも変わった。あの頃に比べて多少は稼ぎやすくなったからな。お前みたいなやつは珍しいのさ。」
「魔王?」
「おいおい。魔王を知らないなんてお前は一体どこに住んでたんだよ…。魔王を倒すために国も必死でな。税も今と比べて高かった。だから皆金を集めるのに必死だった。金が無くてのたれ死ぬのは誰でもいやだからな」
「なにぶん田舎から来たものですからね。知らないことが多いんですよ。」
「そんなやつ初めて聞いたぞ…」
なるほど魔王ってのはそれくらい有名な話だったのか。しくじったかな…。
僕が1人心の中でパニックになっていても男の人は話を続ける。
「そんな田舎からきたのなら仕事はどうするつもりなんだ?」
「それが今探しててですね。当ても無くさまよっていたとこ…」
「異世界人か?」
話を遮ってイケメンさんがそんなことを言う。
「へ?」
何を言われたか一瞬理解ができなかった。
「お前異世界人だな」
………バレとる!
俺はポーカーフェイスに努める。俺はポーカーじゃ負け知らずだったんだぜ!
「………バレとる!って顔してるな。お前は表情に出やすいんだな」
そういえばポーカーはポーカーでもネットだから表情関係なかったよ!ゴメンね!
「僕が異世界人だったとしたらどうするんですか!?」
「異世界人は金になる。世界にはいくつかの異世界人の記録があるが皆ロクな目にあっていないって記録ばっかりだぞ。なぜなら珍しいから高く売れる。こっちの世界にない知識を持つだろうからその知識を求められて監禁された挙句に…なんてこともあるらしいしな。」
何それ。怖い。
この世界に俺以外の異世界人もいるということを知り多少は安堵するがロクな目にあっていないっぽい。
異世界人には優しくないらしいね。ここの人々は。
「金は人を狂わせる。異世界人だろうが同じ人間なのにな。金になるからといって平気で人間扱いしないやつばっかだよ。この世界の人間はな。」
「大体僕が異世界人だってなんでわかるんですか?」
「そのカッコ見りゃ一目瞭然だろうが。そんな服着てるやつはこの世界にはいないよ。」
でしょうね!
でも一文無しの俺が新しい服を買えるはずないでしょ。
「どうすれば見逃してくれます?」
苦笑いしながら答える。
「俺は金が大好きでね。金のなる木を見過ごすわけにはいかねえよ。すぐそこに俺の店があるとりあえずそこに来てもらおうか」
それを聞いた瞬間俺は脱兎の如く逃げ出す。
が、腕を掴まれる。
イケメンからはにげられない!
「逃げずについて来い。お前にとっても悪い話にゃしねえさ。」
信じられるか!そんなもん!
逃げようとしてもすごい力で掴まれているので動けない!
「ハッハッハ。どうせ行くとこもないんだろうが。」
俺の異世界生活は前途多難のようだ。
なかなか闇金業務までたどり着けない。