第1章 ルーク金貸し店 1話 端金の運命
とりあえず絶望してても仕方ない。
なんとかして情報を集めないとね。
とりあえず僕は近くにいる男性に声をかけてみることにする。女性?初対面の女の人に話しかけられるとでも?
「すいませんちょっといいですか?」
僕は人の良さそうな男性に声をかけてみた。
「ん?なんだ?…おお、なんかすごい格好だな。見たことない服だ。」
よかった言葉は通じるな。なにか不思議な力が働いているのか知らんが言葉が通じるのはとても助かる。
ジャージが珍しいのか〜。確かに周りは現代の人達がおよそ着るような服は着てなかった。
「俺に何か用があるんだろ?どうしたんだ?」
良かったやっぱりいい人みたいだ。
「いえ、この街に来たのが初めてでしたので。今まで田舎にいたものですからわからないことだらけで。仕事を探していて情報を得れればと思いまして。」
この言い訳はネット小説の異世界転移もので見たことがある言い訳だ。まさかこんなことで数少ない趣味が役立つとは思わなかった。実際に体験するのはゴメンこうむりたかったがね!
そんなことを考えていると男性が言う
「ならそこの角を曲がって大通りに出るといい。冒険者ギルドもあるしそこで手取り早く稼ぐのもいい。身分証も発行できるしな。」
「なるほど…。でもなにぶん田舎出身なもんでここで流通するようなお金を持っていないんですよ」
「おいおい…よくそんなのでこんな大きな街に出てきたなあ。まあ大通り歩いてたら何か仕事が見つかるだろ。身分証はタダで作ってもらえるはずだからとりあえず身分証を作ったらどうだ?」
「ありがとうございます。とりあえずその通りにしてみます。あの、親切にしてくださってありがとうございました。」
「お礼なら今度俺の店で何か買っていってくれそこの大通りで武器屋やってるからよ」
おお!異世界っぽい!
「わかりました。きっと顔を出します。」
「身を守るせよ、冒険者で稼ぐにせよ武器は絶対いるからな。いつでも来てくれ。」
お礼を言って別れる。
異世界人とのファーストコンタクトがうまくいって本当に良かったな。何より言葉が通じることがわかったので多少安心できた。
とりあえず言われたとおり冒険者ギルドらしきものに行ってみた。テンプレ通り強面の冒険者に絡まれるということもなく、普通に身分証を発行してもらうことができた。なんか市役所みたいだなあ。
「田舎からきて貨幣価値などの一般常識もほとんどわかりません」
と受付の人にダメ元で行ってみると呆れられながらも教えてもらった。ゴミを見るような目とはこのことか…完全に引いてるな。
「我々にはご褒美です」という強者もネットにはいたがあいにくとそんな強いハートを持っていない。
この世界のお金の単位はエールというらしい。貨幣は
石でできた1エール
鉄貨10エール
銅貨100エール
銀貨1000エール
小さい銀板でできた1万エール
大きい銀板の5万エール
小さい金板の10万エール
大きい金板の50万エール
白金貨の100万エール
一般に流通するのは10万エール金板までがほとんどであるらしい。
貨幣価値はそのうち見ていくとするかな。
身分証が発行された。名前の横になにか数字があったのでこれは何ですかと聞いてみると受付の人の目がさらに冷たくなった。もうやだ帰りたい…
「その数字はあなたのレベルになります。ステータスなどは専用の器具を使って見ることになります。冒険者に限らずレベルは生きていく上で欠かせない数値となりますのでしっかりとあげることをお勧めします。レベルは様々な経験を積むことによって上がって行きます。」
「経験ってモンスターをたおしたり…とかですよね?」
「もちろんそれもありますが、ふつうに生活していて経験することも経験値として上がって行きます。料理などでも上がりますよ。
でもやはりモンスターを倒したほうが上がりはいいですね。」
「なるほど。まあなんとなくは理解しました。」
「ではとくに何もないようでしたらこれで終了となります。」
「あ、後なにか職業を探してるんですがなにか斡旋しているようなところはありませんか?」
「あなたのレベルをみると戦闘能力はあまり高そうじゃありませんから冒険者など危険な仕事はお勧めできませんよ?一応保険もありますが死んだら元も子もありませんしね。」
わるかったな!確かに僕のレベルは5レベルとどこからどう見ても低いとわかるものだった。「戦闘力5か…ゴミめ…」とどこかの野菜星人さんにも言われそうだな。
この世界の平均レベルは10らしい
戦闘職に就く人は最低でも30は無いとすぐに棺桶行き出そうだ。僕はこの世界からするととんだ貧弱野郎らしい。
聞くところによると職業は自分の足で探すしかないようだ。ハロー○ークはないようだ。なのでとにかく街を歩いて探すことにした。ふらふらと当てもなくさまよっていると道に何か落ちている。よく見ると10エール鉄が道端に落ちてきた。
例え一円であっても無碍に扱わないということがこの世界に来る前はモットーとしている僕は当然のように10エール鉄を拾う。
「全くいくらはした金であっても拾いもしないとはどういうことなんだよ。」
10エール鉄を拾おうとするとふと視界の端から手が伸びてきて僕の手に重なった。
マンガみたいにここで美少女との運命的な出会いだったら僕のこの後の生活は全然違ったことになっただろう。
だがこの出会いはそんな甘美でスイートなものではなかった。そんなものとは180度違う世界へ足を踏み出すこととなる運命的な出会いだった。
「これは俺の10エール鉄だ」
僕が出会った中でも1番金に厳しい人。僕が店長と呼ぶこととなる金融屋ルーカスとの初めての接触だった。
受付の人は男性です。