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あの時どうしていればキミを悲しませずにすみましたか?

作者: 土嶺菊

 

 あの時、どうしていれば君を悲しませずにすみましたか?


 君は僕の目の前で泣いている。

『泣かないで』

 そう伝えたいのに言葉は届かない。

「大丈夫だよ」と抱きしめたいのに手で触れることが出来ない。


 無機質な箱に入ったはニコリとも笑わないし、ピクリと動くこともない。


 ただ写真の中の僕はにこやかに笑っていた。

 僕はただキミと・・・僕を・・ただ見つめること・・・・・・・・しか出来なかった。


 ーーーーーーーーーーー


 僕はキミにプレゼントを買おうとしていた。もうすぐ僕たちの交際二年目だったからね。キミに喜んでもらおうとその一心でキミのお姉さんに聞いた。一緒に選んでもらうことにしたんだ。そこに下心も何も一切なかった。断言できる。あったとすれば本当にキミに喜んでもらえるものを……、ただそれだけだった。

 でも、それがよくなかったんだ。

 キミはそれを見てしまった。本当にたまたま、キミへのプレゼントを選んでいる僕たちを。キミには‶デート”に見えたんだろうね。休みの日に会って、一緒にショッピングしている僕たちが。キミは結構嫉妬深かった。僕はそこがまた可愛かったんだけど。今となっては……だけどね。


 そして、記念日。僕はいつもの公園にキミを呼び出した。僕はとてもドキドキしていた。この日までお互い忙しくてまともに話をすることなんて出来なかったからね。久しぶりに会えるキミ。そして僕の内ポケットにはキミへのプレゼントが入っていた。キミが驚くだろうな、そしてとても喜ぶだろう。そう思っていた。僕はキミがあれを見ていることを知らなかったから。

 その公園は砂場しか無い様な所で、すぐそこには大きな道路があってよく危ないと言われていたような場所だった。

 キミは息を切らしてやってきたね。僕は嬉しかった、そんなに急いできてくれたって事が。だけどキミは来て息を落ち着かせる暇もなくたくさんの怒りをぶつけてきた。僕がキミのお姉さんと浮気をしているんじゃないかって。意味がわからなかった。僕はそんなことをしていなかったから。だから僕は

「何かの勘違いだ」

 って言ったんだ。キミは嘘をつかれた、そう思ったんだろうね。余計にヒートアップしていった。僕は意味がわからなくて、プレゼントとかいろいろ考えてたのに怒りを一方的にぶつけられて余計にイライラしてつい僕も怒鳴ってしまった。

 やってしまった。そうは思ったけど一度口から出してしまえばそれは消えることはない。売り言葉に買い言葉とはまさにこのことだった。そこから先は二人の怒鳴り声が周りに響かせた。


 僕はこの時どうすれば良かったのだろう?

 いつもみたいに抱きしめれば良かったのかな?

 いつもみたいにゆっくりと誤解を解けば良かったのかな?

 今となっては後悔しか出てこないんだ。


 しばらく怒鳴りあいが続いた後、キミは踵を返して走り出した。

「待てよ!」

 僕はキミを追いかけた。


 目の前の信号が嫌に赤く光って見えた。


 ‶ププー!”


 車のクラクションがとても軽く、しかしやけに大きく聞こえた。




 僕が最後に見たのはトラック。


 そして


 泣きそうになっているキミの顔だった。






 渡せなかったな、あんなにも必死に選んだのに。






 母の顔や父の顔、僕の小さなころ。

 俗に言う走馬灯というものが流れる。

 そのなかでも、ほとんどがキミの顔だった。

 笑っているキミや、怒っているキミ。たくさんのキミの顔が写真のように流れる。

 でも……最後に見たキミは泣いていて。


 笑って


 喜んで


 そんな小さな願いさえも僕の命とともに儚く散った。



 ーーーーーーーーーーー



 キミはずっと泣いている。

 僕の選んだプレゼントを見て、プレゼントを胸に抱いて。

 嬉しそうに泣いてくれたのなら選んだかいがあったのだけど、キミは「ごめんなさい」「私のせいで」なんてことを言っている。


 キミのせいじゃないのに


 謝らないで


 きっと僕がいろんなところで間違ってしまっただけなんだから。


 でも、その言葉はキミには届かない。







 だから








 だからキミが幸せになるまで










 せめてキミが幸せそうに笑うまで











 僕がキミの側でキミを見守ることくらいは許してくれますか?











どうだったでしょうか?こんなふうになるとは、私も思っていませんでした……


おかしなところなどなにかありましたら、ご指摘、感想の方よろしくお願いします。

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