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癒しの国のヨナ  作者: 沙門きよはる
ヨナ・キングダム
16/23

泡沫(うたかた)の如く


 目覚めると、白の世界だった。


 (天使が居る?)


 「天国……?」

 「ここは天国でも地獄でもないわ」

 天使に見紛う白衣のアイカ嬢が微笑んでいる。


 (看護婦?……アイカちゃんが?)


 リュウは白い天井扇が回る診療所のベッドに横たわっており、腕には点滴のチューブが繋がっていた。

 「先生と奥様を呼んできます」

 ナース姿のアイカが席を外した。



 「ビックリしたわよ!飲んでたら、目を白黒させて突然意識を失うんだもの。

アイカちゃんが非番で居て良かったわ」

 リュウを見るや、サチコがほっとしたように言った。


 レッドコーラルのネックレスにショートパンツとTシャツ、サチコは四十歳ぐらいに見える。


 「急性アル中です。宿に帰って安静にしていて下さい。そろそろ、お互い無理が出来ない年齢ですな」

 髭面の医師が笑った。


 「……一体、何が何だか、如何なってる?」

 リュウは呆然とサチコを見ている。


 「やだ!憶えてないの?ティンダハナの引越しを控えて、……豊年祭ウガンフトティの前祝いとか調子に乗って、富久山荘の皆さんと飲み続けだったの。そうしたら、急に倒れちゃって、診療所に担ぎ込まれたのよ」


 リュウが一切憶えていないのを告げると、医者は首を傾げた。

 「半日も休めば、元に戻るでしょう。ま、富久山荘にはアイカも居ることだし、大事には至らないっしょ!」



  ……  ……



 リュウを送迎するワンボックスカーが富久山荘に着くと、宿客と富久山家が総出で出迎えた。

 「部屋に布団を敷いてますんで、ゆったり休んでて下さい。とにかく、元気そうで良かったさ。今、冷たいシークワサーとゴーヤのジュースを、お持ちしましょうね」

 富久山が労わるように言った。


 部屋に落ち着くと、サチコは尋ねた。

 「何か思い出せて?」


 「否、思い出せないんじゃなくて、憶えている記憶が大分違ってるんで、如何説明したら良いのか……」


 「記憶が違うって?」


 リュウが掻い摘んで、西表からヨナムン・マティの大団円まで話すと、サチコは狐に抓まれたような面持ちで息を吐いた。


 「西表のキングダムを体験していなければ、イカレた妄想と思うのでしょうが……。現実も十分メルヘンティックで、リュウさんの話に交錯しているわ」 

 と、蒼く変色しつつある両手を翳す。


 サチコはリュウの記憶を確かめながら、認識の異なる西表を出港してから此処に至るまでの経過を話した。



  ……  ……



 西表島から石垣島に渡る途中、紫の濃霧と突然の雷雨と暴風に襲われる。


 「でも、雷が船には落ちなかったわ」

 「一発も?」

 「そう。少なくても、リュウさんが言うように、何発もの落雷はなかったのよ」



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