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ミント  作者: 文村 奏
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Morning

 鳩の鳴き声が聞こえて、わたしは目を覚ました。遮光カーテンの隙間から除く陽光が目にまぶしい。

 5月の午前は涼しくて、肌に触れるシーツの乾いた感触が心地よかった。部屋の中は静かで、空気清浄器が気流を生み出す音がかすかに聞こえるだけだ。

しばらくそうしてうとうとと目を開けたり閉じたりしていると、カチッというちいさな音のあとで、甘い匂いが鼻をくすぐった。

 そこでわたしは、隣にいたはずの彼女の姿がないことに気が付いた。半身をおこしてみると、ベッドの横の床に腰を下ろして、彼女が煙草を吸っていた。

 甘い匂いのもとはこれだった。アークロイヤルのアップルミント。職場の喫煙所から漂う匂いにはいつも顔をしかめてしまうが、彼女の好む銘柄のこの香りは、わたしは好きだった。

「……ああ、起きた?」

 衣擦れの音で気が付いたのか、彼女はわたしの方を向いた。わたしはまた枕に頭を乗せて、すこしの肌寒さに上掛けをひきよせた。

「おはよ、瑛」

「おはよう、鍵子」

 朝のあいさつは声が気だるくなる。サイドボードの時計をみると、短針はもう十時を回っていた。今日は日曜日だ。

「おなかすいたな……」

 わたしがつぶやくと、彼女はうん、と答えた。

「あ、パンがもうないんだっけ」

 彼女は言いながら頭をかいた。何かを思い出すときの彼女のくせだ。

「そうだった? ご飯も炊いてないよね」

「そうだね。今からでも炊く?」

「うーん……」

 からだを起こして、床に落っことしていたカーディガンを羽織る。ひとつふたつボタンを留めるうちに、寝起きのはっきりしない頭で考えをめぐらせた。

「じゃあ、食べにいこうよ。ブランチしよう」

 床に座っていた彼女は立ち上がって、ベッドのふちに腰かけた。

「いいね。シャワーしてくる?」

「うん。行きたいお店ある?」

「シャワーしてる間に調べておくよ」

 彼女にわしわしとやや乱暴に頭をなでられてから、わたしは立ち上がった。彼女はipadを立ち上げた。

 

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