表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

それは実に興味深い

視界に入ったその人に、少し興味をもって視線をそそぐ。


僕は創作という観念が大好きだ。


いやむしろ愛してる。


それは漫画であれ小説であれ絵画であれ音楽であれ、創るということにいつでも興味津々なのだ。


ストリートミュージシャン。


おそらくそうなのであろうその人にも、そういうわけで興味が湧いた。


しかも人前で自分の姿形を晒してまで創作をしようとしている。


僕はその人に僕と似通った創作への執着のようなものも感じた。


ここからストリートミュージシャンまでの距離はちょっと遠い。


相手の表情がはっきりしない程度だ。


まぁそれはそのストリートミュージシャンがフードつきジャンパーのフードを目深にかぶっているせいでもあるのだけど。


ストリートミュージシャンはジャンパーにジーパンというラフな出で立ちで、飴色のギターを抱えて立っている。


まだ演奏はスタートしていないようだ。


ストリートミュージシャンは爪先で緩くリズムをとっている。


よくよく見ると目も閉じているようで、あぁ、自分の世界を作り出そうとしているのだと理解した。


僕はストリートミュージシャンに向けて歩きだす。


さりげなく正面へと立ち、特等席を確保する。


人々はストリートミュージシャンを迂回しながらさっさと通りすぎていく。


あ、このストリートミュージシャン、女性だ。


近くに来て気がついた。


なめらかなボディラインと長い睫毛。


フードで隠れていても美人だと容易に分かる。


思ったより、若い。


今度は創作ではない興味をもった。


綺麗な人だ。


しかも創作への情熱をもっている。


心がときめくのを感じた。


理想の人に、出会ってしまった。


ストリートミュージシャンは目を閉じているため、正面に立つ僕には気がつかない。


ゆっくりと、ストリートミュージシャンの腕が動いた。


魔法をかけるような美しい挙動に、僕の目は釘付けになる。


ストリートミュージシャンは目を開かない。


高く挙げられた腕はいつ下ろされるのか。


ただ胸が昂っているのか薄く上下している。


ストリートミュージシャンの時が止まる。


まだ、音は鳴らない。


だんだんと周囲の音は消えていく。


ストリートミュージシャンにだけ、全て神経が尖る。


苦しい時間。


まだ、まだ腕は下ろされない。


音は奏でられない。


創作がなされない。


ふいに、ストリートミュージシャンは、目を開く。


ゆっくり。


焦るなと諭すように静かに開かれる。



射抜かれた。



「いきますっ、」


その一声を合図に、


演奏が始まった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ