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僕は小説家です


「あー……自己紹介は以上です。」


僕はコミュ障全開人見知り丸出しの挨拶をしてそそくさと席につく。ぽかんと呆気にとられてる人たちから視線を逸らす。と、視界には隣に座る男の口角を吊り上げた顔。


「まーた猫背ですよ先生。」


小声で囁いてくる声が、若干楽しそうでムカつく。うるさいな、と気怠く答えてやるとクツクツと喉の奥を鳴らした。なんで僕はこんな悪役みたいな笑い方するやつと酒を飲まなきゃならんのだ。


「はーいはいはいじゃあ全員自己紹介は終わったね!」


気まずい雰囲気をバッサリ切るように明るい声を出すまた別の男。強引な気もするけれど、沈みかけた空気をとりなそうと幹事として必死なんだろう。額に浮かんだ冷や汗を見ると、そんな空気を作った張本人として申し訳なってくる。


対面に座る女の子たちはそんな男の明るい声にハッとして、一斉に作り笑いをする。表面的に和やかな雰囲気ができて、「まずは料理とか食べながら話そう。じゃんじゃん食べよう、じゃんじゃん飲もう。」と幹事がテーブルに並んだ料理を勧めた。


それを合図にそうしようそうしようとおのおの自分の割り箸をわり、思い思いに料理を取り出した。「この店、料理うまいから」自慢気な男の声に一人の女の子が「すごいですね」と答える。


開始早々取り残されてる気がするけど気のせいだろうか。


「ってか先生、いきなり小説家って言っていいんですか。」


僕と同じく猫背の取り残されてる男が手元のおしぼりで手を拭いながら聞いてくる。


「しょうがないだろ、合コンなんて初めてなんだから。」


言い訳にもならないような理屈を言い、けれど元はと言えば恋愛経験値0宴会スキル0の僕を合コンの臨時メンバーなんかに呼んだお前が悪い、と元凶を睨んだ。


「まぁまぁ先生、さすがに大学生なのに合コン経験皆無ってのも可哀想かなって折角俺が気遣ってあげたんですから、そんな拗ねてないで楽しんでください。」


元凶はテーブルの上に並んだ料理を長い腕を活かして端から取り皿に取っていく。箸を器用に使い、ひょいひょいと盛り付けられた料理は取り皿の上で軽い山となる。揚げ物ばっかじゃないか……。見てるだけで胸焼けするようなラインナップだが、男は猫背のままウキウキとして手を合わせる。


「いただきます。」


僕と同じく猫背の取り残されてる男、しかし僕と違い顔はいいと評判の男、の皿に盛られた料理の量を見て女の子が「わぁすごい!」と感嘆の声を上げるのが聞こえた。「確かにこの店、料理うまいね。」男がもう一人に言って、「本当ですねー」と女の子が答えた。





僕は空気です。










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