ラストエピソード(3)
最終話、お待たせしました。
私は魔王の力でクリスタルに包まれた王都へと飛翔の術を使い大空を飛び行く。私、シオンのそばでは契約妖精のシークレットガールが楽しそうに飛びまわっている。
やがて前方に王都が見え出してきた。
しかし、そこはクリスタルに包まれ七色の光を放っている。見慣れたその景色は全く違う幻想的な世界へと姿を変えていた。
ひたすらに美しく、命を感じさせない世界。そこからクリスタルのドラゴンの大群がこちらに向かってきた。
「みんなお願い、力を貸して。」
私は魔玉を散弾のように周りに打ち出した。それを、いつの間にか集まっていた……私の周りにはいつも精霊達がいる……彼らが食べる。5級の精霊でさえ1級の精霊に進化する。
私の周りには相手の軍勢に負けないくらいの数の精霊軍団が出来上がる。
大群同士、真正面からぶつかり合う。王都の上空で大勢の精霊が、ドラゴンが、ぶつかり合うことで輝きが生み出される。
まるで空一面が花火で埋め尽くされてような美しさ。
そこから、素早く地上に降り立ち徒歩で向かう私と相棒の前に、見知った魔族達が姿を表した。4人いてそのうち2人は見覚えがある、ラピス様をクリスタルに封じられたときにいた者だ。
恐らくは全員、アイロネの高位の魔法使いだった人達。お爺様と共に死……いや、呪いにより魔族にされ死ぬことも許されず操られ続ける憐れな同胞の骸。
「この前は、君が私達の進行を阻もうとしたが今度は逆だね、アイロネの魔法使いよ。だが、君はここまでだ。」
(クルヨ!)
4人の魔族は周りのクリスタルと同化し四方から私を取り囲み、包み込む。
シークレットガールが張った障壁により、シオン(・・・)を中心に直径2メトルほどの空間を残して辺りはクリスタルに埋め尽くされてしまった。
(君も我らの仲間にしてあげよう!)
障壁を破り4人の上半身がにゅうっとシオン(・・・)に掴みかかってきた!
そう、私に。
「な!一体これは?」
「あの女の子が巨大化した?違う!我らが小さくなったのか!」
「我らこそが取り込まれたか・・・」
「シーが創った”私のリアルボディ”、私にそっくりだったでしょう?」
ふう、上手く(私の手のひらに乗る丸い球体の中に)4人を封じ込めることに成功しました。
「まさかここまでの実力を持っていたとは、我らの負けだ少女よ。」
その言葉と共に、彼らの心の声が聞こえてきた……苦しいと、助けてくれと。私の相棒シークレットガールは、その気になればあらゆる秘密を暴くことができるゆえに。
私の頬を伝い、一滴の滴が球体に落ちた。その途端、球体が暖かい光を放ち太陽のように輝き出す。
(アラユル、ケガレ、キレイ、キレイ、”シオンズ・ティアー”!)
(心が…楽に…あり…が……と……)
「さようなら、先輩たち。」
私は、天へと逝った先達に一声をかけると気持ちを引き締めて目的の場所に向かって歩き出した。
(アハハ、アハハ、オンナノコ♪)
「言わない!スルーしたんだから!」
空気を読むスキルを、私の相棒にはぜひ覚えて欲しい。
・・・・・・
「シオンちゃん、来てくれたのね。」
「……ラピス様、ご無事で。」
かつて、ラピス様が魔王の力でクリスタルに封印されていたところに彼女はいた。そして、その横には禍々しい妖気を放つ絶対の存在が、恐怖が具現化した存在が……そう、魔王がいた。
「はじめまして、恋敵殿。オレはヒューリオ、人間には魔王と呼ばれている。」
「はじめまして、ヒューリオ。私はシオン。会って早々悪いけど、ラピス様を返してくれないか?」
「ぷっ、くっくっく。オレに向かっていきなりそれか、気に入った!だが、ラピは返さないぜ。ラピは俺のものだ。」
むかっ!
ラピス様をラピなんて呼ぶとは!!
「ラピス様は誰のものでもない!」
「んん?何怒ってんだ?それよりいい提案があるんだ!」
「?」
「ラピはどうやらがお前のことが気に入っているらしい。だからオレがお前の体をもらう。そうすればラピは俺を好きになる!どうだ、素晴らしいだろう!光栄だろう!」
……駄目だこの人、会話できない人です。
「……断わります。」
「そうか!そうか!そういつは〜!こっちからお断りだ!」
物凄い圧力が私の心と身体を押しつぶそうとしてくる!これが、魔王の実力!
「下手に出てればつけあがりやがって!
素直にその体を差し出せば魂を粉々にしてやるくらいで許してやったものを!
百万回死ぬよりひどい苦痛をあじあわせてやる!
俺の女に手を出してただですむとおもうな!!」
「うおおおお!シー!」
やはりとんでもない魔力の持ち主、まさに魔王の名を冠するに相応しい規格外の実力!でも、負ける訳にはいかないんだ。
シークレットガールに助力を頼み、私は魔法をつかう。
母より習い、アイロネの魔法使い達に習い、日々精進した魔法の力を。
武門の家に生まれながらも剣を捨ててひたすらに打ち込んだ魔法の力を。
今こそ、全てを出し切って、ラピス様をお救い申し上げるんだ!
今度こそ!
「オレの力に抵抗するとはたいしたものだ。だが、オレを甘くみるな。かつては下級とはいえ神だったオレに、高位精霊の助力程度で!風霊王の力を直接取り出せる程度で!勝てると思うな!ラピはオレのものだ!!」
押し返しつつあった力の均衡が敗れて……もう……!
(諦めないでシオン、まだ可能性はあるわ。)
(どうすればいい?私のほうはもう手がないよ!シーには何かあるの?)
(さすがは魔王、あらゆる秘密を貯めまくって食べまくって神に近い実力を持てたと思っていたのに、まだまだだったわ。もう私にもできることはなにもないわ。)
(じゃあ!)
(シオン、ほんの少し私が時間を稼ぐわ。その間に”この人”の秘密を見なさい。)
「何の真似だ?」
魔王が首をかしげながら問う。シークレットガールが私の前に立ち、魔法からの攻撃を遮断し始めたからだ。確かに私は楽になるが絶対的な悪手、何故なら契約妖精が死ねば魔法使いの実力は半減どころではない。
シーはその身を包む黒いコスチュームをガリガリ削られている。殺られるのは時間の問題だ。私はシークレットガールが稼いでくれた貴重な時間で、手渡された秘密が詰め込まれている黒い球体から……ある人の秘密を見た。
……そうか、そうだったんだ。
「シークレットガール、君は、さ。驚く顔が見たかったんだね。私の驚く顔を。」
「そう、シオンのその顔を♪
それと、魔王の、ね♪」
シークレットガールと入れ替わり魔王の力に再び晒される私の身体。
しかし、今度は魔王の力が私には届かない。徐々に、徐々に、押し返す。
「ほう?なかなかやるじゃないか、だがこの程度がオレの全力だと思うなよ!!」
魔王がさらに強力な力を私に向けてきた。どんだけ化け物だよと、考える自分を、どんだけだよと、埒もないことを考えながら……その力をはねのけた。
「バカな!」
初めて魔王から驚きの声が上がった。
(アノカオ、ヲ、ミタカッタノ♪
)
シークレットガールが喜んでいる。私の相棒は何処までも楽しむことを追求する。本当に、ここまで隠すことはないのに。
「何が!何が!起こった!その力!どうやって!」
「教えてあげないよ、さあ!こんどはこっちからいくよ。」
私は、今までと同じように魔法を使う。たったひとつだけ変えて。
「浄化!」
「おおおおおおおおおお!ば、バカなー!たかが、浄化の呪文ごときで〜!!!」
魔王は光に包まれ、やがて光が消えたそこには一人の女性がいた。
ラピスラスリ様!
慌ててラピス様がいたところをみると、いるけど、え?幻術?
「あら、気づいてなかったの?」
「え、え、えーと。」
(ソノカオ、ミタカッタカラ、オシエナカッタ♪)
(シークレットガーーーーール!)
「魔王には実体がないの。言ってみれば悪意の集合体ってところかしら。」
「それじゃあ?」
「あれは前の魔王の残留思念ね、かなりの女好きだったみたい。」
「そういえば、思考がめちゃくちゃだったような。」
「最後、凄かったわ。内緒にしないで教えてくれるかしら?」
「愛のちからだよ。母上達のね。」
「?」
「母上は私に、魔力を活性化する方法と偽って沈静化する方法を教えてくれてたんだ、強すぎる魔力でパンクしそうな私の身を案じてね。」
恐らくはそのせいで私は、実力を100万分の1位に低めていたんだろう。
「そうなの……正に愛の奇跡ね。それにしても、シオンちゃん、大きくなったわね。」
優しい笑顔浮かべるラピス様を見て、私は、ようやくラピス様を無事取り返したことを実感した。
ようやく、ラピス様を、どれほど、まずは、何から話せば。
嬉しさで、言葉が、思考が、まとまらない。
そんな私をラピス様は優しく抱きしめてくれました。
そして……、
「でも、ヒールを履いたら私の方が高いわね。」
「ラピス様〜!」
「ふふふ、冗談よ♪私のシオンちゃん。」
膨れる私の頬に柔らかな感触……。
この瞬間、私はこの人と幸せな家庭を築き、この人との間にもうけた多くの子孫に囲まれて死するときまで、この人を愛し、愛され、その時間を大切にするだろうと、予感しました。
fin
かなり、強引ですがなんとか完結に持って来れました。
一時期、精神的に書けない時期が有りました。
最後にお付き合い下さり本当にありがとうございました。
本当に皆様、感謝、感謝、感謝です(*^^*)




