6話 しょくぎょうせんたく(後編)
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感謝・感謝・感謝です。
設定についてですが、この世界では呼吸法が魔法使いの修行であることはよく知られています。
ただ単に、シオンが気がつかなかっただけです。
早朝で、誰にも見られてませんし(笑)
私は自分が知らないうちに、魔法の修行をしていたことに少なからず衝撃を受けました。
そんな私の気持ちを気遣ってか、セバスはゆっくり、ゆっくりと話してくれました。
「呼吸法は魔法の修行のかなでも基本中の基本、”魔力の活性化”です。
…今までは、シオン様にお伝えすることを禁止されておりましたので、お教しえ致しませんでした。」
「…そうなんだ…全然気がつかなかった…。」
うーん…本当に気がつかなかったよ〜!
3歳の頃からやっているのに…
私、鈍い人間かも?
「それで”今まで”ってことは今それを伝えるのは理由があるわけ?」
「さすがはシオン様。聡明でいらっしゃられる。」
やめて下さい!
今のタイミングで私を褒めるのは!
プリーズです‼
「旦那様は、シオン様が戦士に向かない場合の”備え”を考えております。
シオン様がパルス家の戦士となることが無理な場合は魔法使いの道を進めるように、と密かに奥様に準備を命じていたのです…。」
セバスの説明によると、この国は武人の国で、武勲で名をあげないと貴族として軽く見られてしまうそうです。
最大の理由は、北からの魔族・魔獣の進行を防ぐ必要性が常にあるから。
「長男のアーサー様はパルス家をお継ぎになるため”北伐”で成果を上げて後継ぎとして認められる。
次男のダン様は、王国軍に入り武勲を上げて認められる。
旦那様は、このようにお考えのようです。
アーサー様も、ダン様も、ともに旦那様に似て身体が大きい上に武術の才能がおありです…。
上のお二人に関していえば旦那様の想定通りに…このまま行けば大丈夫でございましょう。
しかし、シオン様は赤子の頃から体が小さく、病気に弱く…旦那様は”シオンが武人になるのは難しいだろう”と、よくこぼしておいででした。
それゆえに…。」
確かに、前はよく熱を出してたような…。
そうか…父上、私のことを考えてくれていたのですね。
ずっと前から…。
魔法使いという別の道を…。
「…パルス家に”弱い戦士”はいりません。
ならば、魔法使いはどうかと…。
幸いコルネリア様の家系は魔法使いの家系にございます…。
旦那様は、そろそろシオン様が武人か、魔法使いか、どちらの道を進ませるかを…お決めになるのではないかと。」
この国の貴族の男子にとって魔法使いという職種は人気がない…。
魔法使いが不人気というわけでなく、戦士、騎士などの人気が高すぎるからでしょう。
だから勧めるのをためらっていたんだろうな。
「そう…母上が王都に行ったのはなぜ?」
「コルネリア様は先日、ご実家宛の手紙をお出しになられておりました。
今回は、シオン様が魔法使いになるために、直接実家に出向いて許しをもらうためでは…。」
なるほど…、私の両親は本気で私の将来を考えてくれているようだ。
ただ、貴族の男子は武人として育てられる、今までの私もそうだった。
いきなり魔法使になりなさいって言われたら…驚いただろうな。
それどころか、嫌がっていたかもしれない。
セバスは父上の命令に背いても、今のうちに私に伝えるべきと判断したんだ…。
何から何まですいません…。
いや、この場合は、ありがとうって言うべきですね。
父上、母上、そしてセバス…本当に感謝です。
なら、私は…
「じゃあ魔法使いを勧められたら、よろこんだほうがいいよね?」
「…心から、そう思いになられますか?
そうでなければ、ご両親にはすぐにばれますよ。」
うーん、バレるだろうな…私、大根だし。
私の気持ちは…。
実のところ、前世の世界ではなかった”魔法”が使えるならやりたいって思っている。
正直…やりたい。
なら魔法と剣を両方やる?
いいえ、私は中途半端は嫌いです…。
剣をやるなら、パルス子爵の息子として恥ずかしくない実力を持ちたい…二足の草鞋を履くのは…。
よし!名のある魔法使いになろう。
「やる!もし、お父様がそう決めたなら…僕、魔法使いになるよ!」
私は真っ直ぐに、セバスの目を見つめて宣言した…。
両親の思いに答えるためにも。
セバスの心遣いに応えるためにも。
決めたからには、やり遂げなければ!
絶対やり遂げる!
「…この家を出ることになっても…お供致しますよ、シオンお坊っちゃま。」
魔法使いになれば当然この家にいられなくなります。
どうやら、私は家族だけではなく使用人にも恵まれたようです…。
シオンには現状を理解する能力はあっても、適切な判断をする能力は育っていません。
なにしろ、5歳児ですから。