エピソード真実(1)
すいません。
これだけです。
ここはパルス子爵領にあるパルス家の屋敷です。私シオンは久しぶりに帰ってきました。ここを出たのは7歳でしたから、14歳になった私はもうここに住んでいた時間と同じくらいの月日を王都で過ごしてきたことになります。落ち着くな、と私は思いました。リビングには、父、母、アーサー兄、ダン兄、セバス、そしてアイロネであるお婆様がいます。私の家族です。私がある話をするために集まってもらいました。
そして、一人客人がいます。私の横に座っている人物は老人でしたが背筋がしゃんと伸びていて長いひげを横にぴんと生やしています。私やお婆様と同じかたちのローブを着ているこの人物は、アイロネの魔法使いの長老、ヘルメス
さんです。
「では、そろそろ始めるね。」
一人一人の顔を確認してから私はそう言って話し始めました。
「4年前の北伐が終わりを迎えるころ、王都を4人の魔族が襲いました。
私たちはたった4人に勝てなかったんです。
1人がアイロネの塔を襲い、
1人がサージュの塔を襲い、
1人が王城を襲った。
もう1人は王城を襲ったものの後方にいて。
最後にはそいつが、ラピス様を、水晶、に。」
その時のことを思い出して思わず言葉が途切れてしまいました。
何もできなかった私。
せめて一緒に水晶の中にとラピス様にすがり付いた私。そんな私にラピス様は一言こう告げ、突き放しました。
”ヘルメス長老のところに向かいなさい”
目の前で、水晶に取り込まれるラピス様を、私は、ただ、ただ、見ているしかできなかった。
「その4人の魔族の名は、ベルガー、サフィン、ヘルマン、ラーフ。」
お婆様に視線を向けて肯定してくれるように促しました。
「そう、3回前の北伐でパルス軍に派遣されていて行方不明になったアイロネの魔法使いだった者達。そのなれの果て。」
「全ては、3回前の北伐から始まってたんです。この件はパルス家に深く関わりがあります。その説明のためにヘルメス様に来て頂きました。」
「シオン君、本当によいのか?」
「ええ、全てを。4年前、私に伝えていただいたことお願いします。」
にこやかにほほ笑んでヘルメス長老を促しました。
私を見つめ、それから一瞬だけ目を閉じてからヘルメス長老は語り出しました。
「パルス家の諸君、始めに謝らせていただきたい。そして、お話しいたしましょう。我が息子ベルガーのこと、そして私が犯した罪を。」
そういうと、ヘルメス長老は右手を突き出しました。
するとそこに一本の古びた剣が現れました。柄にはパルス家の家紋が彫られています。
「まさか、その剣は、親父のか!」
父上がソファから立ち上がって叫びましたが隣にいた母上がたしなめました。父上は座りなおしてから謝罪し、先を促しました。
「うむ、そのとおり。そしてこの剣には息子のメッセージが込められておる。」
そう言ってヘルメス長老が何かを呟くと剣の上におぼろげなベルガーの姿が現れました。
(このメッセージを後につながる者たちに託す!)
強い気持ちを込めた言葉で始まったその後の説明は、ところどころ苦しげに途切れがちでした。
(俺達は北伐の起こるカルナック高原の地下に魔王が封印されていることを突き止めた。
そして、あと数回の北伐という名の血の儀式で魔王は封印から解き放たれることを。
そのため、パルス殿に、無理を言って、魔王討伐に、力を借りた。
だが、俺たちは負けた。魔王の呪いによって、魔族へと成り変わろうとしている、わが身。
この後どうなるかは、わから、ない。
唯一、呪いに打ち勝ったパルス殿は、一番先に魔族へと、成り変わった、サフィンと相打った。
パルス殿、すまん。
せめて、彼の、この剣に、希望を、託したい。
ほ、北伐は、行ってはならない!
そして、勇者を、さが、せ!
もう、一つの、希望、時間が、無念。
み、未来に、生きる、者たちに、幸、多からんこと、をぉぉぉぉぉ!)
ベルガーの姿がふっと消えた、そこまでだったのだろう。
彼は、熱く、未来を憂うよき人だったのだと私は思いたい。
次回はヘルメス長老の犯した罪の話です。




