53話 私の仕事、私の戦い(3)
本日二人目の対戦相手が舞台に上がってきました。
「王国騎士団第2師団長が長子ギル・キーストン、参る!」
そう言うと次の人はいきなり切りかかってきました。今度の人は大人顔負けの大きな体をしていて全身鎧に大きな盾を装備しています。武器の片手剣もとても大きく、刃が潰れている練習用の剣とはいえ当たればタダですみそうになりません。ギルさんは上段からの振り下ろし、そこから跳ね上げるような剣技をつなげて来ました。私がそれらを回避するとさらに盾を構えて踏み込んで来て鋭い横振りの攻撃がきました。しかしそれも空振りです。最後の横振りの前、私は既に大きく飛び下がって距離を稼いでいました。
私は15セチメトルほどの石の魔玉を1つ、相手に向けて突き出した両手のヒラの先に作ります。
「行きます!」
そう言ってから石魔玉を高速で発射すると相手は構えた盾で上手く弾きました。
「そんな攻撃はきかない!」
重戦士のギルさんは堂々と正面から詰め寄ってきます。ふむ、こういう人には正攻法あるのみです。この人だけでなく、この国の人は基本的に正々堂々真っ正面からの力勝負を好みます。先ほどの戦いでは相手が望んだ決闘を試合に引き戻すため策を使いましたが、基本ガチでやり合うことが1番心が分かり合えるのです。
だから、手加減抜きで行きます。
「次行きますよ!」
また石の魔玉を作り出しました、ただし今度は10個同時です。勢いよくギルさんに向かう石の玉に彼は急ぎ盾で防御姿勢を取りましたが流石に受け止めきれず吹き飛びました。
「ぐうっ!まっまだっ!」
流石によく鍛えてられています、急所を外して後ろに自分から飛んだようです。すぐに痛みを堪えて立ち上がるギルさん。しかし周りを石の魔玉群に囲まれていることを知り武器を捨てました。
「降参だ、ぐうの音も出ん。」
ギルさんも素直に舞台から降りて行きました。そしてあとに続く3人目、4人目も一方的に倒して退けました。
最後の5人目、この彼が最大の問題です。この決闘騒ぎの張本人と言われる人物なのですから。舞台に上がった人物は、今までの大柄の4人と対象的でとても小柄です、その上防具は一切つけていません。
「ソリル子爵が三男ジオン・ソリル、シオン・パルス殿お相手願いたい。」
「家名はパルスではありません、ブロッサムです。」
「そちらの家名には興味はありません。」
彼のソリル家はパルス家と同様に武の実力で評価されていて、北伐では左翼のパルス子爵家、右翼のソリル子爵家と言われています。ソリル子爵にも子供が3人いて今、上の2人は北伐に参加しています。彼は上位学校の5年生であり成績も上の方で、武術の個人戦では体格の差を跳ね返して準優勝するほどの使い手です。しかし、北伐には連れて行かれませんでした。体が小さいがゆえに。
同じような家柄、同じような境遇、同じような身体能力の低さ。ある意味、私が進んでいた道を歩む人物。
「参る!」
一気に詰め寄るジオン!速い!
私は彼の前に石の魔玉を生み出して距離を稼ぐ。
「ソリル・ブレイク!」
ジオンが左手を突き出して石の魔玉に触れると魔玉は分解されました。事前情報ではソリル家のオリジナルスキルで魔法などを分解することができるそうです。
「火!水!風!」
舞台の上を激しく動き回りながら属性の違う魔玉を打ち出しますが、すべて分解されてしまいました。魔法使いには相性の悪い相手です。
「ヘイスト!スラッシュ!」
加速して近づき、魔法を切ることも出来る剣技を繰り出すジオンさん。このこの連続技は魔法使いに特に辛い!ギリギリでかわしつつ至近距離から魔玉を打ち出します。しかし左手で分解されてしまいます。私としては距離を稼ぎたいところですがそれを許さない猛追撃で迂闊に動けません。
「信じられない素早い動きだな、ダンと戦ったときを思い出す!」
「ダン兄は強かったですか?」
「あれは別格だ!まるで動きが読めなかったよ。だが、おまえはそこまでではない!」
上段からの振り下ろしを左手に生み出した石の魔玉で受け止めました。私とジオンの動きが止まります。
「私に勝っても北伐には行けないかもしれませんよ。」
「俺は!俺の強さが認められるまで!諦めない!」
剣で上から抑えられ石の魔玉にヒビが入りました。ノーモーションでスラッシュですか!この体制は不利です。しかし、ここは引けません。ジオンさんの野獣のような眼から炎のような心を感じます。私とこの人とは想いは一緒です。ですが実現するためのやり方は納得できません、私は私の戦いを貫きます。
私の大切な人たちのために。
「私は貴方を認めません、貴方は私が倒します!」
私は右手に魔力を集めました、そのために右手は青く輝き出します。この青く輝く右手に私の全てを託します。
リアルボディクリエイトの応用技、魔力の拳を実体化しての、渾身の一撃!
「やれるものならやってみろ!ソリル・ブレイク!」
ジオンは左手を赤く光らせて私の右手を受け止めました。私の右手の青い光は……消えません!ジオンの左手を吹き飛ばし、私の拳は彼の頬を捉えました。
どさっ、とジオンは倒れ伏しました。
「勝者、シオン!」
審判の声を聞き一礼をしてからラピス様の脇に向かい控えます。
「みんなよい戦いでした。私は大満足です。これからも精進しこの国の未来のためにその力を使ってくださいね。」
その後、ジオンを起こして5人を整列させてラピス様は1試合1試合ごとの講評をしてくれました。流石ラピス様、アフターフォローを万全にしてくれます。御前試合は無事終了しました。
帰りの馬車でラピス様は褒めてくれました。
「予想以上の立ち回りよ。何人か禍根を残すかもしれないと思っていたけど、それもなさそうね。」
「わかりません。あれで良かったのか。」
あれからジオンさんはかなり険しい顔をしていて結局最後まで私と目を合わせませんでした。勢いであんなことをしましたがあれで本当によかったのか?もしかしたら、あれは私のもうひとつ未来の姿だったのかも。
そんな暗い私の顔をみてか、ラピス様は優しくハグしてくれました。
「シオンちゃんはよくやりました。少なくとも私はそう思っているわ。」
ラピス様の言葉で想像以上に心が軽くなったことに驚きました。そして、心から感謝しました。
ありがとうございます、ラピス様。
お読み頂きありがとうございます。
このエピソードは作者一押しの美味しいキャラ、シークレットガールがいません。なので早く呼び戻したくなりました、強引でも次に登場させようかな?
これから先、展開にいきずまっているので更新が遅くなります。もしかしたら、気分転換に他の話を書き出すかもしれません。
何にしても、こののお話、途中でやめませんので気長に応援してください。
では、今年もよろしくお願いします。




