52話 私の仕事、私の戦い(2)
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「全員、中央へ」
審判役の先生が私と対戦相手を競技場の中央に呼び、ラピス様の前に整列させます。
「ラピスラスリ・アルクス公爵家代理様に敬礼!」
私を含めて6人がラピス様の方を向き、右手をこめかみの位置に挙げてビシッと敬礼をしました。
「みんな怪我の無いようにがんばってくださいね。」
ラピス様は無邪気な笑顔でそう言いました。御前試合をいかにも楽しみにしているという雰囲気を演出しています。
さあ、ここまではラピス様のターン。これからは私のターン。
私と1人の少年を残して他の人達は舞台からおりて行きます。ちなみにここは以前魔族に襲われた武術場です。
「では両者始め!」
審判のかけ声で御前試合は開始しました。
「上位学校5年、アドラー男爵家次男カイル・アドラーだ!無礼を承知で言わせて頂く、魔術は種類の制限なく使ってくれ、全力の君に勝たないと意味がないんだ!俺は手加減するつもりは無い!」
おおっと、いきなり全てをぶち壊しにする宣言が出ました(笑)。試合が決闘に逆戻りです。確かこの人、今までそれなりに実力を評価されていたのに北伐には実力不足と判断されて残されたそうな。
「アイロネの魔法使い戦闘職4級、宮廷魔術師警備係見習いのシオン・ブロッサムです。精霊魔法とかですか?いいですよ、ただし条件があります。今から私が10数えるまでに私を捕まえて下さい。」
幾つか考えていた策の一つを使うことにしました。ニッコリする私と対象的に怖い顔になるカイルさん。自分は命がけなのに鬼ごっことは、このガキがっ!という心の声が聞こえて来そうです。ですが”決闘”はさせませんよ。
「承知した!」
剣を鞘に納め、大きく叫びながら赤いエフェクトをまとい突進してくるカイルさん。加速のスキルですか、これは速い!あれ?う〜ん、これでは……
「い〜ち、に~い、さ〜ん……」
「馬鹿な!」
私がひらりひらりとかわす動きに全くついて来れないカイルさん。連続で加速スキルをしてくるけど、それではダメダメですよ。
「きゅ~う、じゅう!はい、ここまで!」
「はあっ、はあっ、なぜ……」
今起こったことを全く理解で来ていない、そんな顔で某然と佇むカイルさん。
「カイルさん、なぜ私に触れることができなかったか知りたいですか?ではもう一度私を捕まえようとしてください、今度は加速のスキルなしできてくださいね。」
よくわかっていない顔のままで、それでも全速力で私に接近するカイルさん。先程と同じ動きをする私ですが、先程よりよっぽどギリギリまで近づかれ、おっと!危ない危ない。
「あっ!」
しばらくするとカイルさんは大きな声をあげました、どうやら自分で気が付いたみたいです。
「さっきの俺は思った通りの動きが出来ていなかった、加速のスキルに振り回されていた。だから、今のようにスキルを使っていないときの方が君の動きについていける。そうなんだな!」
はい、正解。私はにっこりと笑いながら首を縦に振ります。
「君は、俺が加速のスキルを使うことを知っていたのか?」
「いいえ全く知りませんでした。ただ加速のスキルは動きが読みやすいことはけっこう知られてますよ。それより、そろそろ試合を始めましょう。ルール変更はなしでいいですね?」
カイルさんは驚きと悔しさと、色々な感情が混ざった顔をしていましたが、やがて穏やかな顔になりました。
「いや、まだ俺は君の前に立てるだけの実力がないことを痛感した。試合は辞退させてくれ。」
私と先生、そして、ラピス様に礼をして彼は舞台をおりて行きました。カイルさんは潔い心の持ち主ですね、彼は今後伸びると思います。
そんなことを思っていると次の人が舞台に上がってきました。まだまだ私の戦いは続きます、気持ちを引き締め直しましょう。




