50話 同じ思いを胸に
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ある日、ラピス様から呼び出しを受けました。上司として呼ぶのではなく身元引受人代行としての呼び出しだそうです。本来の身元引受人はこの北伐後に正式にアルクス公爵家当主となるベルン団長ですが、戦時のためラピス様が代行なのだそうです。お勤めのあと、つまり夕方に王宮にあるラピス様の部屋に向かいました。許可を得て中に入ると、ニコニコしたラピス様が待ち構えていました。
こ、これは危険の匂いがする!
ちょっと身構えてしまった私を見て、ラピス様はさもおかしいといわんばかりの笑みを浮かべて”今日は何もしないわよ”とのたまわれました。
はい、信用できません。
「シオンちゃん、極大魔法の勉強は進んでいるかしら。」
「ラピス様まで。”ちゃん”はやめてください。」
「ふふっ、いいじゃないの。みんなそう呼んでいるのだから。あなたも嫌がっていないって聞いているけど。」
「それは……もういいですよ。魔法のほうはお陰さまで順調です。」
「そう、それは良かったわ。ようそう、呼び出した要件を言うわね。あなた宛にたくさんのラブレターがきているのよ。」
「ラブレター?」
チビですが、一応顔はいい方だと思うので何通かもらったことはありますが。なぜラピス様経由なのでしょうか、不安が倍増してしまいます。ラピス様は私に手にしていた5通程の手紙を渡してくれました。まずは封筒の宛名を確認し……
「全部男!というか、これ、決闘の申し込みじゃないですか!」
なにがラブレターですか、ほんのちょっとですが期待をしてしまったではありませんか!
決闘の申込相手は上位学校の学生さん達でした。私とは全然面識がありません。ラピス様が調べたところによると年齢や怪我や病気など、何らかの理由で北伐に連れていかれなかった者達だそうです。
「どうもシオンちゃんが王城で魔族を退治したのが注目された見たいね。」
先日、魔族の襲撃を退けたときのことですが、光の精霊を使って派手にやってしまったせいか目撃した人達が色々と噂を広げてしまいました。ちょっとした有名人扱いを受けたりしてます。戦時中ですから、こういう武勲の話は誇大して面白おかしく伝わっているらしく相手は将軍クラスの高位魔族だったとか……おいおい。色々な文官やメイドさんに真相は?とか聞かれてしばらく面倒な状態だったりしました。そのメイドさんたちの話から聞く限り王城内だけでなく王都中の噂になっているようです。
「居残り組には面白くないのでしょうね。自分達は活躍の場が無いのに、よりによって”パルス家の出来損ない”が手柄をあげたのですから。」
私に対する世間のイメージは、武の才能に恵まれなかった出来損ないの弱虫、又はパルス家とアイロネの魔法使いの確執を治めるために人質に差し出された可哀想な子、といったところです。
「私のような小者に決闘を申し込んだとしてどうするんでしょ?」
「北伐の終わりが見え始めているからね、何とか終わらないうちに北伐に加えてもらいたいのよ。貴方との決闘はそのきっかけってところかしら。」
ちょっと憤りを感じます。彼らは次の北伐には参加させてもらえるでしょう、武人として!私には決して得られない機会を彼らは持っているのに!
そんな私の顔を見てか、ラピス様が膝を折り、私の目線へと自分を合わせてきました。
「公爵家に預けられた者に決闘を申し込むんですもの、当然処罰も覚悟の上ね。思い込んだら命がけ、シオンちゃんと似ているわね。”同じ想いを胸に募らせる者同士”といったところかしら?」
ハッとしました。そうです、北伐に参加出来ない悔しさを味わっているのは私だけではないのです。家族を戦地に送っているのにただ待っているだけ、という状況は本当に辛いのですから。
「意外と友達になれるかもしれませんね。決闘だと大事になりかねないので、もう少し穏便なかたちに持って行きたいですね。お願いできますか?」
私は少し力を抜いてラピス様にそう伝えました。ラピス様は立ち上がって机の上から一枚の紙を持ってきて私に渡しました。
その内容は、
”アルクス公爵家による上位学校の武練視察”
視察内容:シオンと模擬戦をやって代表者の実力を見る
ルール:学生は模擬剣、シオンは魔法(ただし精霊の助力なし、口寄せもなし)
勝敗は剣、又は魔法の有効打を先に入れた方が勝ちとする
特典:シオンに勝った場合は何か褒美を与える
というもの。成る程、これなら五分に近い戦いができます。というより私に有利かもしれません。一撃必殺というほどの威力はありませんが、魔玉も敵に向かって打ち出せばちゃんとした攻撃魔法になりますし。
「代表者が決闘の申込者になるように校長に指示しておくから。ちょっとシオンちゃんに有利かもしれないけれど、五連戦だし納得してくれるでしょう。」
「ちゃんと相手を調べて、対応も考えてくれて、本当にありがとうございます。」
「うふふ、私の可愛い可愛いシオンちゃんのためですもの。」
ラピス様には面白がるような言い回しをされて誤魔化されてしまいましたが、今回の件、双方に禍根を残さないようかなりの労力を注いでくれていると思います。本当に素晴らしい方です。
なにより、なんというか、いつもラピス様の行動に”温もり”を感じるのです。ラピス様からはどこか、冷たい、冷めたような感じを受けることもありますが、それは任された仕事柄そうせざるおえないのではないでしょうか。
最近、私はラピス様の”温もり”を強く感じるようになってきています。それは、ラピス様に惹かれているからかもしれません。いえ、確実に惹かれています。
なぜなら、ラピス様といる時間がとても早く流れるから。
「この件に納得するかちょっとだけ不安だったけどやっぱりシオンちゃんはいい子ね、うん!ご褒美にハグしちゃう♪」
「えんりょしぐぇぇぇ!」
前言撤回!時間の流れるのが遅く感じるぅぅぅ!
また少し時間を下さい(^-^)/




