47話 エピソード明かりを灯す者6
空に星が輝き出したころ、王城の庭のにいた魔族は対峙した少年に言いようのない恐怖を感じていました。足かせをはめられ、精霊を封じられた魔法使いの少年など何の障害にもなり得ないはず。たとえ精霊との交信を阻害し魔法を使えなくする”ジャミング”が効かないとしても。
「はっ?」
魔族はいつの間にか自分の周りが明るくなっていることに気が付きました。たくさんの光の精霊が一斉に輝き出したからです。
輝きに照らし出させた銀髪の少年は神秘的でまるで星を従えたの天使のよう。その姿を見るものの心を奪い去るのではないかと思えるくらいでした。少なくとも真近でその姿を見てしまったアイナは自分の心がシオンに持っていかれ、消して消えない焼印を押されたような、そんなことを思っていました。
「皆さん、お願いしますね。」
シオンがお願いの言葉をかけると、”光の精霊”は待っていたかのように一斉に姿を変え始めました。輝く鎧兜に身を固め輝く槍を掲げたその姿に、アイナは絞り出したかのような声で呟きました。
「”輝々軍団”」
この魔法、通常は1人の魔法使いが4級程度の魔玉と引き換えに光の精霊の進化系”光の騎士”を数体を呼ぶ術です。そして数人の魔法使いが合同で呼び軍勢として使役することをシャイニングフォースと呼びます。それを1人で百体を超える数を呼ぶなど1級魔法使いでも出来るかどうかわからないというレベルです。アイナは"あり得ないこと”をするシオンから目を離せませんでした。
シオンが手を上げ振り下ろすと、輝く軍団が一斉に動きだし槍を魔族に撃ち込みました。シオンの攻撃に、あまりにスケールの違う攻撃に心を飲まれて魔族は微動だにできませんでした。その槍は魔族の本体を直撃せずに地面に縫い付けるかたちで突きたちました。
「アイナ、封印を。捕まえるんだ。情報を引き出そう。」
「え?私が?」
「私は精霊魔法を封印されていて使えないんだよ、忘れたの?早くして、手柄だよ。」
「わ、わかっ「不要です」」
「ぐほぉ!」
シオン達がどこからか声が聴こえたかと思ったときには、魔族の身体に何かがぶち当たり突き抜けて行きました。そのなにかは少し離れたところにいる魔法使いの手に収まりました。それは黒い水晶球のようなものにみえました、何かの魔具のようです。
「あっ」
そこにいた人物を知っているのかアイナは急いでひざまずき首を垂れました。シオンは見たことがない魔法使いでしたが服装で同じ宮廷魔術師だということはわかりました。
「安易な封印は反撃を呼ぶ。未熟なお前達ではすべきでない。」
「はい。あ、あの」
「アイナは持ち場に戻りなさい。君は後始末をしなさい。」
「……あっ!あははは。」
シオンはウッカリを絵に描いたような顔で笑い出しました。そんなシオンに静かな視線を送ったまま、黒水晶球を持った魔法使いはふっと姿を消しました。どうやら転移術が使えるようです。
「みんな、元の姿に戻って明かりを灯し、おーい。」
シオンの言葉に反応をみせず”光の騎士”のほとんどは何処かに飛んで行ってしまいました。
「やはり頼みごとは一度だけって約束でしたから無理ですか。もう一度灯して、まわら、な「きゃ!」」
ふらりと倒れてきたシオンをアイナは抱きとめました。その身体はまだ子供でした。アイナは自分より小さなこの子に助けられたことをシオンを抱きしめながら実感しました。
「だ、大丈夫?」
「うん、疲れただけ。」
「シオン、あっあのね、あ、あ、ありがと。」
「どういたしまして。でも、アイナのおかげだよ。」
「私の?」
「アイナが私のために色々してくれたからさ。足かせや精霊封じとかをさ。ありがと。」
「そ、それって嫌味!い、意地が悪いわね!私が嫌がらせしてたことを根に持っているんでしょ!」
「嫌がらせ?足かせや精霊封じのこと?」
「へっ?」
「私の指導教官ならこの10倍くらいの重りは平気で付けてくるよ。それに今の戦いを見てたら多分、魔法使わずに魔族を倒せないとは情けないとか言うだろうし。」
「え?え?ほ、本当に?」
「本当だよ。でも、そ〜か〜嫌がらせだったんだ〜。」
「うあぅ!」
「はは、本当に面白いなアイナって。ねえ友達になろうよ。」
「と、友達?イキナリ!何で!」
「いやなの?なら仕方がな「いいわ!」」
少し顔を赤らめたアイナはシオンの足かせを外しました。彼女はシオンの首に付けさせた精霊封じのチョーカーにも手を伸ばそうとしましたが顔が近くなることに気が付いてドキドキしてしまい、今はやめておくことにしました。そして、もじもじしながら、
「ど、どうしてもっていうんならいいわ、助けてもらったわけだし。年も近いし。上司だし。」
「ありがと、アイナ。すこし、このまま休んでいい?無理しすぎたみたい、で……」
「ちょっ!ちょっと!」
すうすう寝息を立て始めたシオンを放り出すわけにもいかずにアイナはその場で抱きしめたまま、シオンが起きるまでその場を動けませんでした。
・・・・・
王宮の一室にて
「……ここは?」
「目が覚めたようね。」
「そうか、そうか、はは。」
「時間が持ったいないわ、話しなさい。」
「ふふ、話しますとも。貴女様がご無事である以上、もう一組のほうはもうここにはいないのでしょう?」
「ええ、手加減できなくてね。」
「ご想像の通り私は”おとり”ですよ。王城の方で騒ぎを起こすのが私の仕事。その間にもう一組みが王宮で貴女様を、という段取りで。」
「そんなことはもういいのよ。”伝言”を伝えなさい。」
「これは失礼。”今回のゲームは貴女の勝ち、いずれまた”でございます、我が主の花「やって」」
「……」
「ふぅ。ねえ、彼は気づいていたのかしら。」
「シオン・ブロッサムですか。恐らくそうでしょう。自分とアイナに死の試練がかされていたことに。しかしそれを当然と考えるタイプかと。」
「剣は使えなくとも獅子の子は獅子と言ったところかしら。そうそう報酬をあげましょう、何にしようかしら。やっぱり彼が欲しがっているアレかしら?」
「あの歳であの目……。彼は危険です。極大呪文の習得許可はまだ御辞めになったほうが。」
「今回の報告にあった魔法もある意味それに類するものではなくって?」
「……はい、擬似的にではありますがそうなります。精霊の助力もなしに、まさかあのような方法を使うとは。ですがあれは彼にしかできませんよ。あれだけの数の精霊に毎日”玉”ではなく”魔玉”を与えるなど。”十魔の魔女”の息子であるあの者にしか。」
「そう、そうやって彼にしか出来ない方法で、極大魔法を自力で習得してしまったら?恩を売れないのではなくって?」
「その可能性は低いとは思いますが……否定できません、頭が痛いですね。」
「そう?私は彼のすることがとても楽しいわ。私には彼がこの国に”明かりを灯す存在"になるのではないかと考えているのだけれど。」
・・・・・・
星空の下、アイナの腕の中でシオンは守護妖精との通信を行っていました。
(シオン、何かあったの)
(ちょっと、魔族とやりあっただけさ。そっちは?)
(ナイショだけど、今のところ全員無事よ。兵士は毎日何人かいなくなるけど。)
(そう……。こっちは精霊封じの魔具のおかげで君がいないことのカモフラージュはバッチリだよ。だから頼むね、シークレットガール!)
(ナイショだけど期待してイイヨ♪)
ここにいないシークレットガールに感謝の気持ちを送ってからシオンは通信を切りました。
シオンは薄目を開けてアイナの様子を伺います。彼女は困った顔をしながらもシオンを離しませんでした。シオンは少しは仲良くなれる脈があるかなと思いながら今度こそ睡魔に身を任せました。
天使のような笑顔を浮かべて。
エピソード”明かりを灯す者”……fin
どうでしたでしょう。このエピソードの始めにラピスはこの国に弱いものはいらないと言っていますが、それにラピス自身が含まれていたことに気が付いた方はいますでしょうか?
それにしても三人称は、表現の幅が広がりますが難しいですね。
そして、これからも微妙なところで鈍感なシオンをよろしくお願いします。
リアルが忙しくなってきたので進みが悪いのですが、ノンビリやっていきます。
次は1月1日までに用意したいな(^-^)/
本当に皆様、感謝・感謝・感謝です。




