43話 エピソード明かりを灯す者2
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カリカリ……カリカリ……
少しばかり耳障りな音が廊下に響きます。ここは王城の中のとある施設の一つ。その廊下を一人の少年が歩いていました。
少年は7歳くらいでしょうか、とても小柄です。多く見積もっても10歳にはなっていないでしょう。大きな青い瞳に映る光は強い意思と深い優しさを感じさせます。とても可愛い顔をしていて後ろ姿は女の子に見えなくもないでしょう。銀色の髪の毛は肩の上のあたりで切りそろえられておりチョーカーをしている細い首がよく見えます。白地に金縁の特徴ある服をきていることから、この少年が宮廷魔術師であることは明らかでしょう。
カリカリ……カリカリ……
その少年が歩くと先ほどの音が足元から聞こえます。それもそのはず。少年の足首には皮のバンドが巻かれており、そこからのびた伸びた鎖の先には鉄球がついていたのですから。足枷の鉄球が床を擦る音が先ほどの音の正体です。
少年は廊下をある程度進んでから立ち止まると、杖を掲げて呪文を唱えました。
「精霊よ、どうぞこれと引き換えに光を。」
少年の杖の先から丸い玉が幾つも創り出されては飛んで行きます。廊下の天井のあちらこちらで灯りが灯りました。ちゃんと灯りがついたことを確認すると少年はまた廊下を進みます。
カリカリ……カリカリ……
この少年は名をシオン・ブロッサムといいます。少々複雑な事情で王城で働くことになったの少年です。
王国に雇われて王城の灯りを灯す仕事を仰せつかり、今その仕事をこなしている最中です。
光の精霊に玉の魔法を渡して見返りに光を提供してもらうことがこの少年の仕事になります。玉の魔法は少ない魔力の消費で済むので未熟な魔法使いでもできるので簡単な仕事です。
途中ですれ違うメイドが頭を下げます。まるで囚人のような足枷を付けていても彼が歴とした貴族であり、かつ宮廷魔術師であることを皆知っているからです。
それに律儀に和かな挨拶を返すこの少年はメイド達にとても人気がありアイドルのようになっているのですが、本人はそのことに全く気がついていません。
数人のメイド達が通り過ぎた少年を見送りながら世間話を始めていると、若いメイドがその輪に加わりました。
「あの方は一体どなたなのですか?」
「あんた新人さんかい?あの方はシオンちゃ、いえいえ、貴族のブロッサム様さ。」
「ふふ、あんた気をつけなさいよね。」
「分かってるわよ!でね」
そこでその話し掛けられたメイドは嬉しそうに話し始めました。
「でね、あの子はパルス家からアイロネの魔法使いへの人質でね、北伐の間はアルクス公爵家が面倒を見ることになったそうで王宮に住んでいるのよ。昼間はああやって仕事をこなしているのよ、まだ9歳だってのに偉いもんさ。」
「そうなんですか、でもなぜ足枷を?」
話し込んでいたメイドはここで口元を手で抑えてから
「アイナ様、知っている?」
「ええと、知ってます。悪さをすると、アイナ様に見つかるぞってここに来るときに言われました。千の瞳を持つ魔法使いだとか。」
「そうそう。そのアイナ様がシオン様がここでいなくなったときに見つけられなかったんですって。でね、逃げ出さないようにああやって足かせをしてるそうよ、あんな子に酷いもんさ。」
「そうそう、首のチョーカーも精霊封じの魔具だそうよ。アイナ様が命じたそうよ。」
「そうなんですか。なんだかあの子、可哀想ですね。」
「そうなのよ、しかも仕事もこの王城のほぼ全ての灯りの点灯よ。朝から晩までああやっているのよ。いつもああやってにこやかに挨拶してくれるけど、人目のないところでは辛そうにしているって噂さ。ああ、いっそ私の前で倒れてくれたら介抱してあげるのに。」
その後もあれこれと話し込んでいたメイド達の輪から、先ほどの若いメイドが抜けだしました。そして若いメイドはしばらく少年の後をさり気なく付いて回りその仕事を観察していました。
「あの程度の魔具で封じられるようでは、ふん、大した守護精霊ではないな。」
若いメイドらしからぬ尊大な言葉遣いは強い違和感を感じさせます。
「アイナに疎んじられる存在か、使えそうだな。」
若いメイドは微かな笑みを浮かべて元の仕事に戻りました。




