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39話 誇りを持って

たくさんの感想、評価、お気に入りありがとうございます。


かなり悩みましたが、どうぞ。




しばらくしてからラピス様は少し気持ちを落ち着かせましょうと言って抱きしめていた私を離しました。お茶の用意を頼んでくるわと言ってラピス様は部屋を出て行ってしまいました。


お茶。


セバスの入れたお茶が飲みたいな。でもセバスは今日はいない。私が家を空けるようになってからセバスは冒険者に復帰したのです。先日若手冒険者の指導の依頼があり王都を少し出ているのです。セバスのことを思い出したらセバスに無性に会いたくなりました。ですが、


”迷惑以外の何物でもない”


ラピス様に言われた言葉が蘇り、鋭いナイフのように私の心に突き刺さります。セバスももしかしたら私のことを……


そう思ってしまうとそのことが頭から離れません。私は部屋を飛び出しました。


王城の中を当てもなくさまよう私。


知らない場所をまるで迷子のように途方にくれて歩き、止まり、歩き、止まり。迷子なら誰かに協力を求めることでしょう。知り合いとの出会いを求めるでしょう。でも私は会えば”迷惑”と言われる身。会うことさえ求められない存在。このまま消えてしまえばよいのではないのでしょうか。


「何で会えないんだよ!父上!」


聞き覚えのある声が耳に入ってきて立ち止まりました。近くの扉から聞こえてきたようです。心に突き刺さったナイフがズキンと心を刺激します。


私は、恐る恐るその扉を開けて見ました。


中には声の主であるダン兄とアーサー兄と父上がいました。おそらく、父上の執務室なのでしょう、側近の方々もいます。ダン兄が父上に詰め寄っています。でもダン兄がいくら言っても父上は無表情で駄目だ駄目だと断り続けてます。


「父上!今日久しぶりにシオンに会ったんだ、チョットだけど。王子はあいつが怪我したから連れて行くって言ったけど、あいつ怪我してそうじゃなかった。絶対に連れていかれたんだと思う!」

「お前は王子が言った言葉を疑うのか?お前がそう思っただけではないのか?」


ダン兄は一瞬下を向いてから顔をあげて、思い切ったように大声をあげました。


「別れ際にあいつが”大丈夫”って言ったんだ!あのときと顔がっ!同じなんだっ!あのときっ!あのとき家を出たときのシオンとっ!」


気付いていてくれたんだ。ダン兄は私よりも私のことを知っていてくれた、そう思うと心のナイフが小さくなって行くのが感じられました。


父上はそのことに言葉を失って黙ってしまいました。


「親父、理由を教えてくれませんか。今日のグラン、グラナート王子はいつもと雰囲気が違っていて。嫌な予感しかしないんだ。もうシオンと会えないんじゃないかって。」


アーサー兄が、”父上”を”親父”と呼んでいます。跡取りは、成人前後から”親父”や”親父どの”と読ぶようになるのがこの国の慣わしです。時間(とき)の流れを感じさせます。


「外してくれ。」


父上が側近たちに声をかけると、みんな直ぐに部屋を出てくれました。


「2人とも聞いてくれ。実はな、次の北伐が終わるまでシオンを近づけてはいけないと王から直々に命令を受けている。アイロネの魔法使い達がパルス家を敵視するのが収まるであろうその頃まではと。

そこで次の北伐ではシオンを王家がアイロネ様のところから預かることになっていた。つまり宮廷魔術師として引き取ることが決定していたのだ。このことは2年前には決定していたんだ。

それが先ほど、宮廷魔術師にする時期を早めると王からの伝令がきた。エクサ国王からの直接の命令だ。」

「じゃあ、シオンは?」

「私も詳しくは知らされていないが、今日王家とシオンとの”顔合わせ”をすると連絡は受けていた。北伐も近いと噂される以上、魔族との衝突を理由に王家としては面倒ごとを早めに処理しようと考えたのかもしれん。」

「そんな、シオンは、また、離れて行くの!俺たちと!」

「親父、何とかならないのか。」

「出来るようならしている!」

「俺は納得い「それ以上は言うな!!」」


父上はダン兄以上の大声でダン兄を黙らせると、苦しそうな顔で言葉を続けました。


「言ってはならん!王家も!アイロネ様も!パルス家にとってこれがベストという協力をしていただいた結果なのだ!それに、今会えばシオンの今までの頑張りがフイになる。シオンは俺に、”俺の息子として頑張る”と言って出かけたんだ!あいつにしか出来ない”戦場”に出かけて行ったのだ!俺は俺の息子を信じる!アーサー!ダン!堪えろ!」

「ううっ!まだあいつ、10歳にもなっちゃいないんだぞ!」

「シオーーーン!」


このとき私の心に突き刺さっていたナイフが、これから起こるだろうあらゆる困難を打ち払う”勇気の剣”に変わったのを感じました。


「シオン?」

「「え?」」


父上の言葉に、兄達は後ろを振り返りました。


危ない!心を戒めました。今は会えません、”父上の頑張り”をフイにしてしまうのですから。


「今シオンがいたような気がしたんだが。幻覚か?」


三人して室内をキョロキョロ見回しますが、私を見つけることは出来ません。


”終わらないかくれんぼ(ネバーエンディング・ハイドアンドシーク)”


シークレットガールのオリジナル魔法です。これは、私が見つかりたくないと思っている間は誰にも見つけられないという魔法です。正確にいえば、私を認識しようとするあらゆる意識に作用し認識することを阻害する魔法です。例えば先ほど私が扉を開けたときに室内の人達は私に一度気が付きます。しかし、私を認識した瞬間に私を知ろうとする全ての意識を打ち消して、結果私が入ってきて中にいるということを認識することができなくなるのです。


「親父、教えてくれてありがとうございました。」

「父上、俺、誤解していた。もうシオンを忘れてしまったんじゃないかって。ゴメン。でも、隠れて会うとか、せめて手紙だけでもダメかな。」

「交渉してみよう、コルネからも催促がたくさんきているからな。」

「ははは、母上らしい。」


それからも、涙を誤魔化すような会話が聞こえてきましたが私は席を外しました。


外の庭に出て星空を見ながら、私は鼻歌を歌いながら散歩して回りました。

しばらくすると、ラピス様と魔法使いと思われる少女が近づいてきました。


「すこしは気分が変わったかしら、シオン君。」

「はい、おかげさまで。ありがとうございます。一人で散策するのをゆるしてくれて。」


柔らかい声に、とがめの色がないのを感じて謝るよりもお礼をいうことにしました。


「ヌケヌケと!」


隣の少女は眼をランランと輝かせて私を睨みつけてきました。本当に輝いています。おそらく、精霊があそこにいるのでしょう。何か特殊な“見る”タイプのオリジナル魔法であると推測されます。


「パルス家の出来損ないのくせに!私の”千の(サウザンズ・アイ)”から逃れるなんて!一体どんな魔法よ!教えなさい!」


問いかけに答える代わりに私は名を名乗りました、誇りを胸に持って。


「私はフリード・パルスの息子にしてブロッサム家の家長シオン・ブロッサム。


君には一生見つけられない者だよ。」




かなり苦心したですがどうでしたでしょう?


ラピスのことは次回に明かします。


また、しばらく時間をくださいね。

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