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38話 ラピス様しか

今回は悲しいお話しなので、そういうのが嫌いな方は読み飛ばされることをお勧めします。




「ごめんなさいね。うふふ。」

「勘弁してください。」


ラピス様は笑みを浮かべながら誤ってくれました。この人、本当に気絶させるの上手なんだな、なんて思いながら誠意がイマイチない謝罪を受け入れました。


「シオン君聞いて頂けます?私が、グラナート王子が女であることは秘密にしてもらいたいの。」

「はい、秘密は守りますから帰して下さい。王家には近づかないので問題ありません。」


私は相手に言われる前に、先に言うことにしました。流れから言って私を直接雇う気かもしれないと思ったからです。口を封じるには近くにいさせた方がいいのですから。ただし、権力の力関係的にいって相手が”雇う”と言ったら変更できないのですから。私はアイロネの魔法使いとしてパルス家の陣に参戦したいのです。王家・公爵家に雇われたら出来なくなります。それだけは何としても防がねばなりません。


「そう、秘密を守ってくれるのは嬉しいわ。でも私がなぜ男性を装うのかを聞かないのかしら?」

「……。」


私は沈黙をもって答えました。この質問では何を答えても私の立場が悪くなります。


「ベルン兄様が言ったとおり本当に頭の回る子ね。でもね、元々貴方は王城に上がる予定だったのだから、それが早まっただけよ。」

「えっ?私が?」


予想外の発言に、思わず聞き返してしまいました。


「シオン君。貴方は自分のおかれた立場がまだ良くわかっていないようね。」


同情の念を込めた視線を送りながらラピス様は答えてくれました。それは聞きたくなかったことでした。


「明日にも起こるかも知れない魔物の大進行を防ぐ北伐。貴方はパルス家の陣に参戦する気だと聞き及んでいます。

それは無理なのよ。今度の戦いはパルス子爵家次期当主アーサー・パルスの初陣。パルス家は次世代への引き継ぎため大きな功績を残さねばなりません。前回、前々回の醜態を払拭するためにも。その状況で、和解の”シンボル”であるあなたがパルス家に戻ったらあらゆるところに不和の火種が撒かれることになりますわ。所詮、身内同士の馴れ合いであったと……。だからパルス家は貴方の参戦を拒否するでしょう。

かといって他の貴族の陣営は?巻き込まれるのを恐れるでしょうね、受け入れはあり得ません。

貴方は、悲しいけれど”迷惑”以外の何物でもないのよ。」


何も言えません。

言い返せません。

予想は、ずいぶん前から、していたの、です、でも、そう、思いたく、なかった。

苦しい、です。倒れそう。


「貴方が魔法使いになってすぐに王家とアイロネとパルス家の間で密約が交わされたわ。時期を見て貴方を宮廷魔術師にすることを。」


ラピス様は今度は優しく抱擁してくれました。今回は跳ね除けようともがく気力すらありません。


「魔族が絡んできたのは想定外だったわ。けれども、今回の成人式で上位学校に来ることも王家の私との”縁”を作ることが目的だったのよ。」


そういえば、少し変だと持ったのです。今までダン兄達に会うのはあれだけ禁止されていたのに。


お祖母様……


「ゴメンなさいね。もう少し、もう少し先の予定だったの。泣かないで、貴方のその顔を見たくなくって兄様は今回の後始末を自分から買って出たのよ。」


抱擁を解いて私の目を見つめ”だからここにはいないのよ”と語るラピス様。今の私にはラピス様しかすがるものがなく……私はラピス様の胸に顔をうずめました。




あらかじめフォローしておきます。


次話でシオン君は立ち直ります。


内容を練りたいので次話は1週間後15日とします。

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