33話 再会
お待たせしてすいません。
それではどうぞ(^-^)/
私がアイロネ様のカバン持ちをして上位学校に向かう日、なんだかそわそわしていつもより早く起きてしまいました。
呼吸法をしようとしましたが、集中力がイマイチなので木剣で素振りをすることにしました。この木剣は7歳の誕生日にダン兄がプレゼントしてくれたもので”まいにちふれ”と彫ってあります。
仕事もこなしていたのでさすがに毎日というわけにはいきませんでした。ダン兄は怒るかな?拳を振り上げたダン兄の姿が思い浮かびます。そんな気持ちで拙く彫られているその文字に触れてなぞりながら、私は怒られても今日会えたらいいなと、とてもとても強く思いました。
朝食後、お出かけの用意を終えて部屋を出ると優しいお祖母様が厳しいアイロネ様となりました。アイロネ様は感情のない声で行きますよ、とだけいい振り返ることもなく歩き出します。
上位学校は王城南側のそれほど遠くない位置にあり、下位学校は上位学校よりさらに少し南にあります。両校は指揮官と部下のような関係にあり、上位学校の学生が下位学校の学生を率いて軍進する練習など頻繁に交流があるのです。
上位学校に到着しました。上位学校は王族や高級貴族の子供が通ったり寄宿舎が中にあったりしているので警備が厳しく小さな要塞のようになっています。アイロネ様にくっついて門をくぐり中に入ると、正面にとても綺麗なお庭があり素敵だなと思いました。誰かしりませんが大切に世話をしているのでしょう。
アイロネ様と私は警備兵の集まる建物に案内されて、アイロネ様は警備責任者と打ち合わせをはじめました。どうやら今年は特別らしく、アイロネ様は賓客として出席する以外にも用事があるようでした。
「……ではアイロネの魔法使いはこのように配置を。成人式ではグラナート王子は最初から最後まで学生側に参列されますのでそのつもりでお願い致します。」
「グラナート王子ももう最終学年、早いものね。ああ、それとバードンさん、サージュの魔法使いの方は塀の外ということでよいの?」
「はい、通常警備に加えて中心が宮廷魔術師、その外側をアイロネの魔法使い、さらに外をサージュの魔法使いが護る魔法使いの三重警備。これなら、魔族が奇襲してきたとしても耐えられます。」
「要人が多いと気が抜けないわね。」
今年は王家長男のグラナート王子が成人するのでいつも以上に参観者が多く、盛大な成人式になるようです。その分警備はいつも以上に厳しくしたのでしょう。
打ち合わせのあと確認のため一緒に中を回ることになり、私は後ろついて行きました。途中、カキンカキンいい音が聞こえてきます。音の感じからして模擬戦でもしているようです。すぐに武術場らしきところの入り口が見えてきて、そこにギャラリーが2人ほどいました。一人はとても華奢な男子、もう一人は何と見知った顔でした。
「グラナート王子!ちょうど良かった。」
「バードン殿?」
ギャラリーの1人は、どうやら話に出てきた王子様のようです。王子はとても華奢で線が細く、ちょっと頼りないように見えます。鼻筋が通った美形で珍しい赤い髪と目をしています。
グラナート王子と警備責任者のバードンさん、そしてアイロネ様が3人で何かを打ち合わせ始めたので、私はもう一人に声をかけました。
「なぜ?あなたがここに?おかしいです。」
「いや〜ここ、稼ぎがいいんだよ〜。」
「なぜ?あなたがここに?おかしいです。」
「剣だよ剣〜、俺それしかないだろう?」
「なぜ?あなたがここに?おかしいです。」
「はっはっはっ相変わらず面白いなあ〜シオンは〜。」
頭をグリグリされましたので払いのけました。私にとって非常に不愉快な人、ベルンシュタイン傭兵団のベルン団長がそこにいました。
「これでも何故か公爵家の跡取りなんだよね〜。」
「自分で疑問形にして答えないでください。傭兵団はどうしたんですか?ミスティ教官のところにはちゃんと顔を出しているんですか?」
「俺にそんな親しい声をかけてくれるのはお前だけだよ〜。」
相変わらず、この人とは会話がかみ合いません。くどくどとそのチャラいキャラは絶対に世界の迷惑だと説得にかかりました。
「赤字を補填しないと団員を養えないから毎年この時期だけでやってるんだよ〜臨時講師ってやつさ〜。ミスティんとこは、まあ、また今度。」
ベルン団長は、私の説教がさすがに応えたのか渋々答えてくれました。
「ベルン兄様、お知り合いですか?」
グラナート王子が後ろから声をかけてきました。あれ?おばあ、違ったアイロネ様がいない!
「あ〜前話してた親友の〜シオンさ。」
「は、初めまして、シオン・ブロッサムと申します。以後お見知り置きを。ええと、アイロネ様は?」
焦ってどもりそうになりながらも挨拶は済ませます。ベルン団長の発言はもちろんスルーします。
「アイロネ殿は、ベルン兄様との会話を遮るわけにはいかないといって行かれましたよ。公爵家次期当主、つまりアルクス卿に気を使ったみたいだね。あっと、いけない私はグラナート、グランでいいよ。」
「そ、そんな滅相もない!」
「そうかい?ベルン兄様にはタメ口みたいじゃないのかな?」
「今まで知らなかったんです!なぜ黙っていたのですかベルン団長!じゃない次期公爵家当主様!」
「はは、シオンでもそんな困った顔するんだな〜ミスティが教えてるとばっかり思ってたよ〜。」
わ〜頭が混乱してきたよ〜誰か助けて下さい!
(シオン!ナイショナ、キケ)
「おっ!シオンだ!」
「あっ、本当だ!シオンだ!」
なんと武術場から出てきたのはアーサー兄とダン兄でした。このとき二人のあげた声と再会のショックで、私はシークレットガールが何か言いかけことを完全に忘れてしまいました。
いいところで次回にまわしてしまいましたm(_ _)m




