31話 シークレットヒロイン
少し、時間がありましたので次のエピソードの前振りを作りました。
「や〜べ〜どうすっかな〜?」
「どうするも何も、早く参戦したらどうですか?みんな押されてますよ。」
「後ろにアレがいるからな〜。」
ベルンシュタイン傭兵団のベルン団長は歯切れの悪い言い回しが好きで私はどうにもイライラします。
私、シオン・ブロッサムは9歳になりました。魔法もそれなりに使えるようになったため、一人で傭兵団に派遣されるまでになりました。
現在、この地方の村々を襲っているモンスター達を捕捉し奇襲をかけたところです。ですが現在は押されつつあります。
「やはり、3倍以上数に差があるのに突っ込むなんて無茶苦茶です。何とかしてください。」
「ははは、なんとかっていってもな〜。シオン〜助けてくれよ。」
「魔法使い派遣契約条項第3条、戦闘において提供する魔法は補助魔法のみ。私は戦闘に攻撃参加はできません。」
「ちょっとくらいいいじゃん〜。」
「契約違反したら即ばれます。駄目です。」
「固いな〜そんなこと言わずにみんなで幸せになろうよ〜。」
「子供だからっていってうやむやにしようとしてもダメです!契約は契約です!」
どうにもベルン団長は話すとイライラします。ホント!なんでこんな人がミスティ教官の婚約者なんだろ。」
「アハハ、聞こえてるぞ〜そこまでホメられると照れるな〜。」
「全く褒めて」
「ガアアアアアア!」
「やべえ!犬っころ頼むわ!」
一瞬で体を赤く光らせて前線に突っ込んで行くベルン団長、あれはたぶん”加速”のスキルでしょう。
私達が敵対しているのはオーガーのロード種が率いる混成モンスター軍団約50匹です。奇襲で10匹ほどは倒しましたが、立ち直られてこう着状態に陥っています。こちらは戦士が15名、結構強い人が揃っていて集団戦闘が得意です。だからこそ2倍以上の数に囲まれながらも持ちこたえているのです。
それでも状況は好転しそうにありません。相手のオーガーロードは子馬ほどもあるフレイムドックを3匹従えて高みの見物をしていました、数から言ってこちらを脅威とは思わなかったのでしょう。
今、じれたのかオーガーロードが大声をあげて突っ込んできました。ベルン団長が相手をすべく、正面から向かって行きます。向かう途中、敵軍を抜ける間に2、3匹切り倒して行くあたりはさすがです。ですが、このままではオーガーロードより先に足の早いフレイムドックに補足されてしまいます。
「風の精霊様、魔玉と引き換えに私の願いを叶えたまえ、かのモノ達の足止めを。」
私の守護妖精シークレットガールを経由して近くの精霊に働きかけます。
3体の風の小妖精が願いを聞いてくれました。フレイムドック達に体当たりをして動きを阻害します。フレイムドックは実体のない妖精に威嚇の吠え声を上げたり、炎を吐いたりしますが効き目がありません。これで充分時間を稼げるでしょう。
ベルン団長がオーガーロードと正面からやりあっています。一撃でも喰らえばただでは済まない鉄鉾の攻撃を紙一重でかわしながら少しずつダメージを与えているようです。しかし、しぶとさで定評のあるオーガーではどこまで通用するか、一見すると五分と五分の勝負に見えます。ですが……他の人達は押されています。壁となっている戦士の誰かが倒された瞬間、一気に戦線が崩壊することもあり得ます。
アイロネの魔法使いは基本的に直接戦闘をしません。これは、とても重要なことなのです。北伐では圧倒的に数の少ない魔法使いは攻撃より、広域防御、治療などが主要な仕事になります。特に巨獣の”炎の吐息”などは、多くの戦士に被害を与えるためにその防御のため力を温存するのです。目の前で仲間が命がけで戦っているのに自分から攻撃はできないのです。そのため、普段からどんなときでも攻撃の気持ちを抑えられるように攻撃の依頼を極力引き受けないようにしているのです。
つまりそのような訳で魔法による戦闘補助を売り物にしています。だから、
「僕はアイロネの魔法使い、戦うわけにはいかないんだ。」
そう、パルス家のためにも、お祖母様のためにも。
「でも、死ななくていい人達が死んで行くのを見過ごせるほど、僕は!大人じゃない!」
身体中の魔力を活性化して相棒に送ります。私の相棒シークレットガールに。
(ナイショダケド、ソウイウ、シオン、キライジャ、ナイ)
魔力をドンドン送ります、必要とするだけ、ひたすらに。
80、81、82……。
ベルンシュタイン傭兵団は馬鹿者の集まり。
86、87、88……
得にならない安い依頼ばかりを受けるお人好し。
92、93、94……
そう言われていますが違います。みんな、大切な人をなくした、人の痛みを知っている人たち。
98、99、100!
「今!ここにシークレットなヒロイン誕生!”実体創造”!」
・・・・
バンバンバンと爆煙がモンスター達の真上で炸裂しました!
「おーーーーーーほっほっほっほっ!」
「ガ?(なんだ、どこから?)」
「ガクガ!(どこだ?わからん、どこにいる!)」
「ゴーグゴー!(おお上だ、おまえらみてみろ、あそこだ!)」
黒いコスチュームに身を包んだ仮面の少女が空中でポーズを決めています。
「ドー!(だれだきさま!)」
「口上省略!一発百中パ~ンチ!」
少女が宙で拳を振るうと、傭兵団と相対していたモンスター達とフレイムドッグ達がまるでその拳に当てられたかのように吹き飛びます。
その少女がくるりと振り向いてオーガのロード種を睨みつけ左手を腰に手を当て、ビシッと右手の人差し指を向けると、オーガのロード種は思わず少女の方を向いてしまいます。
「ゲフッ!」
「よそ見してたからだよね〜。」
ベルン団長が隙をついて大技を叩きこみ、オーガーロードを倒したようです。
「誰か知らないが、あり」
「さらば!」
少女は団長の礼も聞かずに太陽に向かって飛んで行ってしまいました……正確にはそう見せかけて大急ぎで大回りをして私のところへと帰ってきましたのですが(笑)。実体は3分くらいしか維持出来ないのでギリギリでした。戻ってこれないとシークレットガールはしばらく眠りについて魔法の助力を受けられなくなりますので大問題なのです。
私は疲れてぺたんと座り込みました。でも、目を閉じることは出来ません。ここにはたくさんのモンスターの”死”があります。
この惨状を見つめることをやめません。やめてはいけない気がするのです。なぜならこれは私の所業だからです。手を下したのはシークレットガールだとしても。
(僕の代わりにモンスターの命を刈ってくれて。シークレットガール、ありがとう。)
(ムリ、シナイ)
(……うん。)
「や〜誰だったんだろうね、あの娘?」
そんなことを言いながら、ベルン団長が近づいてきます。ちょっとニヤついているのが気になりますが、あえて気にしないことにします。
「さあ?通りすがりの勇者だったんじゃない?」
「勇者、かあ。そう言えばそんなうわさ話、聞きいたなあ。」
こちらのとぼけに乗ってくれたようです。
「終わったんだ、そんな怖い顔するな。」
頭をクシャクシャされました。どうも気を使ってくれていたようです。ちょっと照れ臭いのではねのけましたが。
しかし、どうにもこんなちょいワルイケメンで、判断力が素晴らしく、いざというときに頼りになるタイプはいろいろな意味でずるい気がします。人間としては好きなんですが男としてはキライです。
「依頼完了だ、帰ろう。」
「はい。」
早く帰りたいと思う私は、まだまだ未熟なんでしょうか。
戦闘をどのくらい描写するか、いつも悩みます。
次のエピソードからヒロインを出したいです、実体のあるヒロインです(^-^)/




