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30話 初仕事は幽霊退治(後編)

続きをどうぞ。



秋の夜は、けっこう冷えます。ましてや行き先が幽霊がいる廃墟ともなると余計にそう感じるのかもしれません。


私、シオン・ブロッサムはアイロネの魔法使いとしての初仕事のために”現場”に向かっています。幽霊退治のために向かっている人数は7名です。

私を含め新しく精霊の加護を得た3名の新人、その付き添いの3名、そしてテレサ長老になります。

私の付き添いはもちろんミスティ教官です。全員フード付きのマントを身につけて杖を持ち、頭上に”火玉”を浮かべています。この一行を小さい子が見たら眠れなくなるのではないかと思わなくもないです(笑)。


廃屋に着くと、テレサ長老がフードを外して金髪の髪をふわっと外に出しました。そして魔法を使うときの独特な青い光に包まれます。


結界クロージングフィールド


テレサ長老から放たれた青い光が廃屋を包みます。その魔法の美しさ、力強さに圧倒されぽかんと口を開けてしまいました。

すごいです、これは極大呪文。守護精霊がさらに上位の精霊に協力を依頼して発動する広範囲呪文です。北伐に参加する魔法使いに必要不可欠な魔法です、始めて見ました。


「さあ皆さん、ゴーストを退治してきてね。新人さんは先輩の指示に決して逆らわないこと、いいわね?」


私はテレサ長老に頷くとミスティ教官を見上げました。


「妖精シークレットガールに防御を依頼しなさい、いくわよ。」

「はい。」


(シークレットガール!ゴーストからの防御、頼むね。)

(……スルケド。)



なんとも不安な回答、大丈夫かな。

実は、私自身もフラッシュバックの影響でかなりヘロヘロなんです。


そうこうしながらも3組のゴースト討伐隊は慎重に廃屋に近づきます。王都近郊にあるこの廃墟は、撤去して新しい屋敷を作ろうとした建設業者が近づいたらゴーストがいたとのこと。そのために退治の依頼がアイロネの魔法使い宛に来たのです。


「近くにいるわよ、浄化の炎を用意して。」

「はい。」


精霊、妖精の守護を得て、魔法の力はとても強くなりました。そして、強くなっただけでなく色々と出来るようになったことがあります。それがこの”浄化の炎”の呪文で、霊体だけを焼く炎の呪文です。

下手な新人は制御を失敗して物質も焼いてしまうので廃墟でないと危険です。私は練習では問題なく出来ました。ただ、実際に霊体に使ったわけでないので効果があるのかないのか、気になるところです。


ガタガタ!

カン!


私の周りからレンガの破片が飛んできましたが、シークレットガールが弾いてくれました。ゴースト攻撃のひとつ、念動術です。他に体当たり(メンタルアタック)と憑依があります。

くっ、私、思った以上に反応が鈍いです。


「左!」


ハッとして私の左側にある廃墟の壁を見ると、鬼のように顔を歪ませた男のゴーストがにゅるりと出てくるところでした。いけない!と思いましたが身体がうまく反応してくれあず、回避が間に合わずに体当たりを受けてしまいました。



精神にこの男の人のものと思われる”死”の記憶が流れ込んできました。

これは……


(キミハ…オシエテクレ……)


振り向くと、私の体当たりした男の幽霊がすぐ近くに浮かんでいました。その顔からは憎悪の気配が消え戸惑っているようにも、何かを望んでいるようにも見えました。


「今、僕は幸せです。あなたは逝くべきだと思います。」


なぜか、無意識にそんな言葉が口から出ました。私は両手のひらの上にポッと炎を作り出し、男のゴーストに差し出しました。


男のゴーストはしばらく迷っていた様子でしたが、意を決したように炎の中に身を投じました。半透明の身体が一瞬だけ金色に輝き、消えてしまいました。最後に一瞬だけ男の顔が笑ったように見えたのは錯覚でしょうか。


「大丈夫か?」

「はい、何ともありません。」

「……そうか。だが、もう戻ろう。」

「ミスティ教官、続けさせてくれませんか?」

「ダメだ、無理はさせられない。」

「僕は始め、初仕事だからと気合をいれてました。でも、この仕事の意味を考えていませんでした。子供でした。

ゴーストはモンスターではありません、倒すものではなかったんです。

彼らは、さまよえる魂は愛を持って送るべきなんです。」


ミスティ教官はしばらく私の顔を見つめたあと、


「私がそれに気が付いたのはそんなに昔ではありません。いいでしょう無理をしなさい。その代わり私が無理をさせませんから。」


矛盾したコトを言いながらミスティ教官は、私を抱きかかえました。


「浄化のみに専念しなさい。」

「で、でも」

「でもは無し!」


・・・


こうして、無事に私の初仕事は終わりました。お姫様抱っこされたまま……。




帰り道、シークレットガールに礼を言いました。


(シークレットガール、ありがとう。君が僕の前世の記憶を見たいって言ったのは、僕に”死”の意味を教えるため、思い出させるためだったんでしょ?

本当に危険なのはゴーストそのものではなく、危険なのは僕の心の持ち方だって。)

(ナイショ、ナイショ、ナイショナノ。デモ、)


シークレットガールは私の前に姿を現して、唇に指を当てながら、


(キミ、ホント二、ケイヤク、シテアゲル)

(え?ええ?じゃあなに?今までは?)

(タダ、チカクデ、サワッテタ、ダケ)

(え〜!!!!!!!)

(ナイショ、タノシイ♪)


”シークレットガールはナイショが大好き”だと、このとき初めて実感しました。


ゴーストがモンスターという分類に疑問を感じていた作者でした。


ゲームなどでも、この辺り割り切れない私は頭が堅いのかもしれません。


ps.シークレットガールはからかっているだけで契約は成立しています(笑)

皆様のご感想いただけたらと思います。


また、次のエピソードのためにお時間をください。予定(未定)では、ちょっとだけ時を経過させてシオンと同年齢のヒロインを出したいと思ってます。

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