3話 ちちうえあてのてがみ
「ええと…ちちうえ、おげんきですか、しおんはだんあにうえと、まいにちけんのしゅぎょうにいそしんでいます、っと!」
今、私は自室で書き物をしています。
朝食をとったあと、ダン兄と遊ぶはずだったのですが母上に呼び止められてしまいました。
明日、母上が王都にいる父上のところに行くので”手紙を書くように”と言われたのです。
ダン兄は今、母上に付き添ってもらって手紙を書いています…監視されているともいふ(笑)。
私にはセバスがつきました。
「いやはや…」
「ん?セバス〜、どこか間違ってる?」
「いえ、 どこも間違っておりません。字も大変お上手です。」
「じゃあ?」
「シオン様、5歳児の内容ではありません。内容が良すぎます…書き直しを。」
「え〜。」
「ダン様のお立場をお考え下さい。」
む?確かに、ダン兄はまだマトモな文章が書けなかったよね。
脳筋系だし(笑)。
「表現は抑えたつもりだったんだけどなぁ…でもそうだね、ありがとう!」
急いで書き直すことにした。
…ところで、このような問答を5歳児と初老の執事がするのは、普通おかしいと思いませんか?
そうです、”セバスだけ”は私の秘密を知っているのです。
私はセバスにだけは全く違う世界で生きていた前世の記憶がある”転生者”であることを打ち明けています。
私が前世の記憶があると認識したのは1年ほど前のこと…悩んだ末にセバスに打ち明けました。
セバスには本当に感謝しています。
私の話しを“そういうここもあるのかもしれせん”と、さらりと信じてくれました。
その上で私がどうやって生きていくべきかの助言をくれました。
前世の記憶のことは、セバスの助言に従い、まだ両親にも秘密にしています。
それ故にこんな会話が成立するのです。
よし、字の綺麗さは父上に知られているので内容のほうを変えましょう…ダン兄様に勇者ごっこで負けてくやしいです…うんぬん…マルと。
「まだ良すぎます…あなた様は5歳なのですよ。…書き直しを。」
セバス、あなた結構厳しいですよ。
セバスはシオンの心の緩衝材です。
大人の知識と子供の精神を持つシオンは、彼によって支えられています。