第三話 事件
俺は春日と学校に来た。
春日と一緒に学校に来るのは入学式の次の日から。
春日が俺の家に迎えに来てくれるからだ。
今は四月十二日。
入学式の日から一週間が経った。
◆登校中
「本当に今日なんだな?」
「あぁ、間違いない。
今日かならず俺等のクラスで事件が起きる」
「犯人は?」
耕助と春日は真剣に話をしていた。
二人はなぜか笑っていた。
「犯人はわからない。事件が起きたときに反応があるんだ」
「まぁ、良いや。
俺の観察力で証拠を見つけだせれば、春日の反応で確信をもてる。
やっぱり俺と春日がいれば何も恐くない」
「油断だけはするなよ?
一瞬の油断が観察力を鈍らせる」
「おっ、たまには良いこと言うじゃねぇか。
成長したな、春日」
「当たり前じゃ〜ん。
俺は天下の春日さまだぜ?」
「調子に乗りすぎだ」
今日事件が起きるというのに二人は余裕の表情を浮かべていた。
事件が起きるまでは…
◆事件発生
「証拠が無いんじゃ俺様は捕まえられないんじゃないか?
証拠不十分だろ?
それに犯行手段がわからないんだったらなおさら俺以外にも人を殺せるやつが居るんじゃないのか?」
「………………っく」
なんなんだこいつ?
春日の反応から犯人はこいつ以外に考えられないのに…
証拠が一つもない…
それに殺す動機だってない。
いったいどうやって殺したんだ?
俺の目の前で殺人が起こったのに…
「耕助…………ごめん」
「春日は悪くないよ。
だから、謝らないでくれよ」
耕助と春日の顔からはいつもの余裕の表情が完全に消えていた。
「俺の名前は川上零
いつかまた殺人ゲームをしようぜ、耕助と春日くん」
そう言い残して川上零は煙幕と共に姿を消した…
耕助と春日は無くなった被害者に泣きながら謝った。
クラスのみんなも一緒に泣いて、クラスは悲しい空気で包まれた。
中には川上零を恨む者も多数いた。
川上零とは耕助や春日と同じクラスであまり目立たなかった存在だ。
春日は犯行が起きたときにしか犯人がわからない。
そのため、二人は教室にいた人を観察して犯行を事前に防ごうとしていた。
事件が起きたときに零が犯人だと春日が言ったので、耕助は零のアリバイを解き、証拠を見つけだそうと自身の力をすべて使いきったつもりだった。
しかし、証拠は一つも出なかった。
教室という狭い空間にたくさんの人がいる時に堂々と殺人をしたので、耕助もあせり、本来の推理ができなかったのだ。
それでも、耕助はあきらめず証拠を探した。
二人は被害者の敵討ちができなかったことと、自分達が油断していたことを心から謝り、家へと帰った。
そして、二人は学校に顔をださなくなった…
◆学校にて
「今日も耕助と春日は休みか。
二人には心から同情するよ。
目の前でクラスメイトが殺されたのに、犯人を捕まえることができなかったんだから。
明日、被害者のお葬式をやります。
このクラスの全員でお葬式に行きます。
耕助君と春日君には私から電話で伝えておきます。
それでは、今日はもう帰っていいです」
プルルルルルルル
耕助の家に電話がかかってきた。
「はい、紅神耕助です」
「今から学校に来てくれないかな?
ちょっと話がしたくて」
耕助は元気の無い声で、今から学校に行くと返事をして、学校へと向かった。
学校に向かっている途中、春日に会った。
「耕助も、先生に呼ばれたのか?」
春日もかなり元気が無かった。
耕助は電話の内容を春日に伝えた。
春日も電話の内容を耕助に伝えて、二人は学校に着いた。