第一話 些細な事件
「それでは皆さん、自己紹介をお願いします。
まずは、中谷春日君から」
担任の先生が自己紹介する人を指名した。
すると、中谷春日と思われる人物が立ち上がり自己紹介を始めた。
「中谷春日です。
部活は入る予定はありません。
高校生活の目標は友達を百人作る事です。
俺は探偵をやっています。そして、俺の勘が正しければこの中に、犯人がいます!
詳しい意味はいずれ俺が皆さんに話しましょう」
…クラスに沈黙が訪れた…
しかし、先生は自己紹介をしてください、と他の人を指名した。
…しばらく自己紹介が続いて、俺の番が来た。
「紅神耕助です。
よろしくお願いします」
簡潔に自己紹介をすませて、席に座った」
キーンコーン
授業が終わった。
それにしても何だったんだ?中谷春日という奴は…
受け狙いだったのか?
探偵って言ってたけど…
それに、犯人がこの中にいるとはどういう意味なんだ?
深い意味はないのか?
ただの受け狙いか。
今日の学校は午前中帰りだった。
そして、帰りの会の途中…
「あ、あたしの財布がない」
その声を聞き、クラスの人が騒ぎだした。
そして、落ち着いた声で春日が話しはじめた。
「まぁ、皆さん落ち着いてください。
俺が捜し出しましょう。あなたは、学校に来てから一度も教室を出ていませんね?で、財布はどこにしまっておいたんですか?」
「カバンの横に袋を縛り付けていて、その袋のなかに財布をしまっておきました」
「そうですか。見たところ袋ごと無くなっていますね。困ったな〜」
春日が困っていたようなので俺が話しはじめた
「財布の重さはどれくらいでしたか?」
「重さ?小銭が結構入っていてかなり重かったです」
「おい、そんなこと聞いてどうするんだ?え〜と」
「紅神耕助、まぁゆっくり見てな。
ところで、最後に財布を見たのはいつですか?」
「はい、登校していたときに確認して、教室に着いたときに確認しました。
それからカバンをロッカーの上に置きました。
置いたときは確認しませんでしたが」
「つまり、誰にでも取るチャンスはあったわけだな?耕助!」
「チャンスはないぜ。
教室という空間でカバンから財布を取る事ができるのはみんなの目線がないとき。
俺はずっと教室にいたからわかるんだ。
あやしいやつが居れば俺が気付く」
「じゃあ、いったい誰が?」
「冴えてないな、探偵さん。
彼女はカバンをロッカーの上に置いた。
そして、財布は結構重かった。
教室にあやしいやつは居なかった。
ここまで言えばわかるか?」
「そうか!ロッカーの裏か!」
「正解だ。じゃあ彼女に返してやれ、春日」
「了解!
よいしょ、うし!
はい、今度は気を付けてな」
「あの、二人ともありがとうございました」
もう帰る時間をとっくに過ぎてしまったな。
「では皆さん。もう下校時間になりますのですみやかに帰ってください」
◆下校中
「お前ってすごいんだな!耕助!」
でかい声でいきなり声をかけられたので驚いた。
「なんだよ、びっくりしたじゃねぇか。って春日!」
「悪い悪い、いつからロッカーの裏に財布があるって気が付いてた?」
「彼女が財布がないって言ってから少し経ったときだ」
「マジで?でも、財布の重さは関係あったのか?
耕助のヒントを頼りにして、ロッカーの裏だと思ったんだけど、財布の重さは関係ないんじゃないのか?」
「見なかったのか?
カバンの横。袋をかけるところが壊れていたんだ。
軽いものなら問題はないんだが、小銭混じりの財布を支える程の力はなかったのさ。
登校中は落ちなかったが、カバンを置いたときに落ちた。
登校は主に横揺れで、
カバンを置くときは縦に激しく揺れる。
つまり、登校中には落ちないんだ。激しく走らなければな」
「そうか、やっぱり耕助はすごいな!」
「春日も探偵なんだろ?」
「も、てことは耕助は探偵なのか?」
「まぁ、探偵の端くれかな」
「ははははは」