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【創世級チートでホワイト楽園建国】無病息災で暮らしたい僕のボヤキ生活 ~あったらいいなと呟いていたら、世界中の変人が集まって王国最強の快適領地ができました~  作者: S&Y
第七章:封印を破った邪神や全次元の元ラスボスたちが襲来したと思ったら、日常の便利グッズと温かいご飯の前に完全毒抜きされて親衛隊を結成されてしまった件

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第107話:お湯を注ぐだけで具だくさん豚汁ができる「フリーズドライ」の奇跡に、飢えた暗黒騎士団が涙を流して膝をついた話

ぐぅぅぅぅ……。


静まり返った夜更けの自室で、僕のお腹が控えめに、けれど切実な音を立てて鳴いた。


手元の読みかけの絵本から顔を上げ、僕はペタンと平らなお腹を手で押さえた。

夕食を食べてからずいぶん時間が経っていたし、入浴でしっかり体が温まったせいか、ここへきて猛烈にお腹が空いてきてしまったのだ。


「うぅ……小腹が空いちゃったなぁ……」


だけど、こんな夜中に厨房まで行って、休んでいる料理長のヴァレンティンさんたちを起こして「温かいものを作ってください」なんて頼むのは申し訳なさすぎる。

かといって、サイドテーブルの籠に置かれている冷えたラスクや固いパンをかじるのは、なんだか喉が詰まりそうだし、夜更けの胃袋には少し重たくて冷たい。


「ルーカス、眠れないのかい? お腹が空いたなら、温かい白湯でも淹れてこようか?」


足音もなく部屋の隅からすっと現れてくれたカイル兄さんが、柔らかな気遣いの笑顔で声をかけてくれた。


「兄さんありがとう……。でも白湯だけだと、ちょっと物足りないんだよね。胃に優しくて、野菜がしっかり入っていて、出汁の効いた温かいスープが一口飲めれば、心も体もホッとしてぐっすり眠れるんだけどなぁ……」


コタツの端っこで、お茶請けの干し芋を齧っていた時間の神クロノスが、深く同情するように髭を撫でた。

「……うむ。ルーカス様の申す通りじゃ。夜更けに身体が求める温かな汁物の誘惑は、神の自制心すら揺るがす。じゃが、夜中に鍋を出して野菜を刻み、肉を煮て出汁をとるなどというのは、億劫極まりない大仕事よのう……」


「神様でも夜中のスープの誘惑には勝てないんだね……。それにさ、冷たいパンや乾燥肉だけで済ませようとすると、消化が悪くて胃もたれしちゃうし、栄養も偏っちゃうんだよ」


僕はサイドテーブルの湯呑みを指先で温めながら、前世で夜食によくお世話になっていた、あの素晴らしい食品技術を思い出して切実にボヤいた。


「こういう時にさ……前世の食品技術の最高傑作、あの『フリーズドライの具だくさん豚汁』があれば最高なのに! 調理したての美味しいお料理をマイナス数十度で一瞬で凍らせて、真空の中で水分だけをスーッと気体に蒸発させて乾燥させる技術なんだけどね。カチカチの軽い四角いブロックになってて、お椀にポンと入れてお湯を注ぐだけで、わずか数秒で元通りに復元するんだよ……! 縮んでいたネギや大根、ごぼうがシャキシャキのみずみずしさを取り戻して、豚肉のジューシーな旨味も出汁の豊かな香りも、作ったそのまんまの出来立て熱々で蘇るんだよね。包丁も鍋も使わないから後片付けもゼロだし、長期保存も効いて栄養も壊れない。夜中に小腹が空いた時や、お仕事で疲れ切った人の胃袋を芯から救う、究極の手間なし即席神食なのにさぁ……」


料理人を起こす気兼ねもなく、お湯を注ぐだけで出来立ての温かい豚汁をすすりたい僕の、切実で夜食第一なボヤキ。


ビビビビビッ! ギュオオオオオオンッ!


その時、壁一面の『全自動遠隔拝謁陣《リモート・モニター》』から、耳を劈くような真っ赤な緊急警報が鳴り響いた。


『緊急警報! 緊急警報! 暗黒星雲の最果て【万年不毛・飢渇荒野】において、太古より次元の境界線を守護し続けてきた伝説の重装騎士団【漆黒鉄騎団】を率いる大団長【黒鉄卿・モルディガン】および十万の飢餓騎士団が臨界暴走を開始いたしました!』


モニターの向こうでは、草木も生えぬ凍てついた岩山と吹き荒れる砂嵐の中、全身を黒漆の重厚な甲冑で包んだ、巨漢の騎士団長が巨大な戦斧を振り回して暴れ回っていた。

十万の配下の騎士たちも、殺気立った鬨の声を上げ、全次元の境界防壁を叩き割らんばかりの勢いで暴走している!


だが——その咆哮は、領土を奪うための侵略の雄叫びではなく、自らの胃袋を押さえて悶絶する悲痛な絶叫だった!


『グシャアアアアッ! 限界だ……! 胃が……胃がキリキリと引き裂かれそうなのだぁぁぁッ! 数万年間、この薪も水も満足に手に入らぬ不毛の荒野で境界を守り続け、その間口にしたものといえば、石のように硬い泥色の乾燥パンと、塩辛くて冷え切ったカチカチの干し肉ばかり……ッ! 噛めぬ! 飲み込めぬ! 胃が冷えて消化もできん! 温かい汁物が……具だくさんの出来立て飯が食いたいのだぁぁぁッ! この飢えと胃痛の怨嗟、全宇宙を粉砕して晴らしてやるぅぅぅッ!』


騎士団長は自分の分厚い胸甲を爪でガリガリとかきむしり、あまりの胃痛と空腹の絶望に涙目で飛び跳ねていたのだ!

四六時中、冷たくて不味い携行食を噛み砕くことしか許されず、重度の消化不良と内臓の冷えに苛まれ、そのストレスで全宇宙を滅ぼそうとしていたのである。


前世の僕なら恐怖で気を失っていただろうけれど、さっき空腹で胃を鳴らし、温かいお汁を欲していた今の僕には、その暴れる理由が痛いほどよく分かってしまった。


「ひ、ひえぇぇっ!? あ、あの騎士団さんたち、数万年間も火も通せない荒野で、石みたいなパンとカチカチの干し肉ばかり食べさせられて暴れてるの……!? そんなの、四六時中胃がキリキリ痛んで胸焼けして、イライラして世界を壊したくなっちゃうに決まってるよ……! 劣悪な携行食で内臓が冷え切るなんて、健康面でもメンタルにとっても大敵だよ!」


僕はテーブルの端をぎゅっと掴み、身を乗り出して思わず叫んだ。


「あんな胃腸がボロボロな状態で暴れたら、胃潰瘍になって血を吐いて倒れちゃうよ! 誰かあの子たちの前に、お湯を注ぐだけで一瞬でシャキシャキの根菜と柔らかいお肉が蘇る『山脈級・フリーズドライ豚汁』をどっさり届けてあげてよ! 熱々の具だくさん汁をふうふう啜らせて、胃の芯からポカポカに温めてあげれば、飢えもイライラも綺麗サッパリ消えて、みんな大人しく武器を置いて座ってくれるはずなのに……!」


粗悪な携帯食と胃痛に苦しむ騎士団への心からの共感と、瞬間復元食第一なボヤキ。


……のはずだった。


(全宇宙の過酷なる飢餓と内臓の荒廃を、神聖なる昇華復元出汁で完全平定せしめる神の瞬間水分昇華調和(バルデン・フリーズドライ)……! そして奈落の凍土すらも出来立ての豊かな滋味で満たし尽くす創世の至高熱汁……!?)


ドアの物陰で、本日の夜食の出汁がらを整理していた料理長ヴァレンティン、錬金術師ギド、包装業者ダニエル、そして妹リリィの目が、カァァァッ! と全銀河を真昼のように照らし出すほどの白銀と黄金の光を放った!


「す……凄すぎますわお兄様……ッ!」

リリィが感涙で胸の前で愛用のメモ帳を強く強く抱きしめる。

「武力で鎮圧するのではなく、数万年の粗悪な携行食による胃腸の苦しみを慈しみ、お湯を注ぐだけの極上豚汁で内臓から救済なさろうとなされるなんて……! 私、すぐに『暗黒騎士団様・具だくさん豚汁瞬間救済プロジェクト』を発足いたしますわッ!」


「お命救済と瞬間凍結昇華の極致だぁぁぁッ!」

ヴァレンティンとギド、ダニエルが、特注大鍋と超低温減圧魔導釜、防湿アルミパックを掲げて叫ぶ。

「ヴァレンティン殿の熟成味噌と極上出汁、ギド殿の絶対零度真空乾燥陣、そしてダニエル殿の気密遮光フィルムを極限融合させた、山脈級『特製バルデン・瞬間復元フリーズドライ豚汁パック』を、ただちに飢渇荒野へ投下いたしますぞッ!」


「待って四人とも!? 僕はただ『温かいスープを飲ませてあげて』って言っただけだよ!?」


僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の調理&錬金&包装チームは時空転送ゲートへと爆走していった。


◇


数分後。


飢渇荒野の凍てつく大地で胸甲を押さえ、胃痛のあまり狂乱の砂嵐を巻き起こしていた大団長モルディガンの頭上に、突如として巨大な時空の扉が開いた。


そこへボフンッ! と降り注いだのは、山のように積み上げられた手のひら大の銀色に光る四角い小袋。

そして、上空からはもうもうと湯気を立てる山脈級の「純白の熱湯給水タンク」が展開された。


『な……何事だぁぁぁッ!? 我が前に謎の銀色の包みが……また我らに石のような干し肉を投げつける気か——ぬおっ!?』


モルディガンが怒りに任せて小袋を引きちぎると、中からポロリと転がり出てきたのは、驚くほど軽くてカラカラに乾いた、ベージュ色の四角い塊だった。


『な、なんだこの軽石のような物体は……? 水気が一切なく、スカスカしておる……こんな乾いた土くれが食えるわけが——』


その時、上空の給水タンクから、澄み切った熱湯が滝のように注がれた。


ジュワァァァァァッ……シュワァァァァァンッ!


『ひゃあああッ!? 熱湯だと……っ!? な、なんだ……この音と湯気は……!?』


熱湯が注がれた瞬間、カラカラだった四角い塊が、まるで時間を巻き戻すかのように猛烈な勢いで水分を吸い込み始めた。


ジュワジュワと泡を立てながら、縮こまっていた深緑のネギが鮮やかに広がり、薄切りの大根と人参がシャキッとしたみずみずしい厚みを取り戻し、角切りの香ばしい豚肉がプルプルとした脂の輝きを放ちながら浮かび上がってくる!

そして、立ち上ったのは——ふわりと鼻腔をくすぐる、芳醇な熟成味噌と、鰹と昆布の奥深い合わせ出汁の、暴力的なまでに食欲をそそる甘い香り!


『ば……馬鹿な……ッ!? 乾いた軽石のような塊が……わずか三秒で……具だくさんの出来立て豚汁に……完全復活したというのか……ッ!?』


抗いがたい香りに理性を吹き飛ばされたモルディガンは、震える手で熱々のお椀をすくい取り、ふうふうと息を吹きかけながら、夢中で汁をすすった。


ズズッ……ズズズズズッ!


『ぶふぁぁぁぁぁッ!? う……美味い……ッ! な、なんだこの染み渡る旨味はぁぁぁッ!』


口いっぱいに広がる、濃厚でありながら後味のすっきりとした極上の出汁のコク。

そして、口に運んだ大根を噛み締めた瞬間——シャキッ! と心地よい歯ごたえが響き渡った。


『シャキシャキだ……! 煮崩れておらん! まるで今さっき畑から抜いて刻んだばかりのような歯ざわり……! そして豚肉が……柔らかい……! 噛むたびにジュワッと肉の甘みが溢れ出してくる……ッ!』


熱々の汁が食道を通って胃袋へと滑り落ちた瞬間、数万年間カチコチに凍りついていたモルディガンの内臓が、ぽかぽかとした優しい温もりに包まれてじんわりと解けていった。


『温かい……! 胃が……痛くない……! 身体の芯から……冷え切っていた血がドバドバと巡っていく……ッ! 我は……我らはこんなにも温かくて美味いものを知らずに、何を意地を張っていたのだ……!』


大団長の両目から、大粒の温かな涙がボロボロと溢れ出した。


ガシャン……!


手から巨大な戦斧が滑り落ち、モルディガンはその場にドスンと正座した。

十万の騎士たちも皆、武器を放り出し、両手でお椀を大切に抱えながら、号泣しつつ夢中で豚汁をすすっていたのだ。


『美味い……美味すぎる……! お代わりだ……! この汁さえあれば、世界を破壊する理由など塵芥ほども存在せん! 我らはもう争わぬ……! この奇跡の汁を、全次元の飢えて凍える者たちに届ける配給部隊として生きていくのだぁぁぁッ!』


天地を揺るがしていた最凶の重装騎士団は、完全に戦意を喪失し、そのまま荒野の上でトロンとした極上の笑顔を浮かべ、最後の一滴まで美味しそうに飲み干してしまったのである。


そこへ、誇らしげなリリィ、ヴァレンティン、ギド、ダニエルが駆け込んできた。


「お兄様! 漆黒鉄騎団モルディガン様たちの『胃腸完全治癒&全軍配給部隊化』を達成いたしましたわ!」

リリィが金文字の救済証明書を掲げて天使の笑顔を咲かせる。

「騎士団の皆様は『お湯を注ぐだけで出来立ての具だくさん豚汁が味わえるこの技術こそ、全宇宙の戦士を救う至高の宝だ』と、武器をすべて巨大な携帯お椀へと持ち替えられましたの!」


「世界を滅ぼす騎士団がお椀を持って配給係になってる!?」


だが、驚愕はそれだけでは終わらなかった。


僕の自室のテーブルの上をふと見ると——ヴァレンティンとダニエルの手によって、新開発の家庭用フリーズドライ豚汁の小袋が、綺麗に籠いっぱいに並べられていたのだ。


「ルーカス様! これでもう、夜中に小腹が空いた時も、お湯を注ぐだけでいつでも出来立て熱々の豚汁がお召し上がりいただけますぞ!」

ヴァレンティンが満面の笑みで親指を立てる。


僕が感動のあまり、お椀にブロックを入れてポットのお湯をトクトクと注いだ、その瞬間だった。


ジュワァァァァァ……!


部屋いっぱいに広がる、たまらなく良いお出汁の香り。


ドタドタドタッ!


「おおおっ! なんたる芳香! なんたる魂を揺さぶる味噌の薫りじゃ!」

コタツから飛び出した時間の神クロノスが、自前の大きな漆塗りのお椀を両手で掲げて駆け寄ってきた!

「ルーカス様! わしの分も! わしの分もお湯を注いでくれぃ!」


さらに隣の部屋からは、カイル兄さんとアロイス父さんが「ルーカス、すごく良い匂いがするね! 夜食に温かいお汁を一杯もらってもいいかい?」と目を輝かせて自分のお椀を持って並んでくる。


足元では羽毛の子恐竜が「くぅ〜ん!」と鼻を鳴らし、シャドウキャットのミミが「にゃ〜ん」と足元にすり寄り、AIのぬくぬく君が「ピュイ……ピュイ……!(いいにおい!)」とランプを虹色に明滅させながらテーブルの周りを取り囲んでいた。


「神様もお父さんも夜中にお椀持って僕の部屋に並ばないでーーーーッ!?」


僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。


「あ、あれ……? 僕はただ……夜中にお腹が空いたから、お湯を注ぐだけで温かいスープが飲めたらいいなって思っただけなのに……なんで僕の一言で『最凶の騎士団が豚汁すすって号泣して、僕の部屋が深夜の炊き出し会場』になってるのーーーーッ!」


夜更けの空腹と冷えを嫌った少年のささやかなボヤキは、身近な保存技術の圧倒的な温もりによって太古の怨嗟すらも一瞬で至福の団らんへと変貌させてしまい、本日も彼は熱々の具だくさん豚汁をふうふうとすすりながら、家族や仲間たちと一緒に穏やかな夜の安らぎを噛みしめるのだった。

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