想い焦がれた恋人の、端っこ 07
[BL] 想い焦がれた恋人の、端っこ
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第七部:セヒの追跡
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テオとドルセは、お互いの心を確認し、険しいが平和な山の中で、新しい人生の錨を上げた。彼らの決断は、単純な逃亡ではなく、長い間抑圧されてきた本当の自分を探しに出る旅だった。過去の束縛を脱ぎ捨て、前へ進もうとする切ない希望が、彼らの一歩一歩に宿っていた。
山の中での日常は、都会の華やかさとはかけ離れていたが、その中には素朴で温かい幸せが宿っていた。毎朝、テオは眩しい日差しに目を覚まし、新しい一日を迎えた。彼はドルセと一緒に森を歩きながら木を切り、澄んだ渓谷で魚を捕まえ、自然と一つになる喜びを満喫した。小さな山小屋を自らの手で建て、手入れをしながら、彼らはお互いの存在がどれほど大切かを、毎瞬、悟っていった。
しかし、彼らの幸せは完璧ではなかった。心の一角には、いつも不安感が影のように差し込んでいた。セヒの存在は、テオに拭い去ることのできない罪悪感を抱かせ、彼女が自分たちを探しに来るかもしれないという考えは、彼を絶えず苦しめた。ドルセはテオの不安を察知し、彼を慰めようと努めたが、彼の心の中の奥深くに根付いた罪悪感は、簡単に消えなかった。
ある日、テオとドルセは、いつものように澄んだ川辺で時間を過ごしていた。ドルセは器用な腕前で水の中を泳ぎ、テオに魚を捕まえてみろと、からかいを仕掛けた。彼の活気ある笑い声は、森の中の静寂を打ち破り、テオの心をしばらくの間、安らかにさせてくれた。
「お坊ちゃま、魚を捕まえるのはこうするのですよ!」
ドルセは水中で腕を振り回し、器用に魚を捕まえるふりをした。彼の顔にはいたずら心が満ちており、彼の目はテオへの愛情で輝いていた。テオはそんなドルセを見つめ、微笑んだ。彼の顔には久しぶりに本当の幸せが宿っていた。
「お前がそんなに上手に捕まえられるなら、俺も一度習ってみなければならないな。」
テオは笑ってドルセに応えた。
彼は魚の捕まえ方を習うふりをしながら、ドルセに近づき、彼の肩に腕を回した。彼らは互いの温もりを感じながら、しばらくの間、言葉もなく川辺を見つめた。
しかし、平和な瞬間は長くは続かなかった。テオはふとセヒの存在を思い出し、重い沈黙に包まれた。彼はセヒが自分たちを探しているかもしれないという考えに、不安を感じた。
「ドルセ、もしかしたらセヒが俺たちを探しているかもしれない。」
テオは慎重に言った。彼の声は微かに震えており、彼の目には不安が満ちていた。ドルセはテオの不安な表情を読み取り、彼の肩を抱きしめて慰めた。
「お坊ちゃま、私とご一緒でしたら、どんなことがあってもお坊ちゃまをお守りいたします。」
ドルセの断固とした声は、テオに小さな安らぎを与えた。しかし、テオは依然として心の中の奥深くに存在する不安感を振り払うことができなかった。セヒはテオの婚約者であり、彼らの家門は深い関係を結んでいた。テオはセヒに拭い去ることのできない傷を与えたという罪悪感に苦しんでいた。
「ドルセ、俺はセヒにあまりにも大きな過ちを犯してしまった。彼女は俺を信じて従ったのに…」
テオは言葉を続けることができず、うつむいた。彼は自分の行動がどれほど利己的であったかを悟り、苦しんだ。ドルセはテオの手を握り、彼の目を見つめながら、本心を込めて言った。
「お坊ちゃま、私がいつまでもそばにおります。ですから、あまりご心配なさらないでください。」
ドルセの言葉は、テオに深い響きを与えた。彼はドルセの温かい慰めに力を得て、もう一度勇気を出すことを決意した。しかし、セヒの存在は、いつも彼らの間に影のように差し込んでいた。
一方、セヒはテオが突然姿を消した後、大きな衝撃に陥った。彼女はテオが自分を捨てて去ったという事実を信じることができなかった。彼女はテオを心から愛しており、彼との未来を夢見ていた。テオが婚礼を数日後に控えて姿を消したという知らせを聞いた時、彼女はまるで世界が崩れるかのような絶望感を感じた。
セヒは、テオがなぜ自分から去るしかなかったのか、理解することができなかった。
彼女はテオの行方を追い始めた。彼女は下男たちに命じて、テオの周囲の人々を尋問させ、彼の最後の足取りを追跡させた。しかし、下男たちはテオの行方について知ることはなかった。テオが婚礼を控えて姿を消したという事実は、彼らにとっても大きな衝撃だった。
セヒはテオとの幼い頃の思い出を思い出し、彼を探すために孤軍奮闘した。彼女はテオが時々、山の中へ向かうことがあったという記憶を思い出した。テオは幼い頃から自然が好きで、息苦しいことがあると、しばしば山の中へ入って心を癒していた。
「山の中…そこなら…」
セヒの心の中で何かがひらめいた。彼女は、テオがドルセと一緒に山の中で新しい人生を始めた可能性が高いと考えた。ドルセはテオのそばを長い間、黙々と守ってきた忠実な下男だった。セヒは、テオがドルセに頼っているかもしれないと思った。
「そうだ、そこへ行ってみなければ。」
セヒは決断を下した。彼女はすぐに自分の下男たちに、一緒に行く者たちを集めるように命じた。彼女はテオを探すために山の中へ向かう道に、決然とした意志を見せた。セヒはテオを愛する気持ちと、彼を守りたい気持ちで満ちていた。彼女はテオがどんな選択をしたとしても、彼を理解し、彼のそばを守ってあげたかった。
セヒは山の中へ向かう道を探すために、徹底的に準備した。彼女は必要な品物を揃え、同行する人々を几帳面に選抜した。彼女の心の中には、不安な感情とともに、テオに再び会えるという希望が混ざり合っていた。彼女はテオが無事であることを切に願っていた。
「あなたたちにお願いがある。私と一緒に、必ずお坊ちゃまを探しに行きましょう。何があっても、必ず見つけなければならないわ。」
セヒは下男たちに断固として命じた。彼女の目は決意で満ちていた。下男たちはセヒの強烈な意志に感嘆し、彼女の命令に従うことを誓った。
「はい、お嬢様!」
セヒは下男たちと一緒に、テオが残した痕跡を探しに出かけた。
彼女の心の中には、テオがドルセと一緒に幸せに過ごしている姿が浮かんだが、彼らの関係を完全に理解することはできなかった。彼女はテオを愛しており、彼を守るためには何でもできると信じていた。
セヒは山の中へ向かう険しい道に沿って歩いた。彼女は下男たちと一緒に深い森の中へ入っていった。生い茂った木々の間から、かすかに差し込む日差しが彼らの旅を照らし、小さな動物たちが時々現れて、彼らを迎えた。セヒは心の中の不安と恐怖を懸命に隠しながら、テオを探すという希望を失わないように努力した。
彼らは山の中の奥深くへと向かっていきながら、テオが住んでいると思われる場所をくまなく探した。セヒは、ドルセとテオがお互いのそばにいるという事実が、依然として信じられなかった。彼女は、テオがなぜ自分を捨てて男を選んだのか理解できなかった。彼女は絶えず自問し、苦しんだ。
「どうしてそんなことが可能なの?男色だなんて…お坊ちゃまはなぜ…」
セヒはため息をつき、首を横に振った。しかし、このすべての不安感と恐怖にもかかわらず、彼女は諦めないことを心に決めた。彼女はテオに再び会って、彼の本心を聞きたかった。彼女はテオが自分から去るしかなかった理由を知りたかった。
数日が過ぎ、セヒは山の中の奥深くで小さな山小屋を見つけた。彼女の心臓が激しく高鳴り始めた。彼女は本能的に、ここにテオとドルセが住んでいるかもしれないと感じた。
「ここで、お坊ちゃまとドルセが一緒に暮らしているのかもしれない…お願いだから…」
セヒは山小屋へと慎重に近づき、戸を開けた。しかし、山小屋の中には誰もいなかった。小さな家具と生活の痕跡だけが残っているだけだった。セヒは失望感を隠すことができず、虚脱してその場に座り込んだ。
「ああ…誰もいない…」
その時、下男の一人が慌てた声で叫んだ。
「お嬢様!ここに、地面に何かあります!」
セヒは下男の声にびっくりして顔を上げた。下男は、地面に転がっている古い靴を二足指差していた。
セヒは靴を注意深く見てみた。靴は古く擦り切れていたが、テオとドルセが普段履いていた靴と全く同じだった。
「この靴…間違いなく、お坊ちゃまとドルセの靴だわ…」
セヒは靴を見て、胸がどきりとした。彼女は、テオとドルセがここで暮らしていたという確信を持つようになった。彼女はもう一度決意を固めた。
「このどこかに、お坊ちゃまがいるはずだ!くまなく探すのだ!」
セヒは下男たちに断固として指示した。彼女の目は固い決意で輝いていた。下男たちはセヒの命令に従い、森の中をくまなく探し始めた。
「はい、お嬢様!」
一方、テオとドルセは、セヒの追跡を知らぬまま、山の中の森の道で、お互いの愛をさらに深く感じていた。彼らは互いに頼り、小さな幸せを作り続けていた。しかし、セヒの存在は、依然として彼らの心の中から振り払うことのできない影のようだった。彼らは果たして、この静かな山の中で永遠に幸せでいられるのだろうか?セヒの追跡が彼らにどのような結果をもたらすのか、そして彼らの愛は果たしてどのような結末を迎えるのか、誰も知ることはできなかった。
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読んでくれてありがとう。




