想い焦がれた恋人の、端っこ 01
想い焦がれた恋人の、端っこ
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第一部:お坊ちゃまとドルセ
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早朝、薄い霧が深く立ち込める広い野原に、かすかな日差しが降り注ぎ始めた頃、テオお坊ちゃまは広くて静かな庭を横切り、手入れの行き届いた庭園へと足を向けた。彼のそばには、影のように見慣れた存在、がっしりとした体格のドルセが、いつものように黙々と彼の後についていた。二人の関係は、単なる主従関係という言葉では説明し難いものだった。まるで長い時間を共にし、深くお互いに染み込んだ兄弟のようだった。幼い頃の世間知らずな子供だったテオを世話して彼のそばを守ってきたドルセだったから、共に過ごした歳月が流れるにつれて、彼らの関係は自然とさらに深まり、強固なものになっていった。
ドルセは、テオがまだ世の中の分別を知らない幼い子供だった時から、彼のそばを固く守り抜いてきた。不慮の事故で両親を亡くし、一人残された哀れなテオにとって、ドルセは実の親と変わらない大切な存在だった。テオの小さくか弱い手が、ドルセの広くて頼もしい手に初めて触れたその瞬間から、彼らの特別な運命はすでに絡み合っていたのかもしれない。ドルセはテオに、家の中の些細なことから始まり、正しい生活習慣、さらには複雑な世の道理まで、細かく教えてくれた。高貴なお坊ちゃまとして大切に育てられたテオは、いつも固い信頼を抱いてドルセに従い、頼りにしていた。幼少期から始まった彼らの特別な絆は、時間が流れ、年を重ねるにつれて、さらに強固になり、切っても切り離せない関係へと発展した。
「ドルセ、あの空を飛んでいる鳥は何だ?」
好奇心いっぱいの目で空を見上げ、テオが澄んだ声で尋ねた。
ドルセはしばらく青い空をじっと見つめ、静かな声で口を開いた。
「お坊ちゃま、あれは美しい鳴き声を誇るウグイスでございます。澄んで清らかなウグイスの歌声は、早春にだけ聞くことができる貴重な音色ですので、今日はお坊ちゃまはとても運が良い日でございます。」
ドルセはテオの目線に合わせて、優しく丁寧に説明してくれた。テオはドルセの詳しい説明に満足したように穏やかな微笑みを浮かべ、うなずいた。幼い頃からテオにとって、ドルセの暖かく親切な説明一つ一つは、まるで広大な世界を理解する神秘的な窓のように感じられた。自分の愚かさや無知をさらけ出すと、嫉妬深い人々からからかわれるのが常だった他の人々と違い、ドルセはいつもお坊ちゃまの純粋な質問に、誠心誠意、心を込めて答えてくれた。その中には、暖かい愛と深い愛情がたっぷりと込められていた。
振り返れば、あの頃、テオはいつもドルセと過ごす時間が一番楽しかった。彼の広くて頼もしい手を握り、青い野原を思いっきり走り回りながら、広大な世界を学び、経験した。ドルセは、まるで献身的な親のようにテオを温かく導き、そんなドルセの献身的な世話のおかげで、テオはたとえ両親がいない不遇な状況でも、寂しさや悲しさを感じる暇がなかった。世の中の複雑で難しい道理を親切に教えてくれたドルセは、テオにとってなくてはならない大切な存在となった。
しかし、時間がむなしく流れるにつれて、この特別な二人の間には、微妙で複雑な変化が徐々に感知され始めた。世間知らずの子供だったテオは、もう初々しい子供ではなかった。いつの間にか堂々としてすらりとした青年に成長した彼は、お坊ちゃまとしての立派な品位を身につけており、彼の秀麗な容貌もまた、周りの人々の視線を惹きつけるほどまばゆく輝いていた。村では、テオの嫁入りを一日も早く急がせなければならないという騒がしい声が次第に大きくなり、家ではテオの縁談を慎重に探しながら、急いで結婚を進めようと密かに動いた。
しかし、テオは自分の嫁入りの話が出るたびに、複雑な感情に襲われ、心が落ち着かなくなるのだった。彼の婚約者である美しいセヒ様は、確かに賢く美しい女性であり、立派なお坊ちゃまとしての重い責任感と、名門家を考えれば、当然結婚を急いで進めるべき相手だった。しかし、何か分からない理由のせいか、その幸せな結婚を目前にして、テオはますますドルセと過ごす大切な時間を切に望むようになった。立派なお坊ちゃまとしての重い責任感と、ドルセに対する説明し難い強烈な惹かれ合いの間で、テオは自らを抜け出すことのできない複雑な葛藤の渦中に陥れた。
いつの間にか日が傾き、夕暮れ時になった頃、テオは人通りの少ない静かな東屋に座り、ドルセと向かい合っていた。ドルセはテオのそばに静かに座り、丁寧に茶を淹れながら、最近複雑な考えにふけっているお坊ちゃまの悩める心を細やかに察した。彼は最近、テオの心の中に何か居心地悪く絡まっているものがあることを、長い時間を共に過ごして築き上げてきた固い信頼を基に、直感的に感じ取っていた。
「ドルセ。」
テオは低く静かな声でつぶやいた。
「私は…セヒと結婚しなければならないのだろうか?」
テオの突然の質問に、ドルセはしばらく沈黙した後、慎重に答えた。
「それが名門家の確固たる意思でございますならば、お坊ちゃまが到底避けることのできない宿命のようなものでございます。」
ドルセの声は落ち着いて淡々としていたが、その中には妙で複雑な感情がかすかに染み込んでいた。彼の深く青い瞳には、相変わらず長い間変わることのなかったお坊ちゃまへの深い愛情と温かい愛が満ち溢れていた。テオはドルセの温かい視線に、一瞬恥ずかしそうに目を逸らしたが、再び勇気を出して彼の深い瞳を見つめた。その瞬間、テオは自分が感じているこの説明し難い複雑な感情が一体何なのか分からなくなり、さらに混乱した。
幼い頃からいつもそばで黙々と自分を守ってくれたドルセに対する深い信頼と温かい愛情が、今では手に負えないほど大きくなってしまった他の複雑な感情へと徐々に変わっていった。愛するセヒとの幸せな結婚が目前に迫るにつれて、テオはますます愛するドルセと大切な時間を過ごしたいという強烈な欲望に捕らわれた。ただ彼と共にいる時間だけが、テオにとっては世の中の何物にも代えがたい、この上なく穏やかで幸せな瞬間だった。彼と一緒にいると、複雑で乱れた世の中の出来事や、名門家の重い重みが、まるで蜃気楼のようにすべてきれいに消え去るような気がした。
しかし、世の中はそれほど甘くないということを、テオは誰よりもよく知っていた。愛する婚約者である美しいセヒとの幸せな結婚は、彼の名門家と尊敬するセヒの家、双方にとって非常に重要なことであり、それはつまり、立派なお坊ちゃまとしてのテオに与えられた、避けることのできない重い義務だった。長い時間をそばで黙々と彼を見守ってきたドルセは、その冷酷な事実を誰よりもよく知っており、そんなテオの複雑な混乱を温かく理解しながらも、複雑な感情を懸命に隠したまま、沈黙の中で彼を痛ましく見守った。
「お坊ちゃま。」
ドルセが優しく静かな声でつぶやいた。
「このような複雑な葛藤は、世の中の誰にでもあり得る、ごく自然なことでございます。しかし、名門家を固く守るために、お坊ちゃまが今すぐなさるべき重要なことは、誰よりも明白でございます。」
テオは苦しそうにうつむいた。心の片隅では、愛するセヒとの幸せな結婚が、自分の名門家にとって最善の選択であることをはっきりと分かっていたが、ドルセに対する説明し難い強烈な惹かれ合いが、彼の心を絶えず混乱させていた。立派なお坊ちゃまとしての重い責任感と、ドルセとの危うい関係の間で、彼はますます抜け出すことのできない深い混沌の中へと陥っていった。
その夜、テオは複雑で苦しい悩みの中で、一晩中眠りにつけなかった。愛するセヒとの幸せな結婚を目前に控えていたにもかかわらず、彼の頭の中には、献身的なドルセの温かい顔がしきりに浮かんできた。ドルセの広くて頼もしい肩、黙々と深く見つめる眼差し、そしていつも心強く自分を温かく守ってくれた、頼もしい存在感。テオは自分の感情が、ますます手に負えないほどドルセへと強烈に傾いていることを徐々に悟り始めた。
しかし、彼は自分の本心を認めるのが怖かった。名門家の立派なお坊ちゃまとして、名声高い家の後継者として、彼はドルセとの危険な関係を、今とは全く違う方法で考えてはならないということを、骨の髄までよく知っていた。だが、彼の心が切に命じるままに、ドルセに対する手に負えない強烈な惹かれ合いを必死に拒むことのできない自分を見て、テオはさらに深い絶望と混乱に陥った。
さて、この二人の物語は、立派なドルセと名声高いお坊ちゃまの、危険で危うい関係がさらに深まる重要な地点へと向かっている。次の章では、テオがついに固く閉ざされていた心の扉を大きく開け、ドルセに自分の本心を告白する過程と、ドルセがテオに対して次第にさらに抗うことのできない致命的な誘惑を繰り広げる、興味津々な展開が続くことだろう。
読んでくださってありがとうございます。