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弐話 変化の始まり

「ちょっと、あなた何してるの?鈴お嬢様の寝巻きも洗って置いてって言ったじゃない」


「え?あ…申し訳ございません」


年嵩の使用人ー私の上司、に当たるーが腰に手を当てながら言い募る。

そんなこと一言も言ってなかったな、と思いつつ、何言ったって無駄だという私の経験から、素直に謝り従う姿勢を見せておく。ここで口答えや反論なんかすれば、次に飛んでくるのは言葉ではなく拳だ。全部、私の傷が知っている。

私は16歳になった。妹の鈴は13歳。鈴には幼馴染みがいて、今日も屋敷に来て、今頃鈴と話の花を咲かせながら茶でも飲んでいることだろう。その幼馴染みー浜ノ 藤也ーも華族の家柄で、ゆくゆくはあの人と一緒になりたいのだと鈴が頬を赤らめ話していたのを覚えている。

今日は、鈴の機嫌が良さそうだから私に影響はないかな…。

その間も年嵩の使用人はずっとぐちぐちと私に文句を言い続けていた。


「はぁ、でもいいわ。今日は許してあげる。あなたのことをご当主さまがお呼びだからね」


「お父様が…?」


ご当主さま、というのは私の父だ。父は義母と妹を目に入れても痛くないほど可愛がっているので私をわざわざ呼ぶことはとても少ない。

…ついにこの家を出て行けと言われるのだろうか。

そんな考えが頭をよぎった瞬間、これからどうすればいい、という不安と恐怖と共に、一縷の期待がじわりと胸に広がっていく。

この家を出られたら、私を肯定してくれる人に出会えるのかもしれない。この目を気持ち悪いという人がいなくなるのかもしれない。

けれどその期待はすぐに私の頭から消えた。そんなわけはない。私がこの見た目に生まれてきてしまったことは、誰にとっても不快で気に触ることなのだ。だって、私を見た人たちはみんな、そう言ったもの。


「今すぐに客間へ、ということよ。あとの仕事はやっておいてあげるからさっさと行きなさい」


「かしこまりました。ありがとうございます」


私は一つ礼をするとすぐにかけ出した。少しでも遅れれば、遅れた時間の分だけ酷い折檻があるからだ。

私は、客間の襖をすらりと開けた。


「六花でございます」


「入りなさい」


お父様の低い声を聞いて私は客間へと入った。

そこにいたのはなんとお父様だけでなく、険しい顔をした義母と、泣きじゃくる鈴。そして鈴を慰めるように凛の背中を撫でる鈴の幼馴染みの藤也が座っている。

…もしかしたら本当に出て行けと言われるのかもしれない。

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