第2話~セルフィーヌ・グラディウス〜
よし、今日は稽古の予定はないし日課も終わっている
折角の空き時間だあまり家の外を見て回ることはしていなかったから少し散歩にでも行くか
「母さん、今から少し外を見て回って来ます」
「わかったわ、でも遅くならないこと、危ないと思ったらすぐに逃げること、分かった?」
「はい、分かりました」
「よろしい、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
許可も降りたし、最近はもっぱら稽古で外を見るなんてあまりなかったから少しワクワクしている
でも、ここら辺は田舎なので家が十数件と畑があるくらいだ
「あまり面白そうなのはないな」
キャ〜!
···っ!
なんだ今の叫び声、あの川の方からだ
「や、やめて」
「お前髪の色が白とか気持ち悪いんだよ」
なんだイジメか
この世界でもあるんだな、いやこの世界だからこそなのかもしれない、この世界には色々な種族が居る、だからこそ種族間では犬猿の仲だったり淘汰された種族だっている
しかし、イジメを見て見ぬふりをすることは俺が許せない
「おい、何馬鹿なことをやってるんだ」
「んあ!誰だてめぇ」
「俺は、ロイン・ハーディン、ハーディン家の息子だ」
「なっ!ハーディン家だと?!」
ふふ、まぁハーディン家はここら辺だと有名だからな
恐れるのも仕方あるまいて
「そうだ、髪の色だけで差別をするようなやつは、嫌いだ、今すぐここから去れ」
「···チッ」
そういうと、そいつは去っていった
ほんと、イジメってやんなっちゃうよね
やってる側はいいのかもしれないけど、見てる側とやられている側は胸糞悪いったらありゃしないからな〜
「あ···あのっ」
ん?
「た、助けてくれてありがとう、なにかお礼できないかな?」
···ッハ!
いかんいかん見とれていた、相手は俺と同じ6歳くらいだぞ、...しかし、可愛いな白髪ショートで見た目から溢れる清楚さ、いいなぁ
「あ、あのぉ」
「ん、あ、あぁ悪い、ぼーっとしてました」
「い、いえともかく助けてくれてありがとう、なにかお礼はできないかな?」
「お礼?いりませんよ、俺はアイツらが気に食わなかっただけです」
「ダメ、それでもお礼したいの」
頑固なやつだな、まあでもこれを機にこの子と仲良くなれるかもしれない
「...わかりました、じゃあ明日この木の下でこの時間にもう一度あってくれませんか?」
「..!わかった!約束」
「はい、約束です、それと名前聞いてもいいですか?」
「あ、うん、僕はセルフィーヌ・グラディウス」
「セルフィーヌ...分かりましたよろしくお願いします」
「うん、よろしく!」
「じゃあ、今日はこの辺で」
「うん...またね」
それから俺は周辺を色々と見て回った
気づいたことは、この近くには魔物がいないということだ。魔物というのは、魔力を纏い他種族を圧倒する絶大な力を持った生き物のことだ
人族だけでなく、エルフや獣人など様々な種族から敵対あるいは討伐対象となっている
「まぁ、安全に越したことはないか」
今日はこのくらいで帰ろう少し腹も減った
あと、父さんに今日のこと話さないと行けないな
ギギッ
「ただいまー」
「あら、おかえりロイン」
「ただいま母さん、そういや父さんは?」
「あぁ、あの人なら自室に篭ってるんじゃないかしら」
「どうして?」
「あの人、今朝に腰を痛めたのよ。なにか用があるならご飯の時にしてあげて」
「わかった」
父さんは強いと思っていたが、そういうこともあるのか
「なんか意外だな、」
まぁ、そういう日もあるか
俺だって前世で怪我なんか数え切れないほどしてきた
一番になりたくて、兄を超えたくて努力してきた
その中で怪我はつきものだった、だからこそ分かる
父さんは努力できる人だ、そんな人世の中にはそうそういない、だからこそ凄いことで、でも時には休んで欲しいと思う、それは母さんも一緒だろう
「もうご飯できるからお父さん読んで来て」
「分かりました」
俺は2階にあがり父さんの寝室のドアをノックした
「父さん、ご飯が出来ましたよ」
「おぉ、そうか、すぐ行く」
そういうと部屋の中から腰を押えた父さんが出てきた
笑顔を浮かべているがその裏では、痛みを我慢しているような感じもあった。
そんな父さんを支えて上げながら1階へと降りていった
そして、家族が揃ったところで皆で席につき手を祈るようなポーズで食べる前の祈りを捧げた、これは前世で言うところの、いただきますのようなものだ。
「では、今日も生きていることに、そして明日も生きていられるように、人神サヌール様に祈りを」
数秒の沈黙を経て母さんが続けた
「では、頂きましょうか」
その言葉の後に皆が箸を取り、食事を始めた
今更になって気になったが、人神というのはなんなのだろうか?
俺はそう思いながら食事を食べ始めた
食事を食べ始め少しだった頃、今日あったことの話をするのを思い出した
「父さん」
「ん?なんだ」
「明日の稽古の事なのですが、明日は少し予定が入ったので、お休みにしてくれませんか?」
「そうなのか、まぁ、俺も腰を痛めているからそれは構わないが、お前が予定なんて珍しい、どうしたんだ?」
「はい、実は今日、虐められているエルフの女の子を助けまして、その子がなにかお礼をと、明日会う約束をしたのです」
そういうと、父さんは目を見開いていた
そして、母さんは口を手で抑え、“まぁ!“と言う顔をしていた
「そうか、お前は偉いな、エルフの女の子を助けるなんて。エルフは耳が長く、人族の子供からしたら少し異形に見えるかもしれないからな。しかし、よく助けた、そのことを俺は、誇りに思う」
そういうと父さんは腰を痛めたのが嘘かのように笑っていた
そんなこんなで食事を終え、自室で寝る前の日課を終わらせていると、下の階から両親の話し声が聞こえた
「どうするのあなた」
「どうするも、行くしかないだろう」
「でも、あの子はどうするの」
「大丈夫だ、あれまでにはあと最低でも3年は猶予がある、その頃にはあいつも立派になっているし、俺らの元から離れても生きていくことくらいできるようになっているさ、現にあいつは武術と魔法の才能を両方兼ね備えている、ラーデンが師匠として教えてもらえば、この先計り知れないほど成長するだろう」
「そ、そうよね、あまり深く考えない方がいいのかも」
そのような会話が聞こえてきたが、俺にはなにかさっぱりだった。
あと3年の猶予とはなんのことなのか、今日の父さんの怪我となにか関係があるのか...
まぁ、母さんの言っていたように、何も知らない俺が考えても仕方の無いことかもしれない、うん、今日はさっさと日課を終わらせて寝よう
そして翌日、母さんに出かけることを伝え昨日の場所に訪れた
そこには、昨日と同じ見とれそうになるほどに...、と危ない、変な目で見て気を悪くさせないようにしないと、しかし俺はこのような子がタイプだったのかと、自分でも驚きだ、前世では恋愛なんてしている暇なんてないと思っていたから、自分にこんな感情があることにすこぶる驚いた。
「おまたせしました?」
「ううん、僕も今来たところだよ」
そういや、お礼のためもう一度会おうと言ったが、何をするのか決めていなかったな
「ところで、今日はなにかするんですか?」
「うん、昨日考えたんだ、何が1番ロインが喜ぶかなって、それで考えた末思いついたのが、これ」
そういうと、セルフィーヌはペンダントのようなものをくれた、葉っぱの形をしているが、木を掘ってできていてそれでかつ、裏にはエルフの紋章が掘られていた、パッと見ではなかなかの値段がつきそうだか
「これは?」
「これはね、エルフ族に代々伝わるお守りで、大切な人にあげると良いってお母さんが言ってたの、それでロインは僕を助けてくれたから、とても大切な人だって思ってこれをあげることにしたの」
なるほど、だから紋章やらを掘っていたのか
しかし、大切な人か、あまり悪い気はしないな、いやむしろすごく嬉しい気もする、この子に言われたからなのか、それともこういうことが性にあっていたか
まぁ、それは置いといてお礼を言わなければ
「ありがとうございます、一生大切にします」
そういうと彼女はとても笑顔になり少し目頭に涙を浮かべ“うん“と強く頷いた。
それからお互いに自己紹介をしようと言う流れになった。
「改めて、俺はロイン・ハーディン、好きな物は魔法と肉を使った料理全般、よろしお願いします」
「こちらこそよろしく、あ、僕はセルフィーヌ・グラディウス、好きな物は果物と水系魔法だよ」
そういうと彼女ははにかんだ、とても可愛い、食べてしまいたくなる、と、ダメだダメだ彼女を見ていると時々自分がおかしくなる、元々こんなだったのか、と疑いたくなる
「それで、セルフィーヌはどの辺に住んでるの?」
「僕はこの坂を下った先にあるところに住んでるよ、ロインはどの辺なの?」
「僕は、あの看板を右に進んで少ししたところに住んでますよ」
「そうなんだ、今度遊びに行ってみたいな」
そう言いながら笑う彼女にまたしても心を打たれた、ダメだ彼女の一挙手一投足が全て可愛く見える、落ち着け...
「いいですよ、今度遊びに来てください」
「やったぁ、絶対だよ」
「はい、絶対です」
そういうと彼女は今日1番の笑顔を浮かべていた。
第2話を読んで頂きありがとうございました
次もよろしくお願いします!




