表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

誰もかれも、自分の愛に殺される

少年と師匠

少年は拳法を習っていて、凄腕だった。しかし師匠だけは打ち負かせずにいた。


師匠は言った。

「お前は、俺に勝てないのではなくて、勝つ気がないのだ。お前にはなまじ才能があるから、その気がなくても誰にだって勝ててしまう。だから勝利について、お前は真面目になれてこなかった。

しかし俺が相手となるとそうはいかない。同じくらいに才能があって、その上で、勝利に対して怠けるお前と、たとえ相手がお前如きであっても、勝ちたくて仕方がない俺とでは、天と地なのだ。

俺に勝つために、お前はもっと勝利に全力でなければならない。全部の甘えを捨てて、全部の苦労を拾って、全部の努力を実行しなければならない。そうして、己の内に勝利への渇望を培わなければならない。

たとえば砂漠にいて、全身が枯れて仕方がなかったとしても、水より勝利を求められるようにならなければならない。」

少年は心の底から納得した。そして、何かを思い立って、その日のうちに道場を飛び出していった。


しばらくして、少年は帰ってきた。

少年は、激烈に意気込みながら、師匠に決闘を申し込んだ。

師匠は、久々に見た彼の、全身からほとばしる情熱と気迫にいたく感動して、喜んでこれに応じた。

そうして、師匠の精神が、全霊をもって少年の精神の成長を確かめようとしたそのとき、少年は懐に隠し持っていたピストルを抜き出して、躊躇なく師匠を撃ち殺してしまった。

「どうだ!僕は貴方の言った通り、全部の甘えを捨てて、全部の苦労を拾って、己の内を勝利への渇望でいっぱいにしたぞ!ざまあみやがれ!この結末は貴方の教えの賜物だ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ