番外編「化け猫の見る夢は」※ボツになった話
その45と46の間に入るはずだった話。
あまりにこの作品と雰囲気が違ったためにボツ。意味不明だし。この作品のマルという化け猫とは特に絡んできませんしね。
補足すると、歌舞伎の独道中五十三駅というお話に出て来る化け猫がモデルになった話です。
このエピソードを元ネタとして別ジャンルの別作品として「凶刃の化け猫、岡崎悲爪譚」という短編を投稿しています。「悲惨、以上」で終わるような作品ですがご興味があればご一読を。
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誰だろう。誰かが泣いているのよ。
いや、鳴いているのかな?
誰かが悲しんでいる。それだけは伝わってくる。
『化け物! あっちへ行け!』
うにゃ? 化け物? 誰の事?
鳴いているのは彼女だ。彼女は化け物だ。
夢を見るように、夢の中で見ている夢が覚めていく、私は彼女になる……にゃあ、悲しい。
夢の中で目が覚めた私は化け物で、人を簡単に殺す化け猫で、そして泣きながら鳴いていた。
爪を振るえば人が切り刻まれて死に、私は爪についた血を舐めとる。そんな化け物。化け猫。怖いの。
私に毒を盛った女を殺した。
子供を助けられなかった。結局殺した。
にゃあ……。駄目だよ。みんなが彼女を恐れている。
私は、彼女は、逃げて、逃げて、堂々巡りのように、逃げて……
にゃあ。誰かが言う。
『殺生をせねば、人と共に在ることもできただろうにっ!!』
殺すのは駄目。いけないこと。知っている。今は。
彼は化け物を退治しにきた人。
私の悲しい堂々巡りを終わらせてくれた人。
月が隠れていく。な。知ってる。地球の影で月の光が欠けて見える、それは月蝕という現象なの。テレビで見た。にゃ。彼は酷いのよ、私を騙した。
泣かないで。
嫌ってないよ。月はあなたの事を嫌っていないよ。あなたを見捨てたわけじゃないの。それは只の自然現象、だから、泣かないで。
大きな石に寄り添うようにして、私は還っていく。そこから来た私は、そこに還っていく。食べて、食べられて、命が廻るように……
いつか彼女は私になる。巡り、廻って。にゃあ! 楽しい事、いっぱいあるよ。おいしいもの、いっぱい食べられる。私を愛してくれる人たちとも、たくさん出会えるの。だから、今は、お休み。
にゃおん。黒猫が鳴く。私に寄り添ってくれている。優しい猫。
彼女が最後に見たその黒猫の金色の瞳は、
居なくなった月の代わりに、降ってくるような、二つの満月のように綺麗だった……
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