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その51「猫と妖怪ハンター」パート1



「癒しって言えば先輩、にゃん吉が癒しの猫動画っつうのを”ねこねっと”に上げてるっすよ? 見たっすか? 癒しっつうか、道端にいる普通の猫を地味に撮ってるだけのクッソつまらない動画なんすけどね。にゃん吉のボソボソ声が入っていて、むしろ変質者の盗撮動画かって感じで、そこは笑えるんすけどwww」


「ねこねっと……あれから一切使ってないのよ」


「安心するっすよw。ぶふっ……先輩のあの動画を越える作品はまだ生まれてねーすからwww」


「ああ、もう、せっかく忘れかけていたのに!」


 忘れる忘れる、よし忘れた。


 どこかに私の癒しは落ちていないかと猫の姿で閑静な住宅地を当てもなくのんびりと散歩する。空は曇り模様。蒸し暑さが嫌になる季節。これ以上暑くなると気軽に散歩に出れなくなるな。夏のアスファルトの上は焼かれた鉄板の上とさほど変わらないからね。四畳半の固有空間の中のコタツもしまいたい。涼やかな感じに模様替えしないと。


「そういえば、ねこねっとの録画機能ってどうなってるの? まだ使える?」


「一応、ねこねっとの機能で確認は出来るんすけどね。管理者権限がいるから使用できないって出るっす。にゃん吉が近くにいないと使えねーっぽいっす」


「すごく安心した」


「にゃん吉に会ったら使えるように交渉するっす。いつでも先輩の犯行現場を録画できるようにwww」


「監視社会はんたい!」


 恐ろしい世の中になったものなの。なんでもかんでも記録に残すのはどうかと思うのよ。大切なものは心の中に記憶していればいいの。私も録画して遊びたい気持ちもあるけどね。


 さーて、もはや、いつもの只の散歩が目的になっちゃっているけど、これからどこに向かおうか? 例の犯行現場、じゃなくて工事現場の方面は避けたい、公園も駄目。商店街に用事は無し、田辺のババの家に行ってお菓子でもせがむ? それとも常世寺に行ってみようか? 常世のおばあちゃんは寝ているだろうけど。……なんだろうね、私の思いつく場所って少ない。猫の行動範囲なんて、広いようで狭いのねー、なんてぼんやりと考えながら歩いていると、見知った顔とばったり。


「あ、シメさん」


 サバシロ柄のシメサバさん、後輩ちゃんの所にいる猫又。


「ああ、お嬢様。探しましたよ。ふらふらと屋敷から抜け出して、ふう、イケナイお嬢様です。やれやれ。ああそれからマル様、お久しぶりですね」


「シメさん、なんか……雰囲気が?」


「こいつ、今、出来る執事風ってやつにハマってるんすよ。超絶ウゼぇんで無視するっす」


「マル様、私のことはこれから”シメ・サーヴァント”と、そうお呼びください」


「それ、将来、悶えるやつだ……」


 立ち上がって片方の前足を胸に当ててお辞儀するシメサバさん、もといシメ・サーヴァント。


 そういえばキャラがブレまくる猫又だって後輩ちゃんから聞いていたんだった。明らかに煙たがる後輩ちゃんに色々と話しかけているけど……だめだ、見ていられない。私の方が恥ずかしくなってくる。「ふう」とか「やれやれ」とか「イケナイお嬢様」とか多用すると出来る執事風になるの? 出来る執事風って何? シメさん、後で絶対後悔するのよ。


「戻って!」


「うわビックリした、やれやれ、マル様、突然大きな声を出してイケナイお嬢さんだ。何でしょう?」


「戻って! 昔のシメさんに戻って! 出会った頃のサムライ口調のシメさんに戻って!」


「別にサムライ口調が昔の拙者というわけではござらんが? あ、」


「一瞬で戻った!?」


 キャラがブレるどころの話じゃないのよ。ボタンを押すと音が変わる玩具かか何かかな?


「とにかく私の前ではサムライ口調でいて! 聞いてる方が混乱するから! シメさんにお願いするのよ。出来る執事風っていうなら、せめて中身まで出来るようになってから口調を変えて欲しいのよ」


「辛辣!」


「wwwさっさと用事を言うっすよポンコツ」


「ポンコツ!? お嬢様も、お嬢? ええと、姫も辛辣ですでござる。って、お嬢を探していた理由はもう大丈夫でござる」


 自分でも混乱しちゃってんのよ。


「用件とはそちらのマル殿の事でござるよ。マル殿を探していて、あ、マル殿、屋根からの落下動画には笑わせてもらったでござる。拙者、あれほど腹を抱えて笑ったのは初めてでござる」


「喧嘩売ってるの!? どうでもいいのよ!?」


 いい加減忘れさせて!


「拙者、お嬢の父君から昨日の爆音騒ぎの調査を依頼されたのでござるがな、おお、爆音騒ぎはご存じか? どうにも事故でも自然現象でも無いらしいですぞ。拙者、あれはどこかの妖怪が関わった事件だと睨んでいるでござる」


「……ああ、うん、知らないけど」


 目を逸らす。逸らした先には後輩ちゃんが腹を抱えて静かに笑っている。内緒で、内緒でお願い。


「その証拠に、現場にいた大勢の人に紛れて妖怪の方々も調査に来ていたのでござる。マル殿は聞いたことがあるでござるか? この世には、人に仇なす悪霊や妖怪たちを専門にして狩る方々がいるという話を」


「ああ、うん、聞いたことがあるかなーって、私とは関係ないけどー」


「そこで出会った高名な妖怪ハンターたちが、マル殿を探していたのでござる」


 高名な妖怪ハンターたちが私を探して?


 そういう重要そうなことは最初に言って欲しいのよ……


 シメさん、ポンコツなの……




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