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その49「ご近所トラブルは穏便に」パート4




「はい解散。こんな夜中に騒いじゃ駄目なのよ、近隣の人たちに迷惑かけちゃうでしょ、はい解散」


「なっ!? 何よっ! 何なのこのメス猫! いきなり現れて」


 オウムの彼女、たぶん彼女が頭をぴゃーって広げて怒っている。おお、オウム。白い、そして頭の冠が黄色くて嘴が黒い。


「ハチ! お前無事だったかよ!」


「うん、キジ、応援を呼んできたよ、応援というか……」


 まだヒヨヒヨとふらついているチャトラを見て微妙な顔をするハチワレ。


 コードネーム・ハチじゃないの! というかチャトラの取り巻きのハチワレとキジトラ、ハチとキジって呼び合ってるのね。ハチが忠犬ハチ公の犬でしょ? キジもいるからあとは猿がいたら桃太郎のお供ね。あ、猿はいた。チャトラね。おっと猿に失礼だったのよ。


「てめえ、マル……」


 つい踏み潰したくなるチャトラに聞く。


「ねえチャトラ、あなたは何でここにいるの? 人の喧嘩に割って入ってさ」


「おう、鳥どもがこんな夜中に集まってギャアギャアと騒いでいたからよ。ちょっと行ってお話してやろーと思ったのよ。迷惑かけんなよってさ。この町で人と暮らす妖怪の端くれとしてよ」


「思考原理が私といっしょだった! ショック!」


「んで来てみりゃあ舎弟たちが襲われてんじゃねえか。とっさに割って入ったってわけよ。耳がまだきーんてする……」


「まるねえさん、おーえんにきてくれた」


「おーえんじゃないのよ。ニコ、帰るのよもう。あなたたちも帰るの」


 左目の真ん中あたりで薄い黒と白に分かれている柄をしたのがニコ。眼帯をした海賊に見えなくもない。


「まるねー、とりども、ぜんぶやいて! まるねーのまるやき!」


 イチゴさんや、それじゃあ私が丸焦げになっちゃう。白地に頭から背中にかけて薄茶色なのがイチゴ、グレーと白のまだら柄のぶっちゃんはいつも通り無言、でもうんうんと頷いている。この子ら、なんでこんなに殺意が高いのか。


「猫ども! ここまで引っ掻き回しておいてただで帰れると思うのっ!?」


 オウムがぴゃーぴゃーと甲高い声で威嚇してくる。うーん、この方、ちょっと苦手。そんなオウム声を受けてカラスを含めた周りの鳥たちが一斉に騒ぎ始める。いや、だからね、騒音問題はご近所迷惑の一番有名なやつだから。


「解散というなら是非もナシ。我は身を引こう。勝手に集まってきたカラスどもも引き上げさせよう」


 みんなやたらと好戦的な奴らばかりの中、冷静な声でカラスさんが言う。ナイスなのよ。さすがは渋い声をしているだけはあるのよ。黒いしカッコいい。


「ありがとう。あなたはいいカラスさんね」


「うむ、常世寺の御方からそちらの話を聞かされている故に」


「え? 常世のおばあちゃん? どういう風に聞いてるの?」


「マルという名の化け猫は地雷女だから手を出さぬように、と」


「おばあちゃーーーん!?」


 どういうこと!? 地雷女!? おばあちゃん、私の事をそういう風に見ていたの!? 今度じっくり話を聞かなきゃいけない。あ、そうだかつお節をお土産に持っていこう。火輪姐さんにもまた会いたいの。


「勝手に話を進めるんじゃないっ! このアホガラスと地雷女っ!」


「地雷女と呼ばないでっ!?」


「じらいおんな」


「ぶっちゃん! 覚えなくていいの! 普段無口な子なのに何故今!」


「地雷女ごときが何よっ! あんたも空を舞うカラスならメス猫なんかにビビってんじゃないのっ!」


「ムーたんよ、汝は何故そうなのだ? いつもいつも怒っている」


「あんたがあたしを怒らせているんでしょっ!」


「喧嘩したっていい事無いし、ね、ここは穏便にいきましょう……ムーたん」


「お前にムーたん呼びされる云われわないわっ! 私をムーたん呼びしていいのは……なんでも無いわよっ! 馬鹿っ! 地雷女っ!」


 カラスの方をちらっと見て、私を地雷女呼びしてくるオウムのムーたん。地雷女呼びやめて。定着したら嫌だ。もう、常世のおばあちゃん……。とにかく! カラスの一団がここから去ってくれたらだいぶ前進するのよ。


「生ゴミ、荒らすとりども、まるねー、あいつらぜんぶ、生ゴミにかえちゃって!」


「どれだけ物騒なのよ!? 穏便にいくの! まとまりかけてるの!」


「マルの姉御が来てくれたなら勝ったも同然! 姉御、あいつら全部ぶっ飛ばしてくれ! 姉御がいつもしているようにっ!」


「キジトラ、黙れ、ぶっ飛ばすよ?」


 そう言えばここで集まってギャーギャー言っているのは生ゴミ問題がどうこうだったっけ。これはむずかしー問題なのよ。


「ええと、鳥さんたち、あなたたちって最近、ここら辺の生ゴミを荒らしてる? もしそうなら止めて欲しいのだけど……」


「は? 生ゴミ? 知らないわよ。言葉もしゃべれないような頭の働かない奴らが勝手にやってるんでしょ。あたしは関係ないね。あんたら喋れる猫どもも、全部の猫を管理して命令できるってわけじゃないでしょ? クーたん……そこのアホガラスのとこも同じでしょうが」


 ごもっともなの。喋れて意思疎通の出来る猫は限られているのよ。会話が出来ても命令できるような関係でもないしね。みんな好き勝手に生きてる。


「言葉も交わせぬ同胞に言って聞かせることは難しい、だが出来る限りの事はしよう。ではさらば」


「あんたのそういうとこーっ!!」


 オウムがカラスに突っ込んでいく、カラスはひょいひょいとオウムの攻撃を避ける。カラスはクーたんね、チャトラじゃないけど、本当に仲が良いんじゃない? なんで喧嘩してるの?


「はぁ、結局のところ、生ゴミ問題は人間の方に対策をしてもらうということで。いいよね? イチゴ、ニコ、ぶっちゃん。じゃあ帰るのよ」


「ぶー」


「おう、女子供は帰んな。後は俺らがまとめておくからよ」


 チャトラがキリっとした自信満々の態度で言ってのける。帰りたいからそれは好都合なんだけど……なんだろうイラッとするのは。


 オウムに追われていたカラスが工事現場の開けた所に降り立ち人の姿に変化する。渋くて落ち着いた声に相応しい黒髪黒服の美形さんだ、って、


「なんで今人化したの!?」


 追いかけるようにしてオウムが人になったカラスの前に下り立ち、こちらも人化する。こちらは髪の毛が黄色い、ちょっと生意気そうな美人さん、だからね、


「なんで人化するのって?」


 何で何でと言う私の疑問に答えてくれる者はいないのよ。どーでもいいけど。私たちの事など知らないとばかりに二人は見つめ合っている。


「ムーたん。我は汝の怒る声を聴きたくないのだ。汝よ、気高く美しい、空を舞う姫よ、常に我が見上げたる孤高の人であれ」


「あんたはいつもそう、言葉ではいつもいつもそれらしい事を言ってくれるのに、それなのにあんたは軽薄で、逃げ回っているばかり、結局私に何もしてくれないじゃないの……」


「汝を想っているのだ、ムーたん」


「クーたん……」


 見つめ合う二人。周りを囲む鳥たちがギャー、ギャー、ワー、ワー……


 さすがにこれは聞かざるを得ない。


「私は今、何を見せられているの?」


 今度はハチワレが答えてくれる。


「たぶん、鳥同士の痴話喧嘩と、仲直りの場面かなって」


 空を見上げる。満月。そういえばそうだった。満月は妖怪たちを好戦的にもするけれど、恋のあれこれにも作用するのよ。妖怪の心を惑わしてさ、お月様ってとっても迷惑なの!


 結局、種の存続を賭けた縄張り争いでも、生ゴミ問題のご近所トラブルでもなく、痴話喧嘩と、そこにしゃしゃり出てきたアホ猫の話だった。もー、どうでもよくなってきた。


 ケセランパサランを作成。だけど強く満月のお月様をイメージして作る。うんと強く。その中に空気を押し込む。押し込む。しゅこ、しゅこ。ハチワレが心配そうに聞いてくる。


「……マルの姉さん、なにを」


 しゅこ、しゅこ。しゅこ。しゅこ。ぐんぐん大きくなる満月風の風船空気爆弾。


「マルの姉御、それは」


 しゅこ、しゅこ。


「……おい、マル」


 しゅこ、しゅこ。しゅこ、しゅこ。


 完成。でかい。お空に上げる。本当の満月は雲に隠れちゃったけど、私の作ったなんちゃって満月が浮いている。これを破裂させたら……どうなるのかしら? 自分で作っておいてあれだけど、ちょっと想像つかない。


「ぼ、ぼく、用事を思い出したから、帰ろうかな」


 ハチワレが足をガクガクとさせながら言う。


「だ、だよな、俺も何か用事を思い出した気がする」


 チャトラが足をガクガクとさせながら言う。


「イチゴ、ニコ、ぶっちゃん、あなたたちはこっちにおいで、逃がしてあげる」


「マルの姉御ぉ!? オレたちは!? オレたちはどうなるのぉ!?」


 同じようにガクガクブルブルと震えながらイチゴたちは私の傍にやってきて大人しくしている。そうそう、そうやって最初から大人しくしてくれていたら簡単だったの。


 工事現場の開けていた場所では、二人の間で新しい展開が繰り広げられていた。


「馬鹿っ!!」


 オウムの少女がカラスの男性の頬をひっぱたく。ちょっと目を離した隙にどんなドラマが?


 少女はオウムの姿に戻って空に舞い上がる。


「もう知らないっ! あんたなんてあんたなんて……何これ?」


 オウムがお空に浮かぶなんちゃって満月に気がつく。そして鋭い嘴で突く。


「あーーーっ!!」


 慌ててイチゴたちを固有空間に放り込んで私も逃げ込む、チャトラたちは、ごめんなの、間に合わなかった。というか一目散に逃げてたし。直後。ものすっごい爆音がした。恐る恐る固有空間から出ていくと、倒れた鳥たちで死屍累々のありさま……


 チャトラたちも発見。ひっくり返ってピクピクしている。


 静寂の工事現場、というか凄惨な事故現場になっちゃった。そして遠くから聞こえるサイレンの音。パトカーや消防車が近づいてくる!


 回収! 回収~!! 急いですべての鳥たちと猫たちを回収。招き寄せと固有空間を全力全開で回して、ちょっと遠くの公園に移送する。これ、誰も死んでない? 良かった、誰も死んでない。


 はぁ、もう、ろくなことがないのよ。疲れた。


 やっぱり他人のトラブルに首を突っ込むもんじゃないね。お月様の馬鹿。


「じらいおんな」


 ぶっちゃん、やめて。







45話と46話の間辺りにぶち込もうかと考えていたエピソードを完全別ジャンルの短編作品として投稿しました。江戸時代の、とある一匹の化け猫にまつわる怪異譚。ジャンルの制限から解き放たれたそのお話は、より凄惨なことに……((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

あ、この「マル@猫又検定苦戦中」とは特に関わってこないので読む必要はないです。特にこの作品の雰囲気が好きな方は読んではいけません。知らなくていい作品も、この世の中にはあるんです。

いいですね? 警告はしましたよ(-"-)

つ https://ncode.syosetu.com/n0251hy/「凶刃の化け猫、岡崎悲爪譚」

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