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その48「ご近所トラブルは穏便に」パート3



 とりあえず、視線が通ったので、私の招き寄せで彼女たちはいつでも固有空間の中に逃がすことができる。無理やりだからこれは最終手段ね。いったん様子見に回るのよ。私の隣では姿隠しの妖術で気配を消しているハチワレ、じゃなくてコードネーム・ハチが固唾をのんでチャトラたちの喧嘩を見守っている。別に少しくらいなら喋ってくれていいのよ? 声も消せるから。


 一触即発の状態を通り越して、すでに喧嘩が始まっている彼ら、勢いよく爆発していないのは三竦みの状態でお互い手をこまねいているから。彼らに気づかれずにあの子たちを逃がすことが出来たらミッションコンプリートなのよ。あとは知らない。喧嘩に割り込んでもいい事なんて何も無いしね。


 空を見上げると雲の隙間からお月様が地上を覗いたり覗かなかったり。彼らが好戦的なのはチラチラとこちらを覗く満月のせいかもね。


 満月って妖怪たちにとって特別感ある。


「ねぇ、なんでイチゴたちがここにいるの?」


 小声で横にいるハチワレ、じゃなくてコードネーム……もういいや、飽きた。ハチワレに問いかける。


 ハチワレは周りにいるカラスたちを見て私を見て口を指さす。「小声で喋るならへーき」という私の言葉を聞いて彼は喋り出す。


「もともとが彼女たちからの相談事から始まったんだ。ぼくとキジトラとで聞いた相談事から……」


 ハチワレは周りのカラスたちを気にしながら私よりも小さな声で事情説明をしてくれる。あまり周りのカラスを気にする必要は無さそうよ。見たところ、人間の言葉を理解しているかどうかもあやしい。


「彼女たちの飼い主たちの家が、最近、やたらと増えている鳥たちによって生ごみが荒らされて困っているんだって……」


「は? 生ごみ?」


「はい生ごみ」


 正直言っていーい? 実はさっきまでは、縄張りを巡る種の存亡を賭けた争いに巻き込まれた感あったのに、なんだかいきなりご近所トラブルの様相を呈してきたのよ。しかもあの子たちからの相談だって? チャトラたちの喧嘩に巻き込まれただけかと思っていたけど違うのか。もし、この争いの関係者だったら、ここから連れて行ってハイ終わりってことにはならなさそう。


「それで?」


「キジトラの奴が、鳥たちが集まっているから乗り込んで話をつけてやるって言って飛び出したんです。ぼくと彼女たちはそれを追って……」


「アホ2号」


 1号は言わずもがな。


「ええ、アホです。それがカラスとオウムが争っている最中の現場だとは知らなかったんです。今よりはまだずっと数が少なかったんで……」


「ねぇ、何であの子たちまで連れて来たの?」


「連れて来たというか、彼女たちが、ゴミを荒らす鳥なんて全部まとめてヤっちゃえとか煽り出して、それに乗せられたキジトラの奴が……」


「関係者どころか争いの当事者だった! やる気満々じゃないの!?」


 猫ってそういうとこある。鳥やネズミを見ると襲い掛からずにはいられない習性……これも満月が……満月関係ないよね、ごめん、お月様。


「姉さん、声大きい……後は最初にキジトラの奴がボコボコにされて、チャトラの兄ぃが突如現れて庇ってくれて、鳥たちがあれよあれよと増えて行って……」


「何そのチャトラのヒーロームーブは……」


 仲間のピンチに颯爽と現れる、なんかの物語の主人公か? どこかに隠れて登場の機会を伺っていたとしか思えないのよ。さて、ここからこの場を穏便に済ます解決方法は? さっぱり思い浮かばない。


 チャトラの方を見ると、3匹の争いに変化が起きるところだった。チャトラの妖力が高まっていくのが見て取れる。何かやるみたい。


「てめぇら、俺様を本気で怒らせやがって、もうどうなっても知らねぇぞ?」


 ハァーッとか言い出したチャトラが一回り大きくなり尻尾が二股に別れる。ゴゴゴみたいな音を出してチャトラの妖力が形となっていく。


「妖虎変化!!」


「おおっ!?」カラス。「なっ!?」オウム。「ああ、あれか」私。


 いつぞやで見た、虎の張りぼてを纏う妖術ね。といっても、あれから練習でもしたのか、それとも満月の影響か、随分と強力になっているっぽい。あれなら鳥たちをまとめて倒すことくらいはできそう。だけど乱戦になったら彼女たちを守れないんじゃない?


 三毛柄ケセランパサランを作ってチャトラの耳元に持っていく。風船空気爆弾設置完了。起動。


「ぐははっ! 今夜は鶏肉パーティだぜぇ! せいぜい逃げまどって寿命を延ばすん『パーンッ!』ぎゃふん」


 チャトラは変化を解除させられてひっくり返った。ミッションコンプリート。


「……悪魔なの?」


 隣にいたハチワレが心底恐怖した顔でこちらを見る。それを無視してチャトラたちがいる場所に歩いていく。もう姿隠しの妖術は解除していいよね。引きつった顔のままハチワレがついてくる。


「!? !?」


 突然の事態に混乱する鳥たち、いきなりこちらを襲ってくることは無さそうで安心。穏便に行こう。穏便に。器用に腰を抜かしている鳥たちもいるけど、鳥に腰ってあったっけ?


「!?」「姉御!?」「まるねー!?」


 ヒヨヒヨしているチャトラを除いて、それぞれが私の登場に驚いている。


 お? これって、なんだか物語の主人公っぽい。


「正義のヒーロー見参、なの」


 ってね。



「魔王降臨が近いんじゃないかなあ」



 ハチワレ、うっさい。





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