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その47「ご近所トラブルは穏便に」パート2



『助けてが31回め~、助けてが32回目~、助けてが33回目~、はぁ~た~すけて~が34回目、あ、こりゃこりゃ』


「いつまで続けるのっ!? うるさいのよっ!! なんのリズムっ!? イラってするんですけど!?」


「あ、出て来た」


 いつまで無視していても諦めず送られ続ける念話に根負けして外に出ると、私の思っていた通り、チャトラの取り巻きの一匹、ハチワレの姿があった。相手にしたくないけど完全無視できなかったのよ。ちくせう。


 さーて、こやつめ、どうしてくれようか。ちょっと強めに睨みつけるとハチワレは二、三歩後ろに下がる。好戦的過ぎた態度だったかも、よくないよね。改めないと。


「ごめんなさい、マルの姉さん、途中からちょっと楽しくなってきちゃって、あ、チャトラの兄ぃがピンチです」


「ついでのように」


 マイペースな奴なの。それを伝えに来たんでしょうが。


 空を見上げると雲の隙間からは月が覗いている。今日は満月だったのね。雨上がりの澄んだ空気の中、月の光がキラキラと金色に輝いている。なんとなく楽しくなっちゃう気分、わからないでもない。


「というか、さっさと用件を言うのよ。聞くだけ聞いて助けには行かないんだけど」


「とにかくまずは話を聞いてください。ちょっと長くなるんですが、前提としてはですね、この辺一帯を縄張りにしていたカラスの一大勢力に対抗するようにオウムを筆頭とする鳥連合の勢力が拡大していき、この町の制空権をめぐって、」


「3秒で」


「カラスとオウムの喧嘩に僕らは首を突っ込んだ。チャトラの兄ぃ達が囲まれているから助けてあげて」


「興味なし、さ、寝よう」


「何の時間だったのかなあ! 鳥たちが大勢集まって兄ぃ達を取り囲んでいるんです! 僕は輪の外にいて、つつかれて追い回されてここまで逃げて来たんです。とにかくどこかからワサワサと大勢集まってきていて大変なんです! 助けてください! マルの姉さんの力であいつら全部ふっとばしてください!」


「私を何だと思っているのよ!? 私が行っても何もできないのよ。なんでも暴力で解決しようとするのは駄目でしょ。穏便に話し合いをしなさいよ、話し合いを。為せば成る、成らないなら成らないで適当に。おやすみ、もう起こさないでね」


「イチゴやニコ、ぶっちゃんなんかもいるんです!」


「それを早く言いなさいよ! どこ!? あの子たちを助けに行くのよ」


 イチゴ、ニコ、ぶっちゃんというのは田辺のババの庭でよく集まる後輩の後輩猫たち。まだうまく喋れない。チャトラは本気でどうでもいいとして、彼女たちだけは助けないと。


「ああ、それを早く言うんだった! こっちです!」


 地面を駆って走り出したハチワレの誘導に従って私も走る。


 満月の明かりと雨上がりの道を照らす街頭の明かり、体を伸ばして跳ねるように走る。ハチワレじゃないけど、なんだかちょっとワクワクしてきたかも。住宅地の外れの工事現場に近づいたら、ギャァギャァとカラスたちの騒々しい鳴き声が聞こえて来た。


 こんな夜中にうるさく騒ぐと人に見つかるよ? この町に人と暮らす妖怪の端くれとして、ちょっとばかし注意してやるのよ。


「姉さん。あそこです。こっそりといきましょう」


「潜入作戦ね? 今日の私はスネーク猫なのよ、ところでなんでスネーク? ヘビ?」


「知りませんよ。……姉さん、ちょっと楽しんでませんか?」


「していないよ? わくわく」


「言葉で言っちゃってんだよなあ……あれ? すごい」


 現場に潜入する前に私とハチワレの周りに姿隠しの妖術を展開する。むふん。別に凄くもない、ちょっとした妖怪なら出来て当然の基本の妖術なのよ。特に猫の妖怪なら気配消しの妖術はおさえておかないとね。姿だけじゃなく匂いや音といった気配まで完璧に消せるのはちょっとばかり自慢ではあるけども!


「さあ行くのよハチワレ、そうね、コードネームを名付けてあげる、あなたはええと、ハチ」


「まったく意味が無いような」


 ハチワレ、もといコードネーム・ハチを伴って工事現場に集う鳥たちの囲みの隙を見つけて体を潜ませる。よしよし、まったく気づいていないようなのよ。ただでさえ鳥なんて鳥目で夜は目が見えないからね。なんでこんな暗い夜に集まっているのだろうか? 家の明かりや街灯の明かりで普通に見えるからだね。自己解決。


 いた。鳥たちに囲まれているチャトラ達、見つけた。


 囲みの中央、4匹の猫を守るようにして立ち上がって前足を広げているチャトラの姿を確認。


 チャトラと、取り巻きの片割れのキジトラは、鳥たちにつつかれまくったのか、毛並みがボロボロだ。特にキジトラが酷い。庇われているイチゴたちの毛並みは乱れていない。彼女たちの無事を確認。安心。


 私たちの潜入したサイドの囲みはカラスたちによって占められている、一番数が多い。その反対側にはオウムたち、オウムだけじゃなく他の、名前もちょっと出てこないような鳥たちもいて、その代表といった感じの二体が前に出てきてる。体の大きなカラスとオウム? オウムをまじまじと見たことがなかったかも。というか、何でオウム?


 カラスとオウム、それからチャトラの猫の3匹は何かを言い争っている。



「クソが! てめぇら、実は仲がいいんじゃねーのか? お?」これはチャトラ。いつものアホ。


「仲など良くはない。我らの争いに介入した地を這うものよ。失せぬのならば、せめて口をつぐみ伏せているが良い」静かで力強い感じの男の声で喋るのは、他より一回り以上も体の大きなカラス。わざわざ他人の喧嘩に割って入ったチャトラはアホ。


「バッカじゃないの? こんなカラスなんかと仲が良くてたまるもんですか! とにかくこの場ではお前が一番の目障りだわ。猫が邪魔しやがって! 前から猫にはムカついていたのよ! カラスたちを駆逐する前にお前たちから排除してあげる!」好戦的な感じのする女の声で喋るのはオウム。排除するのはアホチャトラだけにして。


 羽を広げたオウムがチャトラに攻撃を仕掛ける。相当に素早い。チャトラは猫パンチで迎撃しようとするも腕はスカる、盛大に頭をつつかれて、のけ反るアホチャトラ。もっとやれ。のけ反りつつも、すぐさまオウムに追いすがろうとするチャトラをけん制するカラス、そんなカラスまでを攻撃しようとするオウム、オウムから離れるカラス。結果、3匹は元の位置へ。


 ボスたちの喧嘩を見物している取り巻きの鳥たちがギャー、ギャー、ワー、ワー……。



 結論、チャトラはアホ。


 どんな理由で間に入ったのかは知らないけど、三竦みってやつになっている。むしろニ対一で不利なのでは? そんなアホチャトラはほって置いて、問題はアホに庇われる形になっている彼女たち。


 ここから連れ出して逃がしてあげるのは簡単だけど、どうして彼女たちがここにいるのかも気になる。さて、どうしよう。





ついに猫又検定にバトル展開が!?

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