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その27「ねこねっとの中の猫」パート1



「ちょうどよかったっす、先輩に用事があったんで」



 ひとしきり笑った後のこと。四畳半の部屋の畳の上に、陸にあげられた魚の様にぐてっと横たわった私を放置してしばらく、十分に時間をとった後輩猫ちゃんは切り出してきた。あー、笑った。一生分は笑ったのよ。後輩猫ちゃんは私の知らないうちに自分で自分用のお茶を入れている。勝手知ったる他人の固有空間ね。


 して、用事とは? 思いつかないけど。


「何? 後輩ちゃん、告白でもされた?」


「なんで唐突にそんな話になるんすかね?」


 笑い疲れて痛くなったお腹に手を当てながらむくりと起き上がり、コタツの向こうに座る後輩猫ちゃんに話しかける。


「チャトラのアホ猫に、自分、モテるんでー、見たいなこと言ってたよね? くすくす」


「いつの話っすか!? そういえば言った記憶があるっすわ! 言った後、しまったって思ったっすもん! もう忘れるっす! じゃなくて、あっしの恋バナとかどうでもいいんすよ」


 コタツの天板をバンバン叩いて話を続ける後輩猫ちゃん。自称モテ猫である綺麗な白猫の顔を改めて見る。両目が違う色だと雰囲気あるよねー。


「つい、この前の常世寺での話っすよ。もう忘れたんすか先輩。先輩の頭は猫じゃなくて鳥っすね、鳥」


「火輪姐さんのコンサート、凄かったよねー」


「凄かったっす! あれは伝説になる夜っす! でもなくて、ねこねっとっすよ、ねこねっとの契約するのに担当の猫又の方と今日会うんすよ。常世寺で。常世の大御所の紹介で。先輩も付き合ってくれるって言ってたのを忘れたっすか?」


 そういえばそんな話もしたと思うの。火輪姐さんのコンサートの印象が強すぎて忘れてた。正直すまんかった。


「まだ明るいけど、常世寺に行ってもいいっすかね? ちょうど昨日であっしも20歳を超えたし」


「さらっと重要なことを言ったのよ。え!? 後輩猫ちゃん、昨日が誕生日だったの!? 言ってよ! お祝いも出来なかったじゃない。今からやろうか?」


「あ、そういうの、本気で結構なんで」


 前足をブンブン横に振って心底どうでもいいような態度で応える白猫ちゃん。悲しいこと言うのよ、誕生日とかどうでもいいという気持ちはわかるような気もするんだけどね。誕生日を気にするのはどちらかというと人間の習慣だからね。猫にとっては日付自体にこだわることは少ないのよね。


 私は兄弟と3匹いっしょにご主人に拾われたという経歴を持つ捨て猫だったから、誕生日については11月頃としかわからない。うーん、そうか、後輩ちゃんの誕生日はこの時期だったのね。後輩ちゃんには後で何か考えてプレゼントを送るとするの。


「昼に常世寺に行っても、常世のおばあさん寝てるよ。けど、ねこねっとの猫又さんはもういるかも」


 猫というのは日付にもいいかげんな所があるけど、時間にもいいかげんなものなのよ。もういるかもしれないし、いないかもしれない。


 常世寺に様子を見に行くことになった。





「うわ、びっくりしたにゃー!」


 固有空間の出口を常世寺にして出ていくと、そこには見知らぬ猫がいた。喋っているので普通の猫ではない。


 人に固有空間から出てくるところを見られてもいいようにと植え込みの陰を出口にしている。そこから出て来た私たちが、ちょうど見知らぬ猫の背後に突然現れた形になったのね。驚かせてごめんなの。


 見知らぬ猫は白地にちょっとだけの三毛。三毛成分の多い私とはタイプの違う三毛猫ね。そしてふくよか。体重の方もだいぶありそう。お風呂に入るとスレンダーな私とは違うみたい。



「えと、こんにちは。ねこねっとの猫又の方ですか?」


 私が話しかけるとビックリして固まっていた猫は口を開いた。


「にゃー! おみゃーさんがとこにゃーの言ってたご新規さんかにゃー? そーにゃー! にゃーがねこねっとの仕事してるにゃーにゃ。にゃーはにゃん吉という猫又にゃー。よろしくにゃー。にゃしてもびっくりしたにゃー。うとうとしてた時にふいうちにゃ。いきにゃりにゃからついかたまったにゃー」



 にゃあ語がキツくてよく聞き取れない……



 そしてこの話し方には聞き覚えがあるのよ。ねこねっとの「ねこラジヲ」という番組の司会だかアナウンサーだかをしていた猫又。にゃあにゃあ言うのが気になって内容が入ってこないのよね……


「新規の契約するのは私じゃなくて、こっちの子なんだけど……」


 新規という部分はなんとなく聞き取れたので多分あってる、と思いつつ後輩猫ちゃんをそっと前に押し出す。後輩猫ちゃんは人見知りモード発動で「どうも」とだけ返す。不機嫌ツンツンガールなのよ。



「そうにゃー、おみゃーかにゃー。よろしくにゃー。にゃけどマルにゃーというにゃーにもよーじがあるにゃー。マルにゃーはおみゃーでえーかにゃー?」



「にゃあ語を少なくして貰えませんか!? 聞き取れないの! あとマルは私であってるの、多分!」


「うにゃあ……。にゃあのこれは、昔はここまでじゃにゃかったんだけど、キャラ付けのためににゃあにゃあ言っていたらこっちが素ににゃっちゃったという……努力してみるにゃあ……」


「キャラ付け」


 この猫又さんはどういう過去を持ってるの。ちょっと気になるけど、これじゃあ会話にならないのよ。あと、すぐに移りそうで怖い。というかすでに移りかけている。やばいにゃー。



「ええと、にゃん吉さん、で合ってるよね? にゃん吉さんはねこラジヲを作っている猫又さんなの?」


「それにゃー! マルにゃーにはその話で相談があるにゃー。とこにゃー……常世のお婆に面白そうな猫はいにゃいかと聞いたらマルにゃーの名前が上がったにゃー」


 後輩ちゃんのねこねっとの契約の付き添いに来ただけなのに、なんだか変な方向に話が行きそうなの。


 面白そうな猫で私の名前が? なんで?





しばらく雑談回が続きます。

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