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その19「女子猫会とマルのダンス」



「――でね、ねこラヂオっていうのがあってね、それがもう酷いのよ、体操とかもあってね、にゃーにゃー言うばかりで、これ、どう動けばいいのって」


「ほー」


「へー」


「……にゃは」


 月の綺麗な夜。今日は田辺のババの広い庭にて女子会を開いている。私の話を真剣に聞いてくれているのは、つい先日、初雪姫(はつゆき)という大層立派で可愛らしい名前が判明した後輩猫ちゃんよりも、もっとずっと若い後輩ちゃんたち。


 猫という生き物が人間のしゃべる言葉をなんとなーくでも理解し始める時期は、人が思うよりも結構早い。10年も人と一緒に生きた猫なら大抵の言葉の意味はわかってる。しゃべれるかどうかは猫次第なんだけど。後輩の後輩ちゃん達はようやくしゃべれるようになったばかり。だから言葉足らずの時があって、とっても初々しいの。体は立派な大人猫なんだけどね。


「ねこねっとっすか? あれ、猫又検定に必須なんすよね? どうやって契約するんすか?」


 いつもの後輩猫ちゃんもいる。名前を呼ぶと不機嫌になるので後輩猫呼びなの。


「あれ? 初雪姫、じゃなくて姫、じゃなくてお嬢、じゃなくてはっちゃん、じゃなくて後輩猫ちゃんは、ねこねっとの契約はまだだっけ?」


「呼び間違いに悪意を感じるっす!」


「契約は簡単なのよ。誰でもいいから猫又に紹介してもらうの。私は常世(とこよ)のおばあさんの所に出入りする猫又に紹介してもらったの。それで契約の担当者がやって来てちょちょいと登録するのよ。来年の検定を受けるなら早めに契約しておくといいのよ。シメサバさんでいいんじゃない?」


「シメさんに頼むのはなんかイヤっすね。そもそも、あっしが検定を受けるかどうかもまだわかんねーっす。話を総合すると受かっても大した特典はなさそうだし、猫又の称号にもこだわりはねーっすから」


「ふ、そうね、試験に落ちた時のショックはプライドの高いあなたには耐えられないでしょうね。けど不合格仲間が増えるなら嬉しいから受けて欲しいのよ」


「落ちた先輩を笑うためだけに受けて確実に合格してやることを、今、決意したっすw」


「にゃはw」


 不合格仲間が増えるのは増えるで嬉しいけど、そうはならないでしょうね。最近もめきめきと妖力を伸ばしつつある才能ある白猫ちゃんだもの。


「ダンスがどうのこうの言ってたのはどうなんすか? 試験内容にダンスがあるんすよね?」


「それなのよねー。正直なところ、どうやって上手になればいいのかさっぱりわからなくて困っているのよ」


「そのダンスとやらを、ちょっと見せてくださいっすw どんなダンスをするんすか?」


「普通のヒップホップダンスだけど……」


「ヒ ッ プ ホ ッ プ !! www攻めるっすねw 興味しかないw」


「……いいわ、見てて」


 ごくり。あんまり他人に見せたくないけど、見てもらわないと何が駄目なのかもわからないからね。覚悟を決めて、少し開けた場所に移動して二本足で立つ。れっつダンスなの。



 先ずは心から。思い込みが大事よ。いい? 私はダンサー。月明かりに照らされるヒップホップダンサー。


 腕を上げる、そして下ろす。にゃー。


 足はそろえて、いや、開く、閉じる。


 腰から回転、慎重に、大胆に、伸び!


 天に届くように伸びる!


 地面から生えるように!


 前足で空を! 後ろ足で大地を!


 繰り返し! 繰り返し!


 ラストー!!


 ジャーンプ! うにっとして、にゃー!


 猫又検定でも披露したダンスを全力でやり切ってやった。最後はちょっとアレンジを加えたけどね! ふー、ふー。



「どう?」


「笑ってやろうと待ち構えてたっすけど……これは……想像以上にひどいっす……笑えないレベルっす……」


「どこが悪かったのかな?」


「どこがって……あげられないっすよ……何もかもとしか……」


「こわかったー」


「まるねえさん、ひどかった」


「…………にゃ」


「そもそも、音楽ナシでヒップホップを、いや、あれをヒップホップとは認めないすけどw 無理があるっすw 先輩の動きw 表情w あ、やばw 今更になってジワジワと笑えてキタっすw 時間差www」


「きゅうに止まるの、へん。きゅうにバタバタするのも、へん」


「にゃはは」


 ぬー。後輩ちゃんと後輩の後輩ちゃんたちが一斉に笑う。これはさすがに私でも恥ずかしいのよ。うー。



◇田辺のババ


(うるさいねえ)


 うちの庭で猫たちが何匹かで集会を開いてるね。こういうのも久しぶりだね。冬の間は静かだったんだけどねえ、暖かくなったからだろう、猫たちも元気なもんだ。何をしゃべっているのかは最新の補聴器を付けても聞き取れないが、楽しそうに笑っているのだけはわかる。


(クッキーでも差し入れしてやろうかね?)


 しかし相手は気配に敏感な猫たち、逃げられたら悲しいし、せっかくの集会を邪魔するのも悪い。本当は自分も集会に混ざっておしゃべりでもしたいんだけどね、まぁ無理な話だ。


 食べるなら食べるでよし。湯島さんとこの化け猫もいるようだし、逃げることはないかね。


 よっこらせっと。布団から起き上がり、音を立てずにクッキーの準備をする。買い置きの市販品だけどね。喉も乾くだろうから猫用のミルクも置いておこうかね。それにしても楽しそうじゃないかい。仲がいいこった。庭の化け猫どもは一体どんな話をして盛り上がっているんだろうねぇ?



「先輩のそれは呪いか、そうでなかったら病気っすw 誰かお薬持ってないっすかwww」


「のろいのだんすー。ぐねぐねしてた。こわかったー」


「まるねえさん、びょうきー」


「…………おくすり、もってない」


「真剣な表情なのが一番のツボっすw 腹が痛いw」


「にゃははは」


 コイツら、人が弱っていると見るや、一斉にイジメてくるのよ。泣くわよ。にゃー。




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