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その10「進撃の幼女とハンバーグとあづきの買い物」



 ちりんちりんと鈴の音を鳴らして買い物に出かけていた同居人たちが帰宅する。


 ぅふにゃーーお、と鳴いて「あくび」と「お帰り」を一つの挨拶で同時に済ます。昼寝をしていた座布団から降りて、のびーー。ふぃー、ガッツリと寝たのよ、これじゃあ夜は寝られないかもしれない。あづきは忙しそうに再び出ていった。回覧板ってやつね。


 娘ちゃんの足に頭をすりすりしてご機嫌伺い。最近どうよ?


 娘ちゃんは私を撫でくり回す前に手洗いとうがいをするようね。母親に言われる前にできるなんて偉いね。ちゃんと成長している。洗面台の前に備え付けられた椅子の上に立って不器用にうがいをする幼女。そのままヨロヨロと後ろに倒れそうになる。あぶないのよ。


 彼女の後ろの空気を妖術でふんわりと固めて背中を支えてあげる。そそのかしいったらないのよ。


 手洗いとうがいを終えた娘ちゃんが「猫さん!」と言って上から急に迫る。うわ迫力あるなぁ、と思ったのも一瞬、幼女ちゃんは洗面台の壁に頭をぶつけてしまった!


 一瞬きょとんとしてから泣き出す幼女。結構な音がしたからね。痛かったんだね。あー、もう、少し落ち着きなさいよ。


 床に座り込んでワーンワンと泣き出す幼女の横に陣取って座る。はー。成長したなって思ったらこれだもの。自慢の長くて立派な縞々尻尾を娘ちゃんの膝にのせてパタンパタンとリズムをとってあげる。


(はいはい泣きなさい泣きなさい。子供は泣くのが仕事なのよー)


 これぐらいの子供になると、もうしっかりと言葉をしゃべるからね、うかつなことは言えないから喋ってあげられないのよー。心の中で、はい泣きなさい泣きなさいといいながら、尻尾をパタンパタンと彼女の膝に打ち付ける。昔はこっそり子守歌とかも歌ってあげていたな、なんてことも思い出す。パタン、パタン。


 母親が帰宅する頃にはもう泣き止む寸前だった。母親にもあやされて、むしろご満悦な幼女。あっという間に進撃の幼女が復活。ドタバタドタバタ……


 子供のしつけはあづきのお仕事なのよ。落ち着きのある幼女に育ててね。幼女でも猫から見れば体格が大きいから、急に迫られたり追いかけられたりするとこっちはけっこう怖いんだから。



 今日の夕食はハンバーグを作るみたい。人が料理をしているのを見るのは最近の私の趣味。階段の真ん中に陣取るとキッチンが見渡せてちょうどいいの。


 ハンバーグは大人も子供も大好きな料理よね。


 あづきの作るハンバーグには豆腐が少し入る。さらに細かく刻んだ玉ねぎやシイタケなんかもたっぷり入る特別仕様。野菜を野菜のまま出すと食べない娘ちゃんでも、こうすると喜んで食べる。ひき肉と卵、パン粉と後は控えめに香辛料をパラパラと。手でコネコネしている母親を見て、自分も自分もと言ってやりたがる娘ちゃん。


 椅子の上の幼女再び。そしてハンバーグのタネを、こねくりぺったん、こねくりぺったん……大丈夫かしらね。食材で遊んでない?


「猫さんもこれ食べるー?」


「玉ねぎが入っているから無理かなー」


 玉ねぎが入っていても行けますよー? おいしく頂けますからー。ああ、私の言葉は人には届かない。彼女たちと同じ食卓を囲んで、同じものを食べる未来は……来ないのよ。


 最後はあづきが仕上げ。形を整えて焼き上げて完成。あづきも料理の手際が良くなってる。うん、褒めてあげるの。ご主人と結婚した頃のあづきのハンバーグ、中までまったく火が通ってなくて、お皿の上が生煮えの血で赤く染まったあの衝撃的な映像を、私は忘れられそうにない。


 ハンバーグの付け合わせにサラダ、それから味噌汁。ごはんも炊けた。いい匂い。


 ご主人の遺影が置かれた仏前に炊き立てのご飯を少しお供えしてから、あづきたちの食事が始まる。子供が嫌いなものを無理やり食べさせるんじゃなくて、自分がおいしく食べる所を見せつける。あづきの食育っていうの? うん、ずいぶんと長い目で見る教育だなーて思うけど、嫌いじゃない。将来、どうなるかしらね。楽しそうに食べている二人を見ると……もうね。


 おいしそう。じゅるり。


 今度、人に化けてどこかのレストランに食べに行こう。そうしよう。



 ぬあ、油断した。ドタドタ近づくだけじゃなく気配を消して忍び寄る技も覚えよったぞ、この幼女。


 食事を終えて後は寝るだけの幼女に脇の下を掴まれて持ち上げられる。おうおう、雑に扱うでないわ。ニコニコ幼女は自分の手柄を見せつけるようにして母親に報告する。


「ママー。猫さん、おもちーー」


 お餅ではないわ。吹き出す母親。おうおう。笑うなや。


「まーる、まーる、まんまるまーる、まるのまーるはまんまる太陽ー♪」


 やめれ、その歌はやめれ。私を丸い満月に例えやがったあのアホ猫又を思い出しちゃうでしょーが。


 解放された私はよろよろと座布団へ。おうおう、あづきさんよ、こっち見て笑んなやー。



 夜、娘を寝かしつけたあづきが両手を後ろに隠して近づいてくる。


 あづきの様子が、ん? 何? あやしい。すごくあやしい。


「マル、あの子も寝たから……」


 頬を紅潮させたあづきが何やらおかしな発言をしはじめたぞ? 警戒して見上げる私の前で、後ろに組んでいた両手を広げて見せる。


「じゃーん。ペットちゃん昇天! モフりまくり君ハンド両手用!」


 何それーーーーっ!?


 見ると手袋とブラシが一体化しているシロモノ。彼女のぐねぐねと動く指に合わせてブラシもぐねぐねと動いている。気色悪いんですけど!? 警戒を一段引き上げた私ににじり寄ってくるあづき。まて、まって。


 ブラッシングは確かに好きよ。気持ちいいから。けど、それ、手袋がブラシになってるの? グネグネと自由に動いて? しかも両手!? そっ、そんなの、そんなのされたら私、どうなっちゃうの?


 逃げようとしても足が動かない。ごくり。ついに私はあづきの両手に付けられたペットちゃん昇天モフりまくり君ハンド両手用に捕まるのであった。そして、


 え? やさしい!? ……片手をそっと顎の下に添えられて、背中をやさしく撫でられる。


 まー、別にこれなら、いつもと変わらないブラッシン……んぁぁん!? あっ顎の指が動くのぉ。ぬあああん!? せ、背中の指もうごくぅう。そんあにグリグリしちゃあ……ふああん! 全身がブラシに、ブラシに包まれてるぅ、ぁふぅ、そえが動いてぇ、ふにゃあん、ゆっ、指先っ!? にくきうぅ!? 頭から背中ぁ、背中から尻尾の先までえ、やあああ…………


 はぁ……はぁ……


 思うさまに蹂躙されまくって……疲れた。


 寝よ。今晩はぐっすり寝れそう。


 おやすみ。また明日。





深夜のテンションで書いたものを朝、見なおしてみると……面白いよね!


↓リンクを張ってみるテストを兼ねて自作の宣伝など……


終末、なにしてる?

https://ncode.syosetu.com/n5155hv/

猫又検定とは雰囲気の違う作品。

ルナティックモードで生きることを余儀なくされた少年少女たちの物語。

ボイコネの応募作品です。興味があればご一読ください。


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