その9「娘と買い物とスガキヤと」
舞台を日本三大化け猫伝説の一つがある愛知県の岡崎(修正)、にほど近い町、と設定。
※企業名や地名など、問題があれば削除、変更いたします。
(勝手にご当地コラボってどこまで許されるんでしょうね?)
◇湯島あづき視点
バスに揺られて15分。大型のショッピングモールに娘を連れてやってきた。
最近ではネットで買い物を済ますことが多くなりつつあるとはいえ、やはり商品を手に取って買いたくなる。これからは私のような人は古い人間なんていわれちゃうのかしらね。時代の進歩を感じる。いや年寄り臭い。自重。
今日の買い物の目的である春先に入用な物のいくつかを商品棚からカゴに入れる。ゆっくりとカートを押して陳列棚の並ぶフロアを進んでいく。何でも自分でやりたい盛りの娘の亜美がやたらとカゴを押したがる、けど、まだちょーと早いかなー。危ないからねー。カゴの主導権を娘と水面下で争いつつもペットコーナーに到着。
この前に買った、猫が突進でお馴染みのウェットフードはマルに気に入られていたな、彼女の喰いつき具合を思い出しながら巡回。いつものドライフードのカリカリと一緒に購入する。猫砂はどーしよっかな、ちょっと安いけど、重いし、いつも通りネットで注文しようか。
ふと棚にある商品に目が行く。
『ペットちゃん昇天! モフりまくり君ハンド両手用』とある。手に取って見るとそれは手袋とブラシが一体化したシロモノ。手袋の指から手のひらに掛けて少し硬めの短いブラシが全面に張り付けられている。ちょっと想像してみる、これでマルを撫でまくったら……
購入。
ふふふ、最近マンネリ気味のマルとのスキンシップをこれで打破、いやどこの欲求不満主婦よ。馬鹿。
◇
ここに来た時にはスガキヤでラーメンかソフトクリームのどちらかを食べるのが定番になっている。亜美も大好きでスガキヤ一択である。私も子供の頃、親に連れられてよく食べに来ていたのを思い出す。
フードコートに席を確保してカウンターで注文。ベルで完成の知らせを受け取り、カウンターに商品を取りに行って席に着く。今日は普通のラーメン。二杯。
これこれ、豚骨と魚介のダシが効いたスープに柔らかな麺。上に乗っているペラペラのチャーシューも他で代用の聞かないモノ。スプーンとフォークが一体化したこれは……ごめんなさい、使いにくいので箸で。
スガキヤのラーメンにはコショウをたっぷりかけて食べるのが好き。娘がまだ今より小さかった時には一杯を分け合って食べていたからコショウは入れられなかったけどね、彼女はもう普通に一杯食べる。はふはふ言いながら、フォークとスプーンの一体化した物を使って不器用に麺をすする、何でもない娘の姿に胸を揺さぶられる。大きくなった。
この子もこの味を覚えて、いつか将来の彼女に子供が出来たときに、いっしょに連れてきて親子で食べるのだろうか? こうして東海県民のDNAへと刷り込まれ受け継がれていく……
そういえば東海県民のソウルフードと言っていいスガキヤだけど、学生の頃、他県から来た人と話してスガキヤが全国区で知られたものじゃないと知った時は結構驚いたものだった。
◇
ちりんちりんと鈴を鳴らしながら帰宅。ふぃーちかれたびー。娘もマネをして「ちかれたびー」と繰り返す。おっと、変な言葉を教えてしまった。娘はたまに、それどこで覚えたのって言葉を話してビックリさせてくるときがある。5歳児、恐るべし。普段の言葉遣いには気を付けないとね。
家に荷物を置く。ぅふにゃーーお、とマルの気の抜けた鳴き声。マル、ただいまー。ポストに入っていた回覧板を確認してハンコを押す。回覧板を次の人に回すために再び外へ。
ちょっとばかり長話になってしまった。いい人なんだけどね。ひとり親だと大変だろうひとり親だと大変だろうと繰り返し言われるのはちょっとね。気をかけてくれるから、ありがたいんだけどね。こういうの、なんていう感情なのかしらね。
帰宅すると娘が泣いていた。あらあら、どうしたのかな。娘は涙をポロポロ零しているが、もうそろそろ泣き止もうかって雰囲気を出している。横にはマル。まるで寄り添うように、ようにじゃないわね、娘に寄り添っていてくれている。娘の面倒を見ていてくれたのね、いつもありがとう、マル。
荷物を片付けているうちに、娘はさっきまで泣いていたのが幻か何かだったかのようにコロっと態度を変えて、笑いながら家の中をドタバタドタバタと走り回っている。コレ、どうやって大人しくさせればいいのやら……教えてマル。
◇
夕食はハンバーグ。
娘は子供にありがちな野菜をなかなか食べない子、けど私は食べることを強制はしない。私自身、嫌いな食べ物を無理やり食べさせられて、そして今でもそのいくつかは食べようと思えば食べられるけど、嫌いで苦手なままだ。今の時代は色々と、いい意味での子供騙しの食品が多くあるしね、何を隠そうそのハンバーグにも、それから、いつもおいしく飲んでお替りまでするそのジュースにもお野菜の成分がたっぷり入っているのだ。ふふ、子供よ、そのまま騙されているがいい。
娘が嫌がっても食卓にサラダは出すし、私は食べる。子供の前でおいしく食べる。おいしい、おいしいってこれ見よがしに言って食べる。うん、おいしい。いつかあなたも、おいしく食べてね。
夕食を済ませて、歯磨きも済ませた。あとはゆっくりとして寝るだけ。
ふと見ると娘が猫を持ち上げている。マルのわきの下を掴んで上に引っ張り上げている。マルがお餅みたいに伸びている。ぷっ。
マルは普段はこじんまりとしているが、ぱっと見よりも大きな猫だ、幼児が胸元まで持ち上げても足はついている。そのポーズのまま、お腹をこちらに見せながら、私を睨むマル。その眉間の模様がいつにもまして不機嫌な様相を醸し出している。駄目だ、笑える。びょーんて。眉間にしわよせて、いや柄だけど、こっち見て。目が合って。可愛すぎるのでは?
「ママー。猫さん、おもちーー」
「ぷっ」
「まーる、まーる、まんまるまーる、まるのまーるはまんまる太陽ー♪」
娘が自作の歌を歌いだす。娘に釣られてゆっくりと左右に揺れるマル。
彼女の眉間のしわがますます深まった気がする。確実に目が合ってる。可愛い、じゃなくて。これは本気で嫌がっている感じだ。
「こら、駄目でしょ。猫さん嫌がってるよー、亜美ちゃん離してーって、やさしくしてあげて」
解放されて、よろよろと座布団に戻っていく姿も可愛すぎる。
◇
娘を寝かしつけてリビングに戻ってくる。
「マル、あの子も寝たから……」こちらを見上げる猫の前に今日買ったグッズを披露する。『ペットちゃん昇天! モフりまくり君ハンド両手用』
警戒するマル。「きっと気持ちいよ」さらに警戒を深めるマル。「怖がらないで……」近づき、問答無用で襲ってモフりまくる。
マルぐったり。私もぐったり。
はー、今日も疲れた。寝よう。
おやすみ、マル。
また明日。
この作品に初めてブックマークと評価が付きました!
ありがとうございます。嬉しいものですね!
あなたのために書き続けます!(-"-)




