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女剣士エルザが行く王女救出の旅  作者: あんことからし
1.エルザの弟子入り
8/85

第8話 冒険者リリス


冒険者のリリスは、リールの冒険者ギルドに所属するAランクの冒険者である。


冒険者という仕事は、元々遺跡などから財宝を発掘するところから始まったと言われているが、今のこの国では、魔物の討伐や盗賊からの護衛といった荒事への対処が多い。リリスはその冒険者の中でも群を抜いて依頼の達成率が高い冒険者だった。


身長はやや小柄で155cmくらいだが、筋肉質の引き締まった身体をしている。割りとぴっちりとした伸縮性のある動きやすい上着を着ていて、足首まで隠れるようなロングスカートを履いていた。


美しい青い髪を腰まで伸ばしていて、それを赤い魔石の付いた髪留めを使って後ろでまとめていた。顔立ちは丸顔で、大きな青い瞳に小さな鼻、ぷっくりとした唇をしており、一般的にはとても可愛らしい顔をしているのだが、剣士としては幼く見えるため、本人は非常にコンプレックスを感じているようだった。


それもそのはず。


リリスはリールにある西神流剣術道場の、師範ダグラスの娘で、道場では四天王のひとりに数えられる腕前なのである。四天王に数えられるのも、単に師範の娘だからではない。剣の腕前も一流なうえ、その攻めに容赦がないのだ。ゆえにリールの街では"戦闘狂リリス"と呼ばれ、恐れられていたのだった。


「冒険者ギルドの依頼では、リールの盗賊がこの村で悪さをしているということだったが……」


リリスは冒険者の仕事で、ゴント村に調査しに来ていたのだった。


「まあ、鉱山から出る希少金属が飛ぶように売れているからな。そのあたりに目を付けたのかもしれないが……まあ、調査は始まったばかりだ。報告期限はまだ1週間はあるから、明日は地道に聞き込みに回ることにしよう」


リリスはそんなことを考えながら、窓辺へと向かった。


リリスが泊まっている宿は、村で唯一の宿で部屋は2階だった。


「遠くの山は、アルカンディア山脈か……綺麗なものだな」


そんなことを思いながら、リリスがぼんやりと窓の外を眺めていると、前の広場でなにやらせわしなく走り回る男たちの姿が目にはいった。


「ん?……何だか外が騒がしい気がするが……」


そんなことを考えていると、なにやら扉の向こう側からガヤガヤ騒がしい音が聞こえてきて、階段をドスドス上がってくる音がした。


建物から、女たちが駆けだす姿が見えた。そして、リリスの姿を見ると、手を振って何か危険を知らせているようだった。


「……何かあったのだな?」


リリスは振り向いて扉の方を見た。そして、何やら不穏な空気を察して、腰に剣を差した。


ドスドスとした大きな足音は、リリスの扉の前で止まり、何やら男2人がやいやいと言い合っているのが聞こえた。何を言い合っているのかはわからないが、招かれざる客であるのは確かだ。


リリスは懐に隠し持っていた鉄球を取り出して投げる構えをした。


その時、ノックもなしにドアが開いた……というか蹴破られたのだ。


そして、見るからに盗賊と思わしき2人の男が入ってきて、リリスの方をいやらしい目つきで見た。


リリスの中で彼らはすでに敵認定されており、構えていた鉄球を思い切り投げつけていた。全力で振りかぶって投げたその鉄球は、扉を蹴破った男の、間抜けな顔へとめり込んで、右目を潰しながら男を床へと撃ち落とした。


「おい!グレン!大丈夫か!」


慌てたのは盗賊・ガイの方だ。グレンの顔にめり込んだ鉄球を見て、ガイは慌てて部屋から出て逃げようとしたのだが、その時にはもう、リリスはガイの背後へと接近していて、鞘ごとガイの左耳の後ろあたりを叩きつけていた。


「痛ってえッ!」


耳の後ろは急所である。そこを強打されたガイは床へひっくり返って倒れ、無様にもリリスに腹を見せていた。


「えいっ!」


リリスはその腹の、胃袋のあたりへ鞘の先を突き刺した。


「おえええっ!」


腹を突かれたガイは、口から吐しゃ物を吐きながら、のたうち回った。


「相手をなめすぎだ、馬鹿ものめ……」


リリスはそう言って、ガイを足蹴にした。


「フフフ、私が探していたものが、向こうからやって来るとはな……。さあ、今どういう状況なのか、すっかりと話してもらおうか。言っておくが私のやり方は容赦ないからな……覚悟しておけよ……」


そういうと、リリスは不敵にも笑ったのだった。


ガイは恐ろしさのあまり、真っ青になっていた。


先ほど、広場から窓越しにみた彼女は、まるで狩られるのを待つ小動物のように見えたものだったが、今はその真逆。


まんまと疑似餌に釣られてワニガメに噛みつかれた魚のようなものだった。


ガイは叫んだ。


「助けてくれ! 命だけは!」


「命乞いか? 聞かれた事を全部話せば聞いてやらんでもないが?」


ガイは泣き叫んだ。


「言えねえ! 言えねえんだ! 言ったら俺は殺されちまう!」


「何が言えないんだ? 誰に殺されるんだ?……言っておくが、言わなければ今殺されるのだぞ? そんな先のことを考えている余裕が、今のお前にあるのか? どうなんだ!」


そういうと、リリスは平手でガイの顔をビンタした。


バチーンといい音が鳴った。


「ひいいいっ!」


「どうした? たかが女の平手打ちではないか。そんなに痛いのか? 男のくせに情けないな……。さっき殺されるといったな? 今殺されるか、後から殺されるか……どちらにせよ死ぬ運命なら、とりあえずは今を生き延びる方を選んだ方がいいと思うがどうだ? おい……聞いてるのか!」


リリスがそう言って拳骨でバキッと鼻っ柱を殴りつけた。するとガイは眉根を八の字に寄せて痛そうに呻いた。


「わかった……しゃべる……しゃべるからちょっと待ってくれ!」


「いや待てんな! すぐ話せ!」


そう言ってリリスは剣の鞘で腹を叩いた。


「私は気が短いんだ!」


「あああ……」


とうとうガイは泣きだしてしまった。


泣きながら……早くしゃべらないとまた殴られると思うと、涙をぬぐうこともなく話し出した。


「……俺たちは、黒の蝙蝠のもんだ……今日は50人で金品を奪いにこの村へ来た……」


「黒の蝙蝠だと? お前らリールから来たのか? それも50人だと? 村を潰すつもりか?」


「村長のチャドの家と……鉱山長カーティスの家が目的ですぜ……残ったやつらで虱潰しに押し入るって話で……」


「その2軒に主力が向かっているのだな? で、お前はここで何をしていた?」


ガイは黙りこんだ。


すると、間髪を入れずリリスのパンチが飛んだ。


「お……ほほほぉぉ……おい、おい……」


「何情けない泣き方をしているんだ! 殴るぞ!」


「……やめて……やめて……」


「殴らないからさっさと言え!」


「……女を攫おうと思って……」


ガイが言い終わるか終わらないかのタイミングで、リリスのパンチが飛んだ。


「痛ったい! 叩かないって言ったのに!」


「うるさい! 貴様、私を攫おうとして2階まで上がってきたのだな? この外道め!」


「すみまぜん……」


その時、突然リリスは鼻を鳴らして、臭いを嗅ぎだした。


「なんだ? この焦げ臭い臭いは……」


そう言って、リリスはガイを睨みつけた。 


「ひいい、怒らないでください!……ここに来る前に下で暴れていたら、台所で火が上がりました……」


「お前は馬鹿なのか? それで、火も消さずに上へあがって来たのか!」


「あいつらが消すと思ったんでさあ……」


「お前らみたいな無法者が入ってきたら、すぐさま逃げ出すに決まってるだろ!」


リリスが扉を開けると、もう2階の階段あたりまで火が上がり始めていた。


「なんてことしやがるんだ……」


リリスは手早く荷物をまとめると、2階の窓から放り投げた。そして、窓に手をかけるとためらいもなく飛び降りて、着地とともに前転して転がり、その勢いのまま立ち上がった。


周りには、火事につられて人が集まって来ていた。リリスは彼らに向かって叫んだ。 


「50人もの盗賊が暴れているぞ! 今、村長と鉱山長の家が襲われている! 私はそこへ向かうから、村に残っている男手を集めるんだ! それから誰か鉱山へ使いを走らせろ! 盗賊たちはすべての家へ押し入るつもりだ! 女子供は家に帰らず村の外へと逃げて隠れておけ! 」


そういうと、リリスは、手荷物を背負って走り出した。




村長の家では、リビングのテーブルに酒瓶を置いて、フォルトとタッカーがふんぞり返って椅子に座っていた。


フォルトはウイスキーをグラスに注いで、ストレートでグイグイ飲んでいる。


「村長ともなるといい酒を飲んでいやがるな。……おい、金目のものは見つかったか!」


フォルトがそう叫ぶと、すぐさまデニスが走って来た。


「金庫に金貨がたっぷり入ってやしたぜ」


「ようし、でかした。それはどのくらいだ?」


「へえ、金庫にはチャドの私物と、村の共有資金が入っておりやした……合わせると結構な額になりやす……へっへっへ……笑いが止まらねえほど金貨がありやすぜ」


「ほう、それはそれは……来た甲斐があったというものじゃないか」


「それと、頭領が言ってた金杯がありやしたぜ。玄関で花瓶として使われてやした」


「ほう!そいつはいい。ボーナス、ゲットだな」


「へい、その通りで」


「よし……じゃあ、お前はそいつ持ってメスラーの旦那ん所へ走れ。それからドルーに荷車係を呼びに行かせろ」


「へい……わかりやした」


「それから……ガンツ! 2階に女はいたのか?」


「へい、2階に村長の娘がいやした」


「連れてこい」


「へい、ちょいとお待ちを……」


ガンツが奥の部屋へ入り、母親にすがりついている娘のもとへ近寄っていった。


ガンツが母娘に近づくと、見るからに恐怖で硬直していくのがわかった。


「おい、娘の方は俺と一緒に来るんだ」


ガンツが少女を連れて行こうとすると、母親のガラがガンツに追いすがった。


「待ってください!お金は全部持っていってくださって結構ですから、娘は勘弁してください!お願いです!」


「うるせえ!すっこんでろ!」


そう言ってシリルはガラを蹴り飛ばした。


「あああっ!」


ガラは蹴り飛ばされ、床へと叩き落とされた。


「お母様!」


少女は母の元へと駆け寄ろうとしたが、ガンツが少女の髪の毛をひっぱって行かせなかった。


「痛いっ!」


そういうとモニカは苦痛に顔を歪めて泣き叫んだ。


「ああ! モニカ!」


ガラはモニカへと、届かぬ手を伸ばした。


「なんだか辛気臭せえ女だな……ピーピー、ピーピー泣くんじゃねえ!」


そう言って、ガンツはモニカを引きずるようにして、フォルトの前へ連れて行った。


ガンツがモニカをフォルトの元へ連れて行くと、モニカは大声で叫びながら暴れだした。


「嫌!嫌よ!お願い!許して!お母様!……誰か助けて!」


モニカは髪を振り乱し、目は涙で腫れ上がっていた。


フォルトは立ち上がると、モニカの顔へバチンと一発、平手打ちをしていた。


「あッ!」


モニカは床に崩れ落ちて、声も出なかった。


「ちょっとうるさいんだよ、お前は……酒がまずくなるだろ……」


フォルトは椅子に腰を下ろし、グラスに入ったウイスキーをグッと飲んだ。


そういいながら、フォルトはモニカの髪を持って引っ張りあげた。


頬を打たれて、とても立っていられる状態じゃないモニカは、吊られるように引き上げられる。


「……顔は整っているような気もするが、涙でぐしょぐしょで見てられねえな……。もう母親と一緒に殺してしまうか?」


すると、ガンツは慌てて止めた。


「フォルトさん、金は大量にありやすからいいんですが、女もひとりくらい持って帰らねえとボスに何か小言を言われますぜ」


「……面倒くさいな……俺は小娘は嫌いなんだが……まあいい。荷車が来たら一緒に乗せていけ」


「へい」


フォルトにそう言われると、ガンツはモニカを連れて家の外へと連れていく。


モニカの顔には絶望が浮かんでいて、ガンツに引きずられるように連れていかれていた。


ガンツが玄関先まで歩いて来た時、目の前に女が一人立っていた。


「あ?」


よく見ると、なかなかの美人である。


「ほほぅ、なんだお前……なかなかの上玉じゃねえか」


ガンツはニヤリと笑った。これならフォルトも満足するだろう。


ガンツは2、3発殴って、おとなしくさせようと思い、女に手を伸ばしたその時。


女の腰から一筋の剣撃が飛んで、ガンツの手首から先が斬り飛ばされていたのである。


「ぎゃああああ!」


ガンツは手首から血を噴出させながら床へと倒れ伏した。


「相手をなめすぎだ、馬鹿ものめ……」


女はそう言って、ガンツを足蹴にした。そう、この女は冒険者リリスだった。リリスは剣を鞘へ納めると、モニカを抱き起こした。


「……立てるか? 大変な状況なのはわかるが、急いでくれ! とりあえず玄関の外まで出て欲しいのだが歩けるか?」


「お母様がまだ中に……」


「ああ、わかった。君の母上は必ず助けるから、今はとりあえず外に出てくれないか!……悪いが、ここにいられて人質にでもされたら戦いにくいのだ」


「すみません……」


そういうと、リリスに連れられて、のろのろと表まで歩いた。リリスは、モニカを家の前にある大きな木の裏側まで連れて行った。


「ここは庭が広くて、隠れる場所が全然ないな……とりあえず、この木の影に隠れていてくれ。声をあげちゃ駄目だぞ……。今から君の母上を助けに行ってくるからな。で、中に残された家中の者は君の母上だけか? それと、盗賊は何人ほどいるのだ?」


「お母様だけです……盗賊はあと3人います……それと1人は仲間を呼びに行ってます」


「仲間を呼んだか……じゃあ、さっさと倒さないといけないな……いいか? 絶対に動いてはならんぞ? これからここで、斬り合いになるかもしれんからな」


そういうと、リリスは立ち上がって家の方へと向かった。するとその時、奥から大柄な男が一人、ノシノシと歩いて出てきた。


「なんだ今の悲鳴は? 男の悲鳴だったじゃねえか……」


そういいながら、現れたのはフォルトだった。フォルトはリリスを一瞥して、ガンツを見下ろした。


「なんだガンツ、女にやられたのか?」


そういって、フォルトはガンツを蹴り飛ばす。


「うげえ!」


「俺は、男の悲鳴が嫌いなんだよ」


フォルトはそう言うと、リリスを見た。


「お前がガンツをやったのか……」


フォルトは、リリスを睨み付けた。リリスは返事をする代わりにニヤリを笑った。


「小娘が……大きな刀を持って気が大きくなったか? だが今回は相手が悪いぞ。死にたくなければ今のうちに降参しておけ」


そういうと、フォルトは剣を抜いて、ダラリと剣を垂らして持った。リリスはフンと、鼻を鳴らした。


「リールの悪党が何を言うか。お前たちの口から出た言葉を信じるほど愚かではない。その二枚舌をこの剣で斬ってくれるわ」


リリスはゆっくりと剣を抜いて、剣を下段に構えた。


「ほう、やる気か?……ちょうど良い。俺も暴れたい気分だったのだ。腕の1本くらいは無くなるのを覚悟しておけよ!」


フォルトは獰猛な笑みを浮かべながら剣を抜き、リリスへと斬りかかったのだった。


【 女剣士エルザ寸劇 フォルト編】



「なんだガンツ、女にやられたのか?」


そういって、フォルトはリリスを睨みつけた。


「小娘が……いいね!を数回押して気が大きくなったか? だが今回は相手が悪いぞ。死にたくなければ今のうちに★を5つほども押しておくことだな」


さあ、フォルトに斬られたくない方は、いいね!と★を押そう!


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